「なぜ自分だけが…」241人死亡の墜落事故、生き残ったたった1人の男性の証言

2025-06-13 11:51
2025年6月13日、インド航空事故の残骸。(AP通信)
2025年6月13日、インド航空事故の残骸。(AP通信)

インド航空AI171便がグジャラート州アフマダーバードを離陸直後に墜落した。SNSではすぐに事故現場の映像が出回り、血に染まったシャツを着た男性が一人、瓦礫の中を歩く姿が注目を集めた。この男性が、乗客242人中唯一の生存者であることが確認された。彼は現在40歳のインド系イギリス人、ラメシュ氏(Vishwash Kumar Ramesh)であることが明らかになった。

このボーイング787-8ドリームライナーはイギリスのガトウィック空港に向かう予定だったが、現地時間12日午後1時38分にアフマダーバード空港を離陸後すぐに墜落。滑走路を離れてすぐ住宅地にある医学生らの寮に衝突した。地上でも多数の死者が出ており、被害は甚大だ。

管制記録によると、離陸1分後の午後1時39分に機体との通信が途絶え、「メイデー」の緊急信号が発せられた。乗客242人のうち、2人がパイロット、10人がクルー。残りの230人には、成人217人、子供11人、乳児2人が含まれていた。乗客の国籍は、インド169人、イギリス53人、ポルトガル7人、カナダ1人。これまでの情報によれば、今回の事故はボーイング787型機としては初の重大事故とされている。

2025年6月13日、インド当局がインド航空の事故現場を清掃している様子。(AP通信)
2025年6月13日、インド当局がインド航空の事故現場を清掃している様子。(AP通信)

現場の映像では、煙に包まれた街中で消防隊員が遺体や負傷者を搬送する姿が映っていた。機体の一部は建物にめり込み、破片が道路に散乱。墜落音は地震や爆発のように響き、住民は恐怖を語った。航空当局はすでに正式な調査を開始しており、ブラックボックス(フライトレコーダー)の捜索も進められている。事故原因はまだ明らかになっておらず、事件を記録した監視カメラの映像が調査官にとって重要な証拠となる見込みである。

インド政府は241人の死亡を確認し、唯一の生存者がイギリス在住のインド系男性で、40歳のヴィシュワシュ・クマール・ラメシュ氏ラメシュ氏であることを明らかにした。事故機には約12万5千リットルの航空燃料が積まれていたとされ、高温の火災が発生し、ほとんどの乗客に脱出の猶予を与えなかったという。内務大臣アミット・シャー氏は「炎上後は救出は不可能だった」と語った。

ラメシュ氏は非常口付近の11A席に座っていた。墜落直後の映像では、墜落後、血だらけの状態で片足を引きずりながら、救急車に向かう様子が映像に残されている。警察は、搭乗券の記録と一致することから、彼が11A席にいたことを確認している。

事故直後、ラメシュ氏は『ヒンドゥスタン・タイムズ』の取材に対し、「離陸してすぐ、大きな音がして墜落した。すべてがあっという間に起こった。目を覚ました時には死体だらけだった。怖くて逃げ出した。機体の破片があちこちにあって、誰かが自分を救急車に乗せてくれた」と語っている。

ラメシュ氏は胸や目、足などに打撲傷を負っているものの、意識ははっきりしており、アフマダーバード市立病院は「数日で退院できる見込み」と述べた。ただし、外傷後健忘症の可能性があるとして、墜落直後の記憶が不完全であることも指摘されている。

2025年6月13日、救助隊員がインド航空事故現場で生存者を探す様子。(AP通信)
2025年6月13日、救助隊員がインド航空事故現場で生存者を探す様子。(AP通信)
インド航空生存者の座席示意図
インド航空生存者の座席配置図

奇しくもラメシュ氏の座っていた11A席は、機体の翼の前方にある非常口近くだった。元FAA(アメリカ連邦航空局)安全検査官のデビッド・ソシ氏はCNNの取材に対し、「その座席は構造上強度の高い部分ではあるが、生還者が出たことは驚き」と述べた。

また、英国保守党のシヴァニ・ラジャ議員は「ラメシュ氏の兄弟も同じ飛行機に搭乗しており、生存していない可能性がある」と明かし、家族との連絡を慎重に取っていると語った。

ラメシュ氏は今回、インドの家族を訪れた帰り道だったという。20年以上英国に暮らし、家族は今回の事故に深く衝撃を受けている。本人も「どうして自分だけが助かったのかわからない」と語っている。

事故後、チャールズ国王とカミラ王妃も声明を発表。「世界中の家族や大切な人を巻き込んだこの痛ましい悲劇に心を痛めている」と追悼の意を示した。

​編集:田中佳奈

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