トップ ニュース 舞台裏》「秘書費」をめぐり批判噴出 台湾・立法院法案を動かした2人の存在
舞台裏》「秘書費」をめぐり批判噴出 台湾・立法院法案を動かした2人の存在 2025年12月、助理費の「除罪化」法案を陳玉珍氏名義で提出した国民党立法院党団副書記長の陳玉珍氏。この案件で批判の矢面に立たされている。(写真/劉偉宏撮影)
台湾・国民党の立法院党団は最近、立法院委員(国会議員) に支給される「助理費」(議員秘書・アシスタントの人件費としての公費)をめぐり、流用や不正使用に対する刑事責任を軽くする方向の「除罪化」法案を、陳玉珍氏名義で提出した。これが世論の反発に火をつけ、現職の立委秘書(アシスタント)側からも強い批判が噴き出している。助理費を本来の人件費という枠から外し、実質的に「大きな財布」のように扱える余地を広げかねない内容だとして、国民党団内部でも意見が真っ二つに割れている。批判の矛先は党中央に向けられ、党主席の鄭麗文氏や秘書長の李乾龍氏が非難を浴びている。
ただ、関係者の見立てでは、今回の法改正 を最も強い温度感で押し進めたのは鄭氏や李氏ではない。立法院党団の総召集人である傅崐萁氏と、「地下主席」と呼ばれるCK楊氏の2人だったという。
今回の法改正は「顔寛恒氏の案件を救うため」という見方が根強い。確かに顔氏のケースは大きな要素だが、傅氏とCK楊氏がもう一つ重く見ていたのが、地方議会の議長らから寄せられてきた要請だった。議長らが、同種の問題を抱える地方議員から「助理費をめぐる制度そのものの不備を何とかしてほしい」と突き上げられていたからだ。
背景には、地方議会の運用ルールが長年あいまいだった事情がある。特に台中・高雄・台南などで県市合併が進んだ後も規定の統合作業が不十分なまま旧来の慣行が残り、その結果、旧制度に沿って処理していた議員が摘発されるケースが相次いだとされる。傅氏とCK楊氏は、顔家や地方勢力との信頼関係を強化するためにも、この法改正を強力に推進する必要があり、以前から画策していたのだ。
助理費「除罪化」案の主導役は、国民党立法院党団総召集人の傅崐萁氏(写真)とCK楊氏だと報じられている。(写真/劉偉宏撮影)
傅崐萁とCK楊が情勢を見誤る 助理費の除罪化で党団意見は分裂 助理費の除罪化(刑事責任の対象から外す方向の見直し)をめぐっては、「秘書長・李乾龍氏と党所属の立委候補の動きが発端だ」という見方が広がっている。実際、李氏は以前から比例代表の立委らとの座談会を重ねる中で、除罪化法案の推進に触れていた。 ただ、『風傳媒』の取材によれば、李氏が主導したというより、周囲から推進を促されたり、方針を示されたりして動いた可能性が高い。 さらに、『風傳媒』がつかんだ情報によると、鄭麗文氏は非犯罪化 の動き自体は知っていたものの、自身も立法院委員や書記長を経験しているため、この法案を拙速に進めれば「爆弾」になることを理解していた。そのため、本来は完全な補完措置を整えた上で進めようとしていたが、党団側が準備不足のまま強引に「ゴリ押し」したため、鄭氏は詳しい経緯を知らされていなかった。
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国民党団による助理費除罪化の推進は、若手・中堅議員からの反発を招き、議論は12月までずれ込んだ。陳玉珍氏が提案した後、傅崐萁氏が不可解にも党団会議を欠席したため、現場の幹部が反発し、メディアに対して「これ以上推進しない」と発言する事態となった。しかしその後、党団は再びニュースリリースで「さらに議論する」と発表するなど、親・傅派も火消しに走ったが、幹部会議には決議能力がなく、党団内の分裂が浮き彫りとなった。
当初の見込みでは 、党団は「民衆党(白営)は新竹市長・高虹安氏の案件があるため反対しない」「民進党(緑営)にも助理費問題を抱える議員がいるため沈黙する」と判断し、国民党と民衆党が提案すれば、法案は静かに通過すると見ていた。
しかし実際には、国民党団はいくつかの誤算を犯した。第一に、民進党団は即座に攻撃を仕掛けなかったものの、予期せぬことに与野党問わず議員アシスタントたちからの大反発が起きた。第二に、民衆党も提案を遅らせたため、「野党共同推進」という形が作れなかったのだ。
国民党主席の鄭麗文氏(写真)は、助理費「除罪化」の反発の大きさを把握し、配套を整えてから進める考えだったが、党団が先に動いたとされる。(写真/劉偉宏撮影)
頼まれて提案した陳玉珍氏が標的に 民進党介入で政治問題化 今回の騒動で最も被害を受けたのは、党団から頼まれて提案者となった陳玉珍氏だ。過去、国民党団で論争のある法案を出す際は、党団三役(総召、書記長、首席副書記長)が先頭に立って連署し、責任を共有するのが通例だった。しかし今回は党団提案ですらなく、陳玉珍氏個人の提案という形になり、傅崐萁氏を含む党団三役の連署もなかったため、多くのベテランアシスタントや議員を唖然とさせた。 情報によると、陳玉珍氏は鄭麗文氏に「党団のために協力したのに罵倒された」と不満をぶちまけたという。これを受け、本来は慎重に進めたかった鄭麗文氏も、この案件を真剣に解決する決意を固めたとされる。
しかし、12月12日には立法院アシスタント労働組合が立法院正門前で抗議集会を行う予定で、民進党団が支援に乗り出すという情報も流れ、事態は政治闘争へと発展している。Facebookで党団の方針を批判したベテランアシスタントが身元を特定され、党団幹部がそのアシスタントの雇用主である北部選出の議員を厳しく叱責し、その議員が謝罪するという一幕もあり、この案件にかかる圧力の巨大さがうかがえる。現在、民進党の介入が取り沙汰されており、議員やベテランアシスタントたちの間では、「この法案が難関を突破するのは、もはや極めて困難だ」との見方が強まっている。
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