舞台裏》台湾・国民党に最大の危機 罷免敗北と党内分裂、主席選で盧秀燕が朱立倫に「直接対決」申し出か

2025-06-05 17:43
国民党主席の朱立倫氏は以前に「バトンタッチする意思」を表明したが、国民党内部では、実際には台中市長・盧秀燕氏(写真)への牽制策だと見る声もある。(資料写真、柯承惠撮影)
国民党主席の朱立倫氏は以前に「バトンタッチする意思」を表明したが、国民党内部では、実際には台中市長・盧秀燕氏(写真)への牽制策だと見る声もある。(資料写真、柯承惠撮影)
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台湾最大野党・中国国民党は、6月に極めて困難かつ緊迫した局面を迎えている。民進党主導の大規模な罷免運動により、すでに31人の国民党立法委員に対する第二段階の罷免署名が完了し、提出された。一方、国民党中央が進めていた「精密罷免」と称する民進党立委への対抗措置はほぼ壊滅状態であり、原住民出身の陳瑩氏と伍麗華氏に対する第二段階の署名は5月31日の期限までに提出されなかった。

また、台北市選出の民進党立法委員・呉思瑤氏と呉沛憶氏の署名期限は6月7日とされているが、目標達成の見通しは厳しく、他の民進党議員に対する罷免案も進展が滞っている。第二段階の署名成立は絶望的と見られ、7月・8月に予定される第三段階の罷免投票では、「30対0」という屈辱的な結果に終わる可能性が高まっている。

朱立倫主席の「禅譲」発言に党内から疑念の声

このような苦境にある中、すでに党内で批判の的となっている国民党主席・朱立倫氏は、6月中に高まるであろう「退陣圧力」を和らげるため、聯合報のインタビューを通じて「非常にバトンを渡したい」との意向を表明した。同時に、2025年の党主席選挙の日程については変更せず、7月に公告、9月に投票を行う方針も強調した。

この発言は、一見すると台中市長・盧秀燕氏への禅譲の道を開いたように見えるが、日が経つにつれ、党内では「朱氏の発言は単なる計算された一手ではないか」との見方が広がっている。むしろこの発言は盧氏を「表明しにくい立場」に追い込んだだけであり、罷免戦を戦う国民党の候補者たちにとっても不利に働く恐れがある一方、朱立倫氏の地位を固めることだけに資するものだとの指摘もある。

20250514-国民党台北市議会党団14日開催の「双呉をリコールし署名に参加せよ」リコールキャンペーン。(柯承惠撮影)
国民党によるリコール攻勢は失敗に近づいており、朱立倫氏が名指しで標的とした民進党の原住民立法委員に対するリコールは不成立に終わった。台北市選出の民進党立法委員、呉思瑤氏と呉沛憶氏へのリコールも極めて困難な情勢となっている。(資料写真、柯承惠撮影)

朱立倫「本当に退く気はあるのか」党内からの疑念高まる

盧秀燕氏の擁立を支持する国民党のある議員は、「朱氏の発言は、選挙日程を変更せずにあえて“譲る姿勢”を演出する、巧妙な保身策にすぎない」と批判する。朱氏は表向きには「禅譲したい」と語っているものの、「次期党首選には出馬しない」と明言したわけではない。すなわち、盧秀燕氏や台北市長・蔣萬安氏といった有力候補が立たない限り、朱氏は「禅譲する理由がない」として出馬を継続する可能性が高い。

さらに、党主席選の時期が7〜8月の罷免戦と重なることで、盧氏や蔣氏といった交代候補が立候補の意志を示す余地も極めて限られる。仮に朱氏が党務を率いて罷免に対応している中で、誰かが「党首交代」を表明すれば、党の士気を損ね、内部の結束や世論への印象にも悪影響を及ぼしかねない。しかも台北・台中といった国民党の拠点は罷免戦の最前線でもあり、両市長が自選挙区の議席を死守する重責を負う中、党主席選に関わる余力などあるはずもない。 (関連記事: 舞台裏》朱立倫氏の進退に注目集まる 民進党リコール戦略で国民党に動揺 関連記事をもっと読む

延期なければ「禅譲」も空論に?

かつて党務に関わった元高官は、「朱氏と党中央が選挙日程を変更しない限り、禅譲発言は意味を持たない」と断言する。もし党首選と罷免投票が重なることになれば、7月の公告後、党内から有力候補が名乗り出ることはなく、禅譲の“相手”がいない状態となり、朱氏は自然と続投に向かう。結果的に「党主席選は袋小路に陥り、対応を誤れば党に壊滅的な結果をもたらしかねない」と警鐘を鳴らす。

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