トランプ政権の第1次で米国の副国家安全保障顧問を務めたビクトリア・コーツ氏は、ロンドンで開かれた国際フォーラムにおいて、「今後10年から15年が世界で最も危険な時期になる可能性があり、とりわけ台湾周辺が焦点になるだろう」と発言した。
理想的には、米中両国が対話を通じてリスクを管理できる状態が望ましいとしつつも、コーツ氏は「中国は現在、数多くの困難な課題に直面している」と指摘。「最も危険な時期はこれから10年から15年かもしれない」と強調し、その中で台湾という「紛争のホットスポット」が関係してくると述べた。
コーツ氏は現在、米国の保守派シンクタンク「ヘリテージ財団」の副会長として、安全保障および外交政策を主導している。この日、英シンクタンク「王立国際問題研究所(チャタムハウス)」が主催する国際フォーラム「ロンドン会議」に出席し、台湾の安全保障に関する討論に登壇した。
トランプ政権時代の2019年から2020年にはホワイトハウスで副国家安全保障顧問を務め、中東および北アフリカ地域を担当していた経歴を持つ。
台湾への「自己防衛意識の不足」を警告
コーツ氏は台湾について、「最悪の地理的条件に置かれている米国の最良の同盟国」との見方を示した。台湾が自己防衛への関心を高めていることについては評価した一方で、「それでもまだ不十分だ」との認識を示した。
「米国は、台湾自身よりも台湾の安全保障を心配することはできない」とし、米国防総省のエルブリッジ・コルビー氏が中心となり、台湾の防衛力強化に向けた多方面の調整が進められていることを紹介。ただし、その取り組みについて「米国にとっても大きな課題だ」と述べた。
コルビー氏は、台湾の防衛投資が依然として不足していると繰り返し指摘してきた。
米国にとって台湾は戦略的に極めて重要だが、国家としての生存に関わる問題ではないと強調しており、今年3月に開かれた米上院の指名承認公聴会では「台湾が同盟国としての責任を果たさない中で、米軍人が犠牲になるのは不公平だ」と述べた。
さらにコーツ氏は、中東で緊張が高まっていることも指摘。
その結果、米国やその同盟国がインド太平洋地域や欧州から中東に軍事資源を移す必要が生じる可能性があると警告した。加えて、すでに逼迫している米軍需産業への圧力が一層高まり、台湾防衛を含む広域的な戦略の遂行に支障をきたす可能性にも言及した。
米国の軍事的負担が増す中、NATOサミットに注目
このような背景の中、コーツ氏は「こうした圧力が、次のNATOサミットがいかに重要であるかを物語っている」と述べた。 (関連記事: 台湾有事に現実味 米高官が語った「足りない備え」と中国の本気度 | 関連記事をもっと読む )
NATOサミットは6月24日から25日にかけてオランダ・ハーグで開催予定であり、新たな防衛支出の基準が主要議題となる。NATOの次期事務総長とされるマルク・ルッテ氏は、各加盟国に対し国防予算の最低水準をGDPの5%に引き上げるよう求めている。これには、コア防衛費3.5%、関連インフラへの支出1.5%を含む。イギリスなど一部の加盟国は基本的にこの目標に賛同しているが、実施時期や詳細な内容では足並みが揃っていない。