調査》米価高騰が続く日本 専門家が語る米不足の真の原因

2025-06-17 12:31
日本での米不足問題は一年が経過しても改善の兆しが見えない。(写真/AP通信)
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ロシアによるウクライナ侵攻や気候変動、そして世界人口の増加を背景に、近年は食料供給の不安定性が増している。とくに輸入に依存する日本では、「食料安全保障」への懸念が強まり、議論を呼んでいる。2024年7月以降、日本の米価格は高止まりしたままで、1年が経過した現在も状況は改善していない。米不足の背景には何があるのか。そして、台湾がどのように関わっているのか。

現在、日本は「平成の米騒動」以来となる30年ぶりの深刻な米不足に直面している。前回と同等の規模の混乱は、1918年の「大正の米騒動」以来だ。このなかで、石破茂内閣の農林水産大臣を務めていた江藤拓氏は、「私は米を買ったことがない」という発言が問題視され、辞任に至った。後任には、元首相・小泉純一郎氏の息子である小泉進次郎氏が任命されている。

失言により辞任を余儀なくされた農林水産大臣の江藤拓氏。(AP通信)
時任の江藤拓農林水産大臣は、「コメを買ったことがない」との発言で辞任した。(AP通信)

台湾米が日本の「米不足」を支える力に

こうした事態を受け、日本国内では台湾米が重要な役割を果たし始めている。台湾農業部によると、台湾米の対日輸出は年々拡大し、2025年には1万トンを突破する見込みだ。国内生産が追いつかないなかで、台湾米の高い品質が日本の消費者に評価されている。

2025年1〜5月の対日輸出量は、前年同期比で6倍に達し、今後も増加が見込まれている。農業部長の陳駿季氏は、食品産業全体の高度化を推進するなかで、ブランド力やマーケティング力を持つ農業団体との契約を強化するよう奨励している。

台湾のある輸出企業によれば、最近の展示会や商談を通じて日本の商社と接触を重ね、日本側の担当者が台湾を訪問。実際に米の品質を確認し、5月以降、台湾米は日本に向けて次々と出荷され、各地で販売が始まっている。米国産との競争もあるが、台湾米の品質が競争力を支えているという。

台湾の有名な「山水米」を生産する泉順食品企業股份有限公司は、『風傳媒』の取材に対し、「台湾米は日本人の味覚に合っており、多くの人が試食後すぐに受け入れてくれる」と語っている。主力の「蓬萊米」は日本の品種をもとに台湾で改良されたもので、DNAの95%以上が日本由来に相当する「台南16号」として栽培されていることも、日本市場で受け入れられやすい要因とされている。

農業部部長陳駿季今出席湖口鄉農會稻米銷日記者會,會中表示,預估今年1至5月銷日台灣米已較去年成長為2倍,已達7759公噸。(圖/農業部)
農業部によると、台湾からの日本向けコメ輸出が倍増し、2025年には1万トンを超える見込みだ。写真は、農業部の陳駿季部長が湖口農会での日本向けコメ輸出記者会見に出席した時の様子。(写真/農業部ウェブサイトより)

専門家は「減反政策」の影響を指摘

今回の米不足について、キヤノングローバル戦略研究所の研究主幹・山下一仁氏は、公益財団法人日本外国記者センター(FPCJ)を通じて見解を示している。

山下氏は、「世界の稲米生産量は1961年以降で3.5倍に増えた一方、日本では4割減少している」と指摘。この原因は市場の自然な動きではなく、政府による農地の稲作縮小を進める「減反政策」にあるとし、供給を制限する政策が国内農業を脆弱にしてきたと批判している。 (関連記事: 台湾米が日本で急拡大 コメ不足の中で輸出量6倍増、「最も信頼できる輸入米」との声も 関連記事をもっと読む

FPCJでは、山下一仁 キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹をお招きし、「日本の食料安全保障」をテーマに、トランプ関税の影響や国内の米価高騰にも触れながら、日本の食料安全保障の現状と課題についてお話しいただきました。FPCJ。
FPCJでは、山下一仁キヤノングローバル戦略研究所研究主幹を招き、「日本の食料安全保障」をテーマに講演会を開催した。トランプ関税の影響や国内のコメ価格高騰にも触れながら、日本の食料安全保障の現状と課題について話があった。

2024年の米不足の根本要因については、「2023年産の米は本来2024年9月まで供給されるはずだったが、2023年8〜9月時点ですでに40万トンの不足が発生し、備蓄米が前倒しで使用された」と説明。しかし、農林水産省は備蓄米の放出には踏み切らず、米不足の存在も公に認めていない。