西欧でジフテリアが再拡大 移民を中心に70年ぶりの大規模流行

2025-06-05 18:06
2025年5月19日、パレスチナ難民がガザ地区北部で食料を受け取る様子。(AP通信)

西ヨーロッパでは、過去70年間で最大規模となるジフテリアの流行が発生している。4日に発表された新たな研究によると、2022年以降、この感染症は主に移民やホームレスなどの社会的弱者の間で広がっているという。

ジフテリアは感染力の強い細菌感染症で、呼吸器に侵入して全身に広がり、喉の痛みや発熱などを引き起こす。

世界保健機関(WHO)によると、ワクチンを接種していない人の致死率は約30%に達し、とくに子どもに対するリスクはさらに高いとされる。

『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』に掲載された研究では、2022年にジフテリアの原因となる「ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)」が、いくつかの欧州諸国、特に新たに到着した移民の間で急増したことが示された。

欧州疾病予防管理センター(ECDC)は、2022年に362件のジフテリア症例を記録した。

研究チームによると、濃厚接触者の追跡や検査によって感染の封じ込めには一定の効果があったが、少数の感染例は依然として報告されている。

2022年初頭以降、欧州全体で少なくとも536件の症例が報告され、うち3人が死亡した。

10カ国からの患者サンプルによれば、98%が男性で、平均年齢は18歳。ほとんどの患者は最近ヨーロッパに到着した移民だった。

フランス公衆衛生機関とパスツール研究所は共同声明で、「今回の流行は主にアフガニスタンとシリアからの移民に影響しているが、感染源は出身国ではなく、移動中あるいは欧州内の滞在地で感染した可能性が高い」と述べた。

また、各国の患者から分離されたウイルス株に遺伝的類似性が認められたことから、「感染源は出身国以外の共通接触地点にあるとみられる」としている。

流行が発生している具体的な地域については明らかになっていない。

ただし、2022年に検出されたウイルス株と、今年ドイツで確認された株には遺伝的なつながりがあり、「この細菌が西ヨーロッパで静かに広がり続けている可能性がある」と警告している。

ジフテリアワクチンは感染予防に非常に効果的であり、研究者らは集団予防接種の重要性を改めて強調している。 (関連記事: AI医療》「透析大国」台湾 AI技術で命を守る最前線へ 関連記事をもっと読む

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編集:梅木奈実

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