日本初のフェアモントブランドホテル「フェアモント東京」が2025年7月1日、東京都港区芙浦にグランドオープンすることが決まった。5月16日には都内で記者発表会が開かれ、総支配人カラン・シン氏とマーケティングディレクター藤川三智子氏が登壇し、ブランドの理念や施設概要、ホスピタリティの在り方などを詳細に説明した。
その象徴として、ホテルでは黒いラブラドールレトリバーのセリーンを「CHO(Chief Happiness Officer=最高ハピネス責任者)」に任命。(写真/黃信維撮影)フェアモント東京の理念と「CHO」セリーン
カラン・シン総支配人は、今回の開業を「単なるホテルの新設ではなく、日本におけるフェアモントの歴史の始まり」と位置づけ、世界各地で都市の象徴として展開してきたフェアモントが、東京においても同様の存在となることを目指すと述べた。ホテルのコンセプトには「インクルーシブ・ラグジュアリー」が掲げられており、多様性を受け入れる温かさと、すべての人に寄り添う心が込められているという。
総支配人カラン・シン氏が登壇し、ブランドの理念、施設概要、ホスