台湾・リコールと選挙で大混乱 党内分裂の国民党、弁護費だけで1億円?

2025-06-09 13:03
国民党は、31議席の地域立法委員が罷免の最終投票に入ると予測しており、戦況は非常に激しい。一方、国民党が民進党の立法委員の罷免を推進する中で、違法な署名活動が問題となり、訴訟が続いている。(写真/柯承恵撮影)
国民党は、31議席の地域立法委員が罷免の最終投票に入ると予測しており、戦況は非常に激しい。一方、国民党が民進党の立法委員の罷免を推進する中で、違法な署名活動が問題となり、訴訟が続いている。(写真/柯承恵撮影)
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台湾・国民党が主導するリコール運動が全国で司法の波紋を広げている。民進党の議員リコールは思うように進まず、逆に国民党側の地域立法委員31人がリコール投票に直面するという厳しい展開に。死亡署名の問題も重なり、各地で党職員が相次いで司法の取り調べを受ける事態となった。リコール戦が空回りするなか、党内では朱立倫氏の指導力への疑問の声も上がっている。

約百人の国民党職員が取り調べを受け、すでに1億円超の弁護費用が発生

3月末に台南市党部が捜索を受けて以降、捜査は全国に拡大。現在、取り調べを受けている専務職員は92人、そのうち13人がすでに拘束、11人が勾留中だ。病気療養中の中央党部の李姓専員をはじめ、台北・新北・基隆・台中・台南・屏東・宜蘭・嘉義など広範囲に及んでいる。

『風傳媒』の報道によると、すでに発生した弁護費用は2,000万台湾ドル(約1億円)を超えており、台南市だけで起訴に至った段階で400万台湾ドル(約1900万円)以上。まだ捜査中の地域も多く、今後三審まで進めば、費用は総額で数億円を超える見込みだ。​

国民党主席争いに新たな変数が加わり、現職の朱立倫(右四)と競争候補の台中市長盧秀燕(右二)がそれぞれ問題を抱える中、党内では潜在的な黒馬が出現している。(資料写真、顏麟宇撮影)
罷免は7月から8月に投票、核三再開の国民投票は8月23日に行われ、9月には国民党主席選が控えているため、時間が非常に接近している。台中市長盧秀燕(右二)の陣営では、多面的な作戦を避けるため主席選の日程を延長するべきと考えている。(資料写真、顏麟宇撮影)

​こうした中、朱立倫氏は『聯合報』のインタビューで「バトンを渡す準備はできている」と語り、党主席選挙のスケジュール(7月告示、9月投開票、10月交代)に言及。ただ、台中市長の盧秀燕氏の陣営は、7〜8月のリコール投票や8月23日の核三再開に関する国民投票と日程が重なる可能性に警鐘を鳴らし、党主席選を延期すべきと提案している。

ただし、党内の混乱が死亡署名に関する訴訟対応の足を止めることはなさそうだ。朱氏自身も法的対応に備えて弁護士を準備しているとされる。

台北地院で25日に開かれた裁判では、国民党台北市党部主委の黄呂錦茹(中)が拘束されることが決定された。(資料写真、顏麟宇撮影)
国民党の専務職員はすでに92人が取り調べを受けており、拘留されている台北市党部主委の黄呂錦茹(中)も含まれている。(資料写真、顏麟宇撮影)

複数の被告に対する弁護士費用が、数億円を超えるのは避けられない

なぜここまで費用が膨れ上がるのか。その理由は、同一事件でも被告同士が共謀関係にあると見なされないよう、92人それぞれに別々の弁護士をつける必要があるためだ。さらに、党中央が提供する弁護士に不信感を抱く家族も多く、別途で弁護士を依頼するケースも出てきている。

例えば、ある党職員の家族は「罪を認めるな」とのアドバイスを受けたが、外部の弁護士は「早く釈放されるために認罪すべき」と助言。家族は党中央提供の弁護士が党の都合を優先しているのではないかと懸念している。

さらに、党籍ではない活動メンバーへの弁護費や、認罪によって執行猶予を得るための罰金などは今回の1億円見積もりに含まれていない。全体像を考慮すれば、最終的なコストはそれを大きく上回る可能性もある。国民党は司法の波をどう乗り越えるのか、今後の展開に注目が集まっている。 (関連記事: 台湾・大リコール最終戦!民進党が「機密命令」発令 陸空一体となって10名の国民党議員を攻撃 関連記事をもっと読む

罷免署名、罷免署名サイト。(柯承惠撮影)
国民党は現在、約2000万円を超える弁護士費用を費やし、将来的には1億円を超える見込みとなっている。写真は、藍営の署名サイト。(柯承惠撮影)

​民進党と争いたくない国民党、弁護士探しで苦戦

​「金さえあれば鬼も動かせる」とはよく言うが、今回の国民党による死亡署名に関する司法案件では、そう簡単にはいかないようだ。『風傳媒』によると、最初に捜索された台南市党部では準備が整っておらず、当初は本当に弁護士が見つからなかったという。台南の党職員が最終的に高雄まで足を運び、ようやく受任してくれる弁護士を確保した。中には案件の説明を聞いた上で、「当局と対立したくない」として断る弁護士もいた。

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