ネットで拡散「3時間でロシア艦隊壊滅」「北方領土奪還」の噂 台湾の調査機関がフェイクと指摘

2025-06-19 12:00
近年、「日本が北方四島を奪還」とする報道がネット上で拡散。画像は報道とは無関係のイメージ。(AP通信)
近年、「日本が北方四島を奪還」とする報道がネット上で拡散。画像は報道とは無関係のイメージ。(AP通信)

台湾海峡の緊張が続く中、先日開催された「総長級」台湾海峡防衛机上演習には、アメリカ、日本、台湾の退役将官らが招かれた。参加者には、アメリカ太平洋軍元司令官のデニス・ブレア氏、元統合参謀本部議長のマイケル・グレン・マレン氏、日本の岩崎茂元統合幕僚長、武居智久・海上自衛隊元幕僚長らが名を連ねた。

こうした動きの一方で、最近インターネット上では「日本がウクライナと連携し北方領土を奪還する」との噂や、「3時間でロシア太平洋艦隊を壊滅させる能力がある」といった情報が拡散されている。台湾の事実調査センターは、これらの内容について調査報告を発表した。

同センターによると、6月12日にあるネットメディアが〈日本が「3時間でロシア太平洋艦隊を殲滅」と豪語!さらにウクライナと連携して北方領土を奪還〉と報じた。記事では、5月31日に自衛隊が北方領土周辺で演習を実施し、第4護衛隊群司令官の伊藤弘海氏が「必要に応じてウクライナと協力し、海陸両面から攻撃して北方領土を奪還する」と発言したとされている。また「日本は3時間以内にロシア太平洋艦隊を殲滅できる」とも主張され、波紋を広げた。

しかし、調査の結果、記事に登場する「伊藤弘海」なる人物は架空であり、そのような発言も確認されていない。日本海上自衛隊の公式情報によれば、第4護衛隊群の現在の司令官は夏井隆・海将補である。「伊藤弘海」という人物は存在せず、過去に同姓の伊藤弘氏が第4護衛隊群司令官を2014年から2016年にかけて務めていたが、2024年8月にすでに退役している。

調査センターは、ネット上で「伊藤弘海」の敬礼写真として使われていた画像は、実際には伊藤弘氏が2023年に横須賀地方総監に就任した際のものだったと指摘する。また、演習が行われたとされる5月31日に関しても、自衛隊公式ウェブサイトの記録では、5月15日に相模湾で日米演習、6月3日に東シナ海で日豪演習、6月8日に本州南方での日米演習が確認されているのみであり、北方四島周辺での演習の記録は確認されていない。

国際報道機関の報道でも、自衛隊が北方四島周辺で演習を行ったとの情報は見当たらない。日本とロシアは日頃から演習に対して抗議を交わすことが多く、たとえば日本が4月10日に6月の北海道で陸上基地反艦射撃を実施すると発表した際、ロシアはすぐに北方四島での射撃演習を発表して対抗した。さらに5月23日には、日本海上保安庁が北海道東方の公海で射撃訓練を行い、再びロシアの抗議を招いている。

今回の誤報の出所について、台湾事実調査センターは、中国のニュースポータル「网易」に6月1日、「史政先鋒」というアカウントが投稿した記事が元になっていると分析している。この記事では、実在しない「伊藤弘海」氏の発言が捏造されており、内容は複数のバージョンに派生して中国語圏のSNS上で拡散された。台湾メディアでも引用され、さらに中国・香港のインターネットフォーラムにも転載されている。

同センターは、記事はすでに削除されているが、ウェブアーカイブ上で元のページを確認できるとしている。今回の一件は、中国で作られたフェイクニュースが台湾メディアを経由して再び中国語圏に戻るという「逆流」の情報拡散構造が浮き彫りになった事例でもある。

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