日本政府は、いわゆる「台湾有事」を念頭に置いた緊急時対応として、沖縄県・先島諸島を中心に滞留型避難施設の建設を進めている。2027年末までに与那国町での運用開始を目指しており、その後、石垣市、宮古島市、竹富町、多良間村などにも順次整備を拡大する方針だ。
日本、「台湾有事」避難計画を策定へ
日本政府は、台湾海峡での有事を想定し、最大12万人の住民を九州・山口地方8県へ分散避難させる計画を打ち出している。さらに、避難が困難な住民向けに地域内の「特定臨時避難施設」を整備する。
与那国町は2024年3月に基本方針を策定。新庁舎の地下に約200人分の避難スペースを備えた施設を整備することが決まり、平時は駐車場や会議室として使用される予定。トイレ、シャワー、キッチン、洗濯室などの設備も整えられ、約2週間の生活を想定している。1人当たりのスペースは約4.8平方メートルとなる。
石垣市・宮古島でも避難所建設進行中
石垣市では500人収容可能な避難所を2026年に着工予定。宮古島市でも同様に500人規模の施設が整備され、こちらは平時に体育館として利用される。今年の冬に工事が始まる見通しだ。竹富町、多良間村に関しても計画が検討中で、来年以降の着工が予定されている。
背景には、中国、ロシア、北朝鮮によるミサイル技術の高度化がある。中でも中国は核弾頭の搭載数を急速に拡大し、極超音速ミサイルの配備も進めており、日本政府は安全保障上の備えを急いでいる。
2027年、「台湾有事」現実味増す
アメリカ国防当局の分析によれば、中国は2027年までに台湾侵攻の準備を整える可能性があるとされる。与那国島は台湾北東部の宜蘭からわずか110キロメートルの位置にあり、有事の影響が直撃する懸念がある。
避難施設は、長期滞在が可能な「特定臨時避難施設」と、短時間の退避を想定した「緊急臨時避難施設」に分類される。特定避難所は、移動手段の乏しい離島に重点的に整備され、緊急避難所は全国に展開されている。
自民党も7月の参院選で「住民保護のための避難施設整備」を公約に掲げ、地方自治体と連携して緊急時対応の実効性向上を目指している。
加えて、日本は自衛隊の「南西シフト」を進めており、2016年以降、与那国島、宮古島、石垣島に陸上自衛隊駐屯地を新設。2019年には鹿児島県の奄美大島にも拠点を構え、南西諸島の防衛体制を強化している。台湾情勢の緊張が続く中、日本の離島防衛と住民保護の体制構築は、急務となっている。
編集:田中佳奈
世界を、台湾から読む⇒風傳媒日本語版X:@stormmedia_jp (関連記事: 台湾有事に現実味 米高官が語った「足りない備え」と中国の本気度 | 関連記事をもっと読む )