トップ ニュース 台湾・民進党初選で頼瑞隆氏に「いじめ疑惑」直撃、林俊憲氏も失速気味 頼清徳氏が背負う「高雄・台南」攻防が激化
台湾・民進党初選で頼瑞隆氏に「いじめ疑惑」直撃、林俊憲氏も失速気味 頼清徳氏が背負う「高雄・台南」攻防が激化 2026年の民進党・高雄市長初選は混戦模様で、現時点でやや優勢とみられる頼瑞隆氏(右端)も、息子がいじめ問題に関与したとの報道が浮上し、情勢は不透明さを増している。(写真/高雄市政府提供)
台湾・民進党が2026年の県市長選挙に向けた公認候補を決定する初選は、2026年1月12日から17日にかけて実施される予定だ。南部最大の票田である高雄、台南の「南二都」は競争者が多く、情勢は流動的かつ複雑だ。現時点のリードが最終局面まで続くのか、それとも「逆転勝利」が起こるのか、すべてに不確定要素が残る。総統の頼清徳氏と、彼が所属する主流派閥「新潮流」がこの二大都市を守り切れるかどうかが、党内情勢を測る重要な指標と見られている。
注目すべきは、南二都の初選が緊迫する中、高雄市長初選に出馬している頼清徳氏の側近、頼瑞隆・立法院委員(国会議員)だ。彼は当初わずかに優位と見られていたが、8歳の息子が校内いじめに関与したとの疑惑が浮上し、選挙戦に大きな動揺をもたらしている。頼瑞隆氏が最後まで優位を保てるかは不透明だ。一方、台南市では、同じく頼清徳氏の系譜に連なる林俊憲・立法院委員が、陳亭妃氏に依然として後れを取っており、短期間での巻き返しは容易ではないとみられている。
民進党の伝統的地盤である台南、高雄では初選の行方が注目される。台南では林俊憲氏が陳亭妃氏を追う構図で、残り1カ月足らずで逆転するのは難しいとの見方が強い。それでも林氏は終盤まで攻勢を強め、陳氏が過去に「造反」とされる人物を支持した点や、元台南市議会議長・郭信良氏との関係を批判材料に挙げた。さらに市議20人超、立法院委員3人の支持を固め、集会も開くなど「最後まで戦う」姿勢を打ち出し、頼清徳氏が初選段階で南二都を失う事態を避けたいとの危機感もにじむ。
民進党の台南市長候補指名をめぐる初選では、林俊憲氏(右)が追い上げを図るものの、陳亭妃氏(左)との差はなお縮まりにくい状況だ。(写真/柯承惠撮影)
初選1カ月前の「いじめ疑惑」で、頼瑞隆のリードは逆転か 高雄市では、現職の陳其邁市長の路線継承が焦点となる。初選を制した候補者には、本選での「負けられない」という重圧がかかるが、その最有力候補と見られていた頼瑞隆氏に暗雲が立ち込めた。 12月4日、頼氏の8歳の息子が校内いじめに関与したとの報道が出ると、問題は急速に拡大した。初選を1カ月後に控えたタイミングでの発覚に、党内外では「政治的な意図があるのではないか」との憶測が飛び交っている。
親・菊系に近い政治スタッフは、私的に「政治的な作為を感じる」と語る。学校側が公表した経緯によると、影響を受けた児童は3人。10月16日、校庭でのトラブルを発端に、頼姓の男児が女子児童をトイレ付近まで追いかけ、約12分間にわたり罵声を浴びせた。女子児童は「精神的な病気だ」などの言葉を投げかけられたと訴え、兄も言葉による攻撃を受けたという。
頼瑞隆氏は12月4日、直ちに謝罪し、「父親としての責任を果たせなかった」と認めた。翌5日には改めて説明の場に立ち、被害者家族、学校、社会に対して謝罪し、深い自責の念を示した。10月に起きたトラブルについては、当初は学校の指導で解決したと考えていたが、その後も衝突が続いたとして、「すべて自分の責任だ」と述べている。
しかし被害者側の保護者は納得していない。TVBSの取材に対し、報道後も頼氏側から直接の謝罪はなく、「子ども同士の摩擦」とする声明にも反発を示した。防犯カメラ映像では、頼姓の児童が一方的に攻撃する様子が確認できるとしている。保護者同士の話し合いでも、相手側の態度は強硬で、学校からの連絡にも応じず、「二度と対応しない」と述べるなど、問題は収束していない。
