徐和謙の視点:トランプ文書が示す「世界観」と台湾海峡の行方

2025-12-14 16:56
2025年12月2日、米国のドナルド・トランプ氏と国防長官のピート・ヘグセス氏。(AP通信)
2025年12月2日、米国のドナルド・トランプ氏と国防長官のピート・ヘグセス氏。(AP通信)
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2025年初めに再び政権の座に就いたドナルド・トランプ氏は、かつてこう語っている。「第1期は、この国を運営しながら、生き延びることに必死だった。だが第2期は、この国だけでなく、世界を運営することになる」。

米東部時間12月4日深夜に公表された、トランプ第2期政権の国家安全保障戦略文書は、まさにその言葉を体現する文書だと言える。米国の国家機構を完全に掌握したトランプ氏とそのチームが、「どのように世界を運営し、米国と世界との関係をどう再定義するのか」を示した宣言書の性格を帯びている。

これまでの国家安全保障戦略が、世界各地の地政学的ホットスポットや重要課題を網羅的に扱ってきたのに対し、今回の「トランプ2.0」版は冒頭から異なる姿勢を明確にしている。すなわち、米国はすべての国、すべての地域、すべての事態に等しく関心を払うことは不可能である、という現実を率直に認めたのだ。

米国政府とその資源は、あくまで米国の利益、そして米国の利益と重大に関わる問題に優先的に投入される。トランプ政権は、外交・戦略エリートが主導してきた従来の路線と決別し、恒常的に世界を主導する発想を放棄する。文書は、「他国の問題は、それが直接米国の利益を脅かす場合にのみ関心事となる」と明言している。

トランプ政権は、過去のエリートたちが「米国民の意思を深刻に読み違えてきた」とも批判する。米国民は、自国の利益と無関係な世界的負担を永遠に背負うことを望んでいない、という認識が背景にある。

この指導原則に基づき、トランプ政権は政策の焦点に明確な優先順位を設けている:

一、アメリカ大陸における圧倒的優位の確保米州全体において米国が圧倒的優位を確保し、いかなる大国も米国を脅かす存在をこの地域に築くことを許さない。トランプ氏自身は、これを「モンロー主義のトランプ続編」と位置付けている。

二、自由で開かれたインド太平洋ただし、その目的はバイデン政権が掲げてきた「民主主義対権威主義」という価値観対立の深化ではない。この理念的対抗軸は、トランプ政権の下ではいったん封印された形だ。

トランプ氏が重視するのは、インド太平洋における米国にとって死活的に重要な海上交通路が、他国によって支配されたり、通行を制限・課金されたりしないことにある。さらに、次の世界経済の成長エンジンと見なされるインド太平洋地域で、米国が有利な立場を占め、「最大の果実」を得ることも狙いだ。

三、欧州の再定義とNATO拡大の一時停止欧州連合(EU)や、戦後欧州が主導してきた多元的自由主義価値への明確な距離置きが見られる。文書は、欧州が「誇り高い歴史と文化的伝統」を取り戻すべきだとし、欧州の右派政党や政権を支持する姿勢を打ち出す。 (関連記事: トランプゴールドカードだけでなく、トランプ企業ゴールドカードも 米商務部長がグリーンカードとの違いを説明:エリートのみ受け入れる 関連記事をもっと読む

また、米欧が協調して大規模な越境移民の時代を終わらせること、EUのような超国家的組織が主権国家の権限に介入することへの拒否も盛り込まれている。さらに、欧州とロシアの緊張関係を是正する支援を掲げ、最も重要な点として、北大西洋条約機構(NATO)の拡大路線には、当面の区切りをつけるべきだと明言した。

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