米国連邦下院は6月23日、「台湾差別禁止法案(Taiwan Non-Discrimination Act)」を全会一致で可決した。この法案は、米国が国際通貨基金(IMF)における発言権と投票権を行使し、台湾のIMF加入を積極的に支持する姿勢を示すものだ。しかし、現実的に台湾がIMFに加盟できる可能性はあるのだろうか。
『風傳媒』は、元サンフランシスコ連邦準備銀行(FRBSF)の金融機関監督および信用担当部長で、現在は国立中山大学国際金融学部の客員副教授を務める饒永華氏にインタビューを行い、台湾の銀行制度と金融監督体制、そしてIMF加盟による直接的なメリットについて分析を聞いた。
銀行制度は堅実も、過当競争で収益が低迷
饒氏によれば、国際的な観点から見ても、台湾の銀行制度は総じて健全であるという。豊富な流動性と安定的なコア預金を有し、貸出の成長を支える力を備えており、不良債権比率も管理可能な範囲にとどまっている。また、資本水準にも一定のクッション性がある。
さらに、台湾の金融システムは国内銀行と外銀が共存する多様性を持ち、広範な金融サービスを提供している点も特徴といえる。

一方で課題もある。台湾は市場規模が限定されているにもかかわらず、銀行数が過剰であることから、「過当競争」が起きており、その結果、純利差が持続的に圧迫されている。これにより、全体の収益性は長年にわたって低迷したままだと指摘した。
国際基準に合致する金融監督体制
金融監督の面では、台湾の金融監督管理委員会(FSC)が国内の全金融機関を統括しており、金融システムの安全性と安定性、さらに消費者保護の維持に尽力している。
制度面では、バーゼル資本規制、マネーロンダリング防止およびテロ資金対策(AML/CFT)ガイドライン、国際財務報告基準(IFRS)など、国際的な規範に準拠した運営がなされているという。
注目すべきは、米国連邦準備制度理事会(FRB)が、台湾の銀行による米国内支店開設申請を審査する際、台湾の金融当局が「包括的統合監督(Comprehensive Consolidated Supervision)」能力を有していると複数回確認している点だ。
この「包括的監督」の有無は、外国銀行が米国市場に参入する上での前提条件であり、国際的に台湾の監督体制が一定の信頼と評価を得ていることを意味している。
IMF加盟を阻むのは「制度」ではなく「政治」
台湾がIMFにいまだ加入できていない理由は、技術的な条件ではなく政治的な要因にある。元サンフランシスコ連邦準備銀行(FRBSF)の金融機関監督担当部長であり、現在は国立中山大学国際金融学部の客員副教授を務める饒永華氏は「IMF加盟の条件は、外交関係において正式な主権を有する国家であることです。これが最大の壁となっています」と説明する。
それにもかかわらず、アメリカ議会は台湾の加盟を推進し続けている。6月23日、米連邦下院は「台湾差別禁止法案(Taiwan Non-Discrimination Act)」を全会一致で可決し、米国がIMFにおける発言権と投票権を活用し、台湾の加盟を積極的に支持する意志を明確にした。同法案は、共和党の金映玉議員と民主党のアル・グリーン議員によって共同提案され、台湾のIMF参加、技術支援の受け入れ、職員採用資格などを米政府に推進させる内容となっている。