2027年の台湾侵攻は当面見送りか?米中の戦略再編の中で中国が演じる「平和の担い手」

2025-06-25 18:10
米在住の学者・翁履中氏は、「北京の戦略的関心は現在、台湾ではない」とし、2027年のデービッドソン・ウィンドウを過度に懸念する必要はないと指摘している。(資料写真/AP通信)
米在住の学者・翁履中氏は、「北京の戦略的関心は現在、台湾ではない」とし、2027年のデービッドソン・ウィンドウを過度に懸念する必要はないと指摘している。(資料写真/AP通信)
目次

アメリカが主導した中東への軍事介入が国際的な波紋を広げている。アメリカはこのほど、イランの主要核施設であるフォルドウ、ナタンズ、イスファハーンに対して同時空爆を行った。これに対し、イラン政府は強く反発し、中国外交部も「国連憲章と国際法に違反する行為だ」としてアメリカを非難した。

米在住の政治学者・翁履中氏はSNS上で執筆を示し、「今回の空爆は単なる軍事行動にとどまらず、世界の戦略的主導権をめぐる物語の再構築にほかならない」と指摘。中国はこの機を逃さず、「平和的調停者」としてのイメージを国際社会に発信しようとしていると分析した。

「不拡大・中立・自制」が中国の外交メッセージ

翁氏によれば、今回の中国の反応は単なるイランへの同調ではなく、アメリカ・トランプ大統領による武力行使との“対照”を意識した外交戦略だという。つまり、軍事的緊張を煽る米国に対し、「冷静で安定的な大国」としての立場を演出しているというわけだ。

特にグローバル・サウス(南半球諸国)や欧州諸国の一部で、アメリカの一方的な行動に対する反発が高まる中、「不選択、不拡大、不挑発」という態度が国際社会のニーズに合致しつつあると翁氏は見ている。

台湾有事は遠のいた?北京の視線は「台海」よりも「国際秩序」へ

このような中国の外交姿勢は、台湾にとっても一定の安心材料となる可能性がある。翁氏は「中国は現時点で台湾海峡の緊張をエスカレートさせる意図を持っていない。むしろ、米国の好戦的なイメージと対照的に、自国の国際的ポジションを“安定勢力”として築こうとしている」と述べた。

仮にこのタイミングで台海危機を誘発すれば、中国が現在進める「大国再定位」の努力は水泡に帰すリスクがある。そのため、かねて台湾で懸念されてきた「2027年の戴維ソン・ウィンドウ」(中国軍の侵攻可能時期)についても、少なくとも短期的には過度な警戒は不要だというのが翁氏の見解だ。

台湾は「冷静かつ実務的な対応」を

また、翁氏は台湾側に対しても次のような提言を行っている。

「トランプ政権下の“中東集中、中国慎重”という国際環境のタイムラグを活用すべきであり、この間に台湾は国家安全保障体制の強化、地域協力の推進、国際的な信頼構築に集中するべきだ」と述べ、過度な対中敵視や国内政治の内輪揉めに時間を費やすべきではないと警鐘を鳴らした。

「平和」の演出は中国にとって最も有利な選択肢

最後に翁氏はこう結んだ。

「国際秩序は再構築の過程にあり、主導権を握る者が勝者となる。この先、中国が一貫して平和路線を貫く保証はないが、現時点では“平和の担い手”というイメージ戦略を貫くことが、最も中国にとって有利に働くと彼らは理解している」

