近年、中国共産党は台湾周辺での軍事演習を継続しており、台湾に対して「封鎖・隔離戦略」を取るとの観測も出ている。国家発展委員会のデータによれば、台湾のエネルギーに関する戦略備蓄は、石油が約90日分、石炭が約30日分、天然ガスが約8日分とされている。これに対し、中華戦略前瞻協会の研究員・揭仲氏は、YouTube番組『論政天下』で、中国に包囲された場合でも、台湾の基礎インフラが正常に機能していれば、国民の抵抗意志が直ちに喪失するとは限らないと述べた。揭氏によれば、仮に中国が封鎖や隔離の戦略を取った場合、エネルギー輸送が妨害され、台湾の経済活動が停滞する可能性がある一方で、国民生活のペースが変化し、エネルギー消費も大幅に減るとみられる。中国が「包囲するだけで攻撃しない」方針を取れば、現在の備蓄エネルギーでも台湾政府や社会の機能は一定程度維持できるという。
さらに揭氏は、多くの専門家が「中国は台湾を攻撃する必要はなく、海空の交通を遮断すれば台湾経済は崩壊し、降伏を余儀なくされる」と主張していることに対し、仮に中国が攻撃を控えるならば台湾のインフラは稼働を続け、国民の士気も予想通りには下がらないと反論した。加えて、台湾の米の備蓄は基本需要を210日間まかなうことができ、配給制を導入すればさらに長期間の持ちこたえも可能だという。「中共が封鎖戦略を取れば台湾政府はすぐに交渉の場に引き出され、降伏に追い込まれる」という見方に対し、揭氏は「このような主張はあまりに大胆かつ断定的すぎる」と述べた。電力や水の供給が一定期間維持され、政府が食糧供給を安定させ、地方政府も機能を保っていれば、士気が急速に崩壊する理由はないと指摘している。
また、揭氏は、中国軍が武力による台湾侵攻を想定する際、アメリカの介入を前提にしている点にも言及。米軍が実際に影響力を発揮するまでには政治的手続きや軍事配備に時間がかかるが、もし中国が「包囲して攻めない」戦略を取れば、その時間を米国に与えることになり、むしろ中国軍にとって不利になると分析している。さらに、実際の中国軍の内部でも「封鎖だけでは台湾を屈服させるのは難しく、最終的には攻撃が必要になる」との懸念が出ている。もし台湾が無条件降伏を拒否すれば、封鎖は単に台湾に防衛準備の時間を与える結果となり、戦時にはエネルギー資源が優先的に国軍に供給されるため、軍への影響は軽微にとどまるという。
中共による「グレーゾーン」戦術に関しても、揭氏は「こうした行動が実際に台湾の海空交通に支障をきたすかが最も重要な観察点だ」と指摘。現時点では演習によって台湾の対外交通が直接的に遮断された事例はなく、もし中国の行動が台湾の交通を実際に遮断するような事態となれば、台湾政府はこれを「戦争行為」と見なし、必ず対抗措置を講じるだろうと述べた。そのうえで、台湾は護衛(コンボイ)方式によって中国軍の封鎖に対抗することができるとし、もし中国軍がこれに対して攻撃を行えば、封鎖戦略は終焉を迎え、台湾周辺での大規模な海空戦に発展する可能性があると警鐘を鳴らした。封鎖戦略について、揭氏は「中国から見れば、封鎖は台湾全土の軍事占領を保証するものではなく、むしろ外部勢力の介入を許す時間を与えてしまい、中国は主導権を失い、台湾側に主導権を握らせる結果になる。そのため、中国軍内部でもこの戦略に否定的な声が多く上がっている」と結んだ。
揭仲氏はさらに、重大な政治事件が発生した場合、中国が「条件付き」で封鎖・隔離戦略を行使し、特定の問題で台湾政府に譲歩を迫る可能性があると指摘した。台湾の離島の多くは、中国が一方的に設定した「領海基線」内の内水とされており、現在、台湾はこれらの離島への補給を軍がリースした民間船で行っている。中国側は、これらの船舶が軍需物資を中国の内水に持ち込んだとして、「中国の法律違反」と主張し、船を拿捕する形で台湾に圧力をかける可能性があるという。 (関連記事: 中共の「台湾の国際的地位を消滅させる」手法を暴露 民進党が「野蛮な横暴」な本性を示すと批判 | 関連記事をもっと読む )
編集:柄澤南
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