AI医療》93.4%の精度で脊椎骨折を秒診断 AI×医療の「最前線」が高齢社会を救う

2025-06-06 16:03
嘉義大林慈済病院整形外科部長の謝明宏医師は、健康保険によるMRIの給付には多くの条件があることを明らかにした。自費の場合、一度に6000〜7000元(約2万9千〜3万4千円)以上かかることもあるという。(写真/嘉義大林慈済病院提供)
嘉義大林慈済病院整形外科部長の謝明宏医師は、健康保険によるMRIの給付には多くの条件があることを明らかにした。自費の場合、一度に6000〜7000元(約2万9千〜3万4千円)以上かかることもあるという。(写真/嘉義大林慈済病院提供)
目次

台湾では超高齢社会が進む中、高齢者の多くが骨密度の低下により「脊椎圧迫骨折」を抱えている。特に古い骨折と新しい骨折が重なるケースでは、医師による診断が難しくなるのが課題だ。

こうした中、雲林科技大学と嘉義の大林慈済病院の産学連携によって、CT画像から脊椎圧迫骨折の「新旧」を高精度で見分けるAIシステムが開発された。これにより、医師は一目で損傷の状態を判断でき、より迅速で適切な治療が可能になるという。この研究成果は2024年10月、国際SCIジャーナル《Multimedia Tools and Applications》に掲載され、スマート医療の新たな一歩として注目されている。

嘉義大林慈済病院の整形外科主任・謝明宏氏によると、脊椎圧迫骨折は高齢者に起きる骨折の30〜40%を占めている。診断には主にX線やCTが使われているが、これらの機器は大腿骨や脛骨のような単純な骨には有効でも、複雑な構造を持つ脊椎の圧迫骨折を見分けるのは難しい。

​重なり合う骨折の識別は整形外科医にとって大きな壁

謝氏は、人間の脊椎はおよそ3cmごとのセグメントに分かれており、骨が10〜20%ほど潰れると、CT画像を通じて骨折かどうかを見分けられると説明する。だが、診断が遅れたり見落とされたりすれば、激しい痛みが生活の質を著しく低下させるうえ、たとえ自然に治癒しても、猫背や脊椎の変形、神経の圧迫など、さまざまな後遺症を招く恐れがある。

さらに、慢性的な腰痛が必ずしも骨折に由来するとは限らず、筋肉の炎症や腫瘍、変形による脊椎の異常といった可能性も考えられる。そのため、過去に骨折の既往がある高齢者が腰痛を訴える場合、医師は「古傷」と「新しい損傷」を的確に見分ける必要があり、この判断が極めて難しいという。

病患,醫院,斷層掃描,腦斷層掃描,CT。(Pixabay)
脊椎圧迫骨折は、少なくとも10〜20%の圧迫があれば、CT画像で肉眼でも識別できるとされる。(イメージ図:Pixabay)

謝氏は、脊椎圧迫骨折の新旧を正確に判別するにはMRIが最も有効だと語る。ただし、健康保険でのMRIの適用には制限があり、患者が自費で受けるとなると、1回の撮影で約6000〜7000元(約3万円〜3万5000円)の負担がかかる。また、地方の小規模病院では高額なMRI機器の導入が難しいという課題もある。

こうした現状に対して、今回開発されたAIによるCT画像の判読支援技術は、医療現場における負担を軽減し、高齢者のQOL(生活の質)を守るための大きな武器になると期待されている。

93.4%の高精度AIシステムの構築

嘉義県は65歳以上の人口が全体の約25%を占めており、全国でも最も高齢化が進んでいる地域のひとつだ。これを受け、雲林科技大学は地域のニーズに応える形で大林慈済病院との産学協力を進めてきた。 (関連記事: AI医療》「透析大国」台湾 AI技術で命を守る最前線へ 関連記事をもっと読む

雲林科技大学の張伝育氏は、今回のAIシステムの開発にあたって、車両や顔認識など小さな物体を対象とした深層学習用モジュール「YOLOR」を採用。さらに、MobileViT、EfficientNet_NS、CSPDarknet53という3種の画像特徴モデルに、近年注目されているインボルーション技術を組み合わせ、最終的に集成学習(Ensemble Learning)を用いてそれぞれの強みを統合した。その結果、脊椎圧迫性骨折の新旧の傷を93.4%の高精度で識別できるAIシステムの構築に成功した。