息子の校内いじめ問題への関与が取り沙汰される中、頼瑞隆委員は5日、記者会見を開いて経緯を説明した。(写真/蔡親傑撮影)
大物支援が相次ぐ邱議瑩 頼瑞隆の優勢が逆転されるのか? 校内いじめをめぐる問題は沈静化の兆しを見せず、ネット上では「頼瑞隆は脱落した」との厳しい声も広がっている。これが民進党・高雄市長初選にどのような影響を及ぼすのかが注目される中、頼氏の対抗馬たちは一斉に攻勢を強めている。 現在、頼瑞隆氏にとって最大のライバルと目されているのが、蘇貞昌系(蘇系)と蔡英文系(英系)の支持を受け、陳其邁市長も水面下で支援しているとされる邱議瑩氏だ。さらに許智傑氏、林岱樺氏も相次いで大規模な集会を開き、存在感を競い合っている。
邱議瑩氏は11月30日、鳳山区で初の大規模集会を開催。前総統・陳水扁氏が公の場で「最も陳其邁に近い存在だ」と名指しで評価し、強い後押しと受け止められた。集会当日には、前行政院長の蘇貞昌氏も南下して応援に入り、重量級の顔ぶれが選挙戦の火を一気に強めた。許智傑氏は12月21日、鳳山駅近くの空き地で大規模集会を予定しており、地元では「最後まで戦い抜く覚悟を示した」と受け止められている。一方、かつて有力候補と目されながら訴訟問題を抱える林岱樺氏も、複数回の集会を重ね、選挙ムードの維持に努めている。
こうした中、逆風にさらされている頼瑞隆氏は、他の3人とは対照的に大規模集会を控え、街頭訪問や車列による遊説、市場回り、小規模な説明会を中心とした選挙戦を続けている。その理由について、ある民進党関係者は「初選段階の集会は、動員される顔ぶれがほぼ固定化しており、時間と労力の割に効果が読みにくい」と指摘する。頼氏はあえて不特定多数と直接接触する戦略を選んだというが、感情を一気に盛り上げる集会型動員を欠くことが、今後の支持動向にどう影響するかは未知数だ。
さらに体験型動画を通じ、「妊娠した家庭に授乳・育児クッションを配布する」といった具体策を打ち出したほか、邱議瑩氏の地盤である美濃地区にも繰り返し足を運び、客家政策や「白玉大根祭り」のPRを行ってきた。陣営内では、こうした積み重ねにより「わずかにリードしている」と評価していた。しかし、いじめ問題の影響で、残り1カ月余りの間に形成が逆転し、勝利を目前にして公認候補の座を失う可能性も否定できなくなっている。
陳水扁元総統(右)はこのほどフェイスブックで、民進党立法院委員の邱議瑩氏への支持を表明。以前には邱氏を「陳其邁氏に最も似ている」と名指ししたこともある。(資料写真/邱議瑩氏事務所提供)
非頼系が結集し、新潮流と血戦へ 高雄初選は派閥対立の嵐 現在の情勢を見ると、邱議瑩氏は旗山、美濃地区で優位に立ち、大物支援を前面に出すことで市街地での知名度拡大を狙っているとされる。地元関係者は、邱氏を支える派閥「湧言会」の組織力は強く、市議が一斉に世論調査への電話動員に動けば、僅差は一気に逆転しかねないと指摘する。 一方、頼瑞隆氏については、別の民進党関係者が「中道的で理性的、敵を作りにくい点が支持を集めてきた」と評価する。地盤とする前鎮・小港地区での人気は非常に高く、周辺地域への浸透が進めば勝機は残されているとの見方もある。
ただ、高雄の地方関係者は、頼氏の支持層が中堅世代や若い子育て世代に多い点を指摘する。8歳の息子が校内トラブルに関与した問題は、教育やいじめ問題に敏感な若年層ほど影響を受けやすく、選挙戦の不確定要素になり得るという。これに対し、邱議瑩氏は旧県区を中心に、伝統的な民進党支持層を強固に固めており、組織動員も安定しているため、今回の騒動による打撃は比較的限定的とみられている。初選1カ月前に表面化したいじめ問題が、この先さらに波紋を広げるのか、それとも新たな「殺し手」が飛び出すのか。高雄では、非頼系が結集して頼清徳氏と主流派・新潮流に対峙する構図が鮮明となり、派閥抗争の「血戦」の嵐が吹き荒れる気配が濃くなっている。
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