編集:梅木奈実

最新ニュース
ベトナム、汚職や収賄の死刑を廃止へ 数千億円横領の女富豪・チュオン被告に減刑の可能性も
核戦争が起きたらどこへ逃げる?専門家が「最も安全」と語る国は日本から10時間の距離
名探偵コナンが「ペーパーシャドーアート ミニ」に登場 コナン・灰原・安室・キッドの4種、7月発売へ
富士山・大阪・浅草がミニチュアに エンスカイ「ペーパーシアター」新作を発売
ヨックモック、夏季限定「ドゥーブル ジュレ」発売 定番クッキーとの詰め合わせも展開
コメ不足の背景に何が?郭正亮氏が分析する5つの要因と米国の不満
台湾・賴総統「反共しない者は中華民国派ではない」 「団結国家」第二講で強調
台湾で手搖飲ブーム加速 セブンが旗艦店、ファミマは「最大の24時間ドリンク店」に進化中
論評:賴清德の「団結」、恐怖を感じさせる
TOKIO、31年の活動に幕 国分太一の活動休止を受け解散を発表
イラン、米国への報復でカタールにミサイル奇襲! ウデイド空軍基地の重要性と、中東における米軍基地の実態とは?
イランはなぜ核開発をやめないのか?――自主独立という国家の誇りと代償
イスラエルとイランは本当に停戦したのか 核施設攻撃とトランプ激怒の真相
「リコールも民主の一部」賴清德総統が語る、団結と主権を守る台湾の選択
イラン核施設空爆後の停戦合意 中東の脅威は本当に終わったのか?
「今こそ台湾文化の出番!」日台文化交流に追い風、映画・音楽・舞台が続々日本へ
「40時間フライト」の極限任務──B-2爆撃機パイロットの過酷な現実とは?
日英伊、第6世代戦闘機を共同開発へ 米依存から脱却なるか、GCAP計画が始動
「両岸は互いに隷属しない」賴清徳総統が緩和メッセージを修正?副総統の「現状維持」と「憲法擁護」発言との温度差が波紋
日本初上陸のフェアモント東京、内覧会開催 東京湾を一望できる極上のホスピタリティ
台湾有事、日本は介入するのか?日台対話で示された「2つの前提」とは
昨年のフジロックがテレビ放送決定 7月5日には恒例の「ボードウォーク・キャンプ」も開催
SixTONESがサマソニ出演決定!KickFlip・紫今・PUSHIMなど「SUMMER SONIC 2025」追加ラインナップ発表
台湾・張仁久氏が台日関係協会の新秘書長に就任 小林鷹之議員や水鳥真美氏の訪台も明らかに
台湾、公共交通の「博愛座」名称を変更へ 制度見直しで「道徳的強制」に終止符
仮想通貨界に激震!史上最大10億ドルのビットコイン統合へ 次のブルマーケットは目前か?
大谷翔平の愛犬・デコピンが「遊戯王」カードに!ファン大興奮のレアコラボ
台湾有事「想定」で避難計画本格化 2027年与那国島で地下施設運用、石垣・宮古も拡大へ
評論:「台湾」は「中国」から誕生?頼清徳総統の歴史観に広がる波紋
トランプ氏、イスラエルとイランの停戦を宣言!イランが米軍に攻撃通知の「奇策」も浮上
イランの高濃縮ウランが行方不明に? 核拡散リスクに国際社会が警戒強める
米イラン衝突で中国の中東戦略に打撃 ホルムズ封鎖リスクに「一帯一路」も直撃か
習近平氏、ロシアを通じて欧州けん制か NATOは台湾有事との連動に警鐘
中東「12日戦争」に終止符 イスラエルとイランが全面停戦 トランプ氏が電撃発表
夏珍コラム:「大規模なリコール」が掘り起こした国家安全の脆弱性
中東危機拡大 米軍基地空襲・テヘラン爆撃で世界経済に波紋
法律業界にもAI革命 台湾の大手法律事務所が「AIツール」導入で業務効率が劇的向上
台湾株が400ポイント超の急騰 中東停戦とAI関連株に追い風、TSMC・AI銘柄に買い殺到
台湾鉄道の運賃大幅改定 悠遊カード特典も縮小へ 9つの変更点を徹底解説
李登輝元総統「君の論文を読んでいる」と日本人学者に発言! 若林正丈教授が見た陳水扁元総統、「この主義の賭博師」と評価
アメリカ、イランと開戦! B-2爆撃機が6発の『バンカーバスター』を投下、トランプ氏「フォルドゥはもう存在しない」
イラン核施設空爆後、トランプ氏が演説「中東は平和を求めよ、さもなくば報復も」
FacebookやGoogle含む160億件超のアカウント情報流出、専門家が即時対応を呼びかけ
「ミッドナイトハンマー作戦」全貌判明 トランプ政権が指示、イラン核施設を初空爆
人物》民進党、25年の修行を積んだ影武者起用 頼清徳総統、戦争と災害防衛の韌性強化に寄与
「歴史的決定」と評価──イスラエル駐台代表が語る「核阻止」の国際連携
米国が同盟国に軍事費「GDP5%」を要求──次のターゲットは日本とアジア太平洋
都議選2025:都民ファーストが第1党に 自民党は大幅後退、「政治とカネ」問題が影響か
台南から届いたパイナップルに笑顔広がる 北海道・美唄の高校生「甘くてジューシー!」
米軍のイラン攻撃は台湾にも波及?『ニューヨーク・タイムズ』:中国の限界と米中の思惑