ロシアは過去1か月にわたり、ウクライナの軍事・民間施設を標的に、週ごとに1000機以上の無人機を投入する大規模攻撃を繰り返している。先週は一晩で300機を超えるドローン攻撃が行われ、激化する戦況の中、ウクライナ側も反撃に出た。ウクライナ軍は6月1日、ロシアの戦略爆撃機基地を狙った無人機攻撃、通称「スパイダーウェブ」作戦を決行。この挑発的な攻勢に対して、ロシアのプーチン大統領はすぐにトランプ氏に電話をかけ、「必ず報復する」との強い姿勢を示したという。これによりロシア・ウクライナ間の停戦の可能性は、さらに遠のいた形だ。
「即座に平和をもたらす対話ではない」
一方で、アメリカ側が直接対話を望んでいた中国・習近平氏とのホットラインは依然として開かれていない。そんな中、プーチン氏とトランプ氏のラインは比較的スムーズにつながっているようだ。
トランプ氏はSNSに、「ロシアのプーチン大統領と約1時間15分、電話で対話した」と投稿。ウクライナの無人機攻撃やロシア空軍基地の被害について話し合ったという。「これは悪くない対話だったが、即座に平和をもたらすものではなかった」とトランプ氏は述べ、プーチン氏が報復の必要性を強く訴えていたことを明かした。
トランプ氏の投稿:
「ロシアのプーチン大統領と1時間15分ほど電話で話した。ウクライナが基地に配備されたロシア軍機を攻撃した事件や、その他の攻勢について話し合った。これはまずまずの対話だったが、すぐに平和が訪れるわけではなかった。プーチン大統領は、空軍基地へのウクライナの襲撃には対応せざるを得ないと強く語っていた。」
「我々はイランについても話し合い、核兵器に関する決断の時間が迫っていることを議論した。私はプーチン大統領に、イランが核兵器を持つことは許されないと伝えた。その点では合意できたと信じている。プーチン大統領はイランとの議論に参加する意向を示し、迅速な結論に役立つかもしれないと言っている。しかし、私はイランが決断を先延ばしにしていると感じており、短期間ではっきりとした答えが必要だ!」
『ニューヨーク・タイムズ』によれば、トランプ氏の仲介もあって、ウクライナとロシアはトルコ・イスタンブールでの和平交渉を続けているが、具体的な進展は見られていない。ロシア側は、ホワイトハウスが数週間前に示した停戦案を拒否し、6月4日にはプーチン氏とウクライナのゼレンスキー大統領が互いを非難。双方ともに「相手の攻撃が和平の障害だ」と強く批判した。
トランプ氏は再びプーチン氏と直接対話を行い、「良好な会話だった」とする一方で、「すぐに戦争が終わるわけではない」と冷静に現状を分析している。 (関連記事: ロシア版「真珠湾攻撃」 ウクライナ無人機が戦果、ロシア軍極東基地まで爆撃 | 関連記事をもっと読む )
トランプ氏はプーチン氏の攻撃を止めようとしたのか?
ロシアの外交政策を担当するクレムリンの補佐官、ユーリ・ウシャコフ氏は記者団に対し、プーチン氏がウクライナへの報復について電話でトランプ氏と話したかどうかは明かさなかった。ただ、ウクライナ政府とその行動を「テロ」と非難したという。だが、『ニューヨーク・タイムズ』はこれを、ロシアが2022年からウクライナへ全面侵攻を開始し、最近では都市部や民間人に対する空爆が激化している現実を無視した発言だと批判している。