米国が同盟国に軍事費「GDP5%」を要求──次のターゲットは日本とアジア太平洋

2025-06-23 16:51
日本の自衛隊が現役の最上型護衛艦の性能を紹介している。(写真/防衛省装備庁提供)

米国のドナルド・トランプ大統領がホワイトハウスに戻る中、北大西洋条約機構(NATO)加盟国に対し国防予算を国内総生産(GDP)の5%に引き上げるよう求める新たな基準を導入する意向が報じられた。この要求を受けヨーロッパのNATO加盟国は困惑しており、特にスペインは早い段階から明確に反対の立場を示している。

この方針は、トランプ氏が主張する「公正な分担」の一環とされており、その影響はすでにアジア諸国にも波及している。米国防総省は最近、東京に対し防衛予算のさらなる増額を求める姿勢を示したほか、アジア太平洋地域の他の同盟国に対しても「新たな世界基準」を適用する意向を明らかにしている。

ジャパンタイムズの報道によれば、米国防総省のショーン・パーネル報道官は「多くのNATO加盟国が5%水準に引き上げることに合意した」と述べている。アジア太平洋地域に対してもこの新基準が適用されるかという質問に対し、同氏は「対象はすべての同盟国」と答えた。

実際、日本政府は直前に米国との高官級会談を中止していた。背景には、米国側が日本に対し国防費をGDPの3.5%まで引き上げるよう要請したことがある。これは、これまで非公式に提示されていた3%をさらに上回る水準で、日本政府にとっては受け入れがたい内容であった。

戦後の憲法体制のもとで安全保障政策を慎重に調整してきた日本は、2027年までに国防費をGDPの2%に引き上げる方針を打ち出しているが、これだけでも大きな政治リスクを伴う。現下のインフレや円安によって軍拡計画の実質効果は薄れており、「軍事投資の収益率」は期待を下回っている。

代表出席法國國慶日閱兵的美軍官兵。(美聯社)
日本の自衛隊が現役の最上型護衛艦の性能を紹介している。(写真/防衛省装備庁提供)

現政権を率いる石破茂首相と中谷元防衛大臣にとって、軍事支出の「数値目標」ではなく、実際の防衛能力の強化がより重要であるとの認識が強い。

一方、米国側ではピート・ヘグセス国防長官とエルブリッジ・A・コルビー政策次官が強硬な姿勢を見せており、両氏はかねてより議会で「GDPの5%こそが同盟国に求める軍費基準である」と訴えてきた。この基準は欧州だけでなくアジアにも適用されるべきだと主張している。

2025年3月30日,美國國防部長赫格塞斯拜訪東京,與日本首相石破茂會面。(美聯社)
2025年3月30日、ピート・ヘグセス米国防長官が東京を訪問し、石破茂首相と会談した。(AP通信)

米国企業研究所(AEI)のアジア安全保障専門家であるザック・クーパー氏は、「こうした米国の期待は現実味を欠いており、アジア各国の政府関係者や外交専門家の立場を弱体化させかねない」と指摘する。

パーネル報道官はこれに対し、「中国の軍拡や北朝鮮の核開発を背景に、アジアの同盟国も欧州並みに国防費を拡充すべきだ」と述べ、均衡ある負担分担の重要性を強調した。

2025年5月31日,美國國防部長赫格塞斯出席新加坡香格里拉對話並發表演說。(美聯社)
2025年5月31日、ピート・ヘグセス米国防長官がシンガポールでのシャングリラ・ダイアローグに出席し演説を行った。(AP通信)

この姿勢はトランプ氏自身の意向と一致しており、同氏は過去に日米同盟を「不公正」と非難し、自動車や鉄鋼などに対する報復関税を予告していた。

米国がNATOに対して強硬な態度を取り続ける中、次の対象としてアジア太平洋地域に同様の手法が適用されることが懸念されている。日韓をはじめとする地域諸国が、軍拡圧力や高関税といった「次なる難題」にどう対応するかが、今後の焦点となりそうだ。

​編集:田中佳奈