核磁共振(MRI)是一種在醫院才有配置的高級影像檢查。圖跟本新聞無關。(資料照/方詠騰攝)
​脊椎圧迫骨折を判断するための最も正確なツールはMRI(核磁気共鳴画像法)。(写真/方詠騰氏撮影)
最新ニュース
日本への情熱と清酒への探求——台湾のKOLが全てを捨てて再出発
「最強高校生」からV1昇格の主力へ──張育陞、日本5年目で語る恩師と成長の軌跡
フェアモント東京、開業目前の全貌を発表 ブランド初の日本進出で新たな歴史へ
CNNも絶賛!台湾・宜蘭の秘境「見晴懷古步道」──ジブリの世界のような幻想的絶景
台湾、国際医療および健康ケア展が開催 貿易協会「健康ケアは病院に限られず」
マスク氏が暴露連発「トランプ氏は私なしじゃ勝てなかった」──大富豪が政治に踏み込む理由とは
日米、国債をめぐって激突! 財政金融博士が明かす日本の為替戦略:「実はトランプと同じ手を使っている」
王義雄の見解:「台湾有事」は買い手次第?トランプ氏が描くリアルな地政学
市場が歓喜!トランプ・習氏が直接対話、株価先物が一斉上昇
米中首脳の手相に台湾政界が驚愕 日本占い師「トランプは握れず、習は不安だらけ」
米中首脳が90分通話、関税・台湾問題を協議 異例の沈黙、トランプ氏に注目集まる
舞台裏》台湾の国安システム、インド・パキスタン戦争を極秘調査 世界を揺るがす疑惑の点を発見
台湾・行政院と立法院の対立、NVIDIA本社誘致にも影響か 台湾各地で波紋拡大
台湾政府、中国訪問の公務員に「事前許可」義務化へ 国家安全を理由に法改正検討
中国の居住証で台湾戸籍抹消 第1号の大学教員が反発「中国のほうが民主的」
芥川賞作家・李琴峰さん、「性別暴露」で甲府市議を提訴 賠償と投稿削除を要求
【武道光影】日本の国技としての大相撲における文化記号の脱構築的考察
「このままでは日本は滅亡する」イーロン・マスク氏の警告を裏付ける最新統計
任天堂スイッチ2の宣伝映像に黄仁勳が登場、カスタマイズされたチップを解説
任天堂スイッチ2世界同時発売!深夜に行列、世界中が熱狂「待ってでも欲しい」新型機
西欧でジフテリアが再拡大 移民を中心に70年ぶりの大規模流行
舞台裏》台湾・国民党に最大の危機 罷免敗北と党内分裂、主席選で盧秀燕が朱立倫に「直接対決」申し出か
調査》台湾・地方政府は「裕福な人々」か?予算戦争で行政院が語らなかった真実
「あなたたちを渡米させないことで、我々はより安全に!」 トランプ氏、新渡航禁止令を発令、12カ国全面禁止・7カ国部分制限
吳典蓉コラム》「大陸訪問の通行証“台胞証”が“トラップカード”に?」──沈黙を強いる賴政権の圧力
「必ず報復する」プーチン氏、トランプ氏と1時間超の電話 即時停戦はさらに遠のく
韓国新政権》台湾問題に慎重姿勢 李在明政権、米中・日との関係構築に注目
六四事件36年 各国が追悼、中国は警備強化と情報統制
24歳・大の里 泰輝が史上最速で横綱昇進 日本出身力士では稀勢の里以来8年ぶり
トランプの関税政策の影響が大きすぎる OECDが今年と来年の世界経済成長予測を下方修正
トランプ氏、渡航禁止令を再開 19カ国に入国制限
トランプ氏「習近平主席は非常に手強い」 対中貿易交渉の困難さに言及
評論》民主が台湾独立に自由を与え、台湾独立は民主の自由を没収しようとしている
在日台人Lulu氏、風傳媒インタビュー 偶然たどり着いた不動産業で「日本への帰属感」
北海道で震度4以上の地震が相次ぐ 専門家「巨大地震への備えを」
「中華民国」の名前は消されるのか──台湾のアイデンティティはどこへ向かう?
「台湾民主の火を灯した男」林正杰氏が死去 「街頭の小覇王」と呼ばれた波乱の政治人生
トランプ政権、鉄鋼・アルミ関税を50%に 世界供給網に波紋、日本企業にも影響か
脱原発の代償?火力発電で大気汚染悪化 医師会が「寿命短縮」に警鐘
「不正入学」疑惑に反論 蒋雨融氏、喬峰のように信念を貫いた道のり
国民党リコール全敗 朱立倫だけが悪いのか?黄光芹氏が統計で異議
韓国大統領選、出口調査で李在明氏当選確実に 自宅前で「国民の信任に応える」と表明
貧困から頂点へ、李在明氏が韓国大統領に就任 内乱克服と経済再生を誓う
韓国・大統領補欠選挙で李在明氏が当選確実 尹政権の弾劾受け緊急実施、政治混乱に終止符へ
帯広「旧・藤丸百貨店」再生へ 2030年新施設開業、25年に仮設「藤丸パーク」先行オープン
日中が水産物輸出で技術合意 処理水めぐる禁輸解除へ前進
IAEAが福島第一原発のALPS処理水を現地調査 「国際安全基準に沿って排出」確認
歴史新ニュース・六四》「ゴルバチョフが来た」 1989年6月4日前の1か月 新ニュース北京現場直撃・天安門学生運動
FOOMA JAPAN 2025、6月10日開幕へ 食品製造の最先端が東京ビッグサイトに集結
台湾・総統就任後初の六四発言 頼清徳:36年を経ても権威主義は国際社会の課題である