台湾・国民党が31対0という前例のないリコールの危機に直面しつつある中、朱立倫氏(国民党主席)は6月11日に開かれた党常務委員会で、「リコールはすでに第3段階に入った」と強調し、党全体に「戦闘状態」への移行を呼びかけた。朱氏は、「国民党は愛国者ミサイルのように、台湾の民主主義を守る精神で対応していく」とし、地域防衛の名のもとに周辺勢力を結集し、党中央主導で「応援団」を組織する考えを示した。
ただし、朱氏が強気の姿勢を見せる一方で、党内からはリコールの結果が野党陣営の優位性を崩す決定打になるのかどうか、懸念の声も上がっている。前立法委員の鄭麗文氏が組織した「党外野党大連盟」も注目を集めており、南部では民進党が10議席以上のリコール達成を狙う動きがある。
こうした情勢を受けて、各地の県市でも対策が進められており、複数の首長や議長が合同で「防衛作戦」を発動。その中でも特に注目されるのが、台中市長の盧秀燕氏である。

台中リコール戦 盧氏がキーワードを定める
現在、リコール対象と目される台中市の立法委員のうち、羅廷瑋氏(台中第六選挙区)が最も危険な「赤線」上に位置する。次に、廖偉翔氏(第四選挙区)がやや安定的とされる。また、新人の黄健豪氏(第五選挙区)は、かつて盧氏の地盤だった地域を受け継いでおり、2008年の選挙制度改革後、挑戦者として最多得票を獲得した初のケースとして、安全圏とみられている。
ベテランの顔寬恒氏、楊瓊瓔氏、江啟臣氏は、いずれも地元に確固たる基盤を築いており、今回のリコールでは大きな影響を受けないと見られている。もっとも、過去数カ月間、台中市の立法委員たちはリコールへの対抗戦略を話し合ってきたものの、戦術面で意見の一致を見なかった。
状況が動いたのは、5月末の「非核家園」政策実施により、台中火力発電所(中火)の10基が同時稼働したことだった。これを受けて、野党側の攻勢が強まり、盧氏は行政院会議で卓榮泰院長と中火をめぐって対峙。「全力投入する」と強い決意を示した。
これをきっかけに、台中市の6人の立法委員は「2028年までに中火の無石炭化を目指す」という共通の旗印の下、連携を深める方向で一致した。

盧氏が秘密会議で指導 中部の自治体が地域防衛
最近では、盧氏が賴清徳政権を公然と批判する発言が続く中で、地元での支持率が顕著に上昇しているとの見方もある。6月初旬、盧氏は非公開の会議を開き、台中市の6人の国民党系立法委員のうち、顔寬恒氏を除く5人が出席した。
会議では、盧氏自身が市長選に挑んだ際、中火の空気汚染問題を大きな争点にして勝利した経験を振り返り、今回もその戦術を再現するよう呼びかけた。さらに、6人の議員らは中火と市民の生活を結びつけるためのスローガンやパンフレットを準備しており、空気汚染のテーマは台中市のみならず、南投、雲林、新竹といった中部地域にも広がる可能性があるとされている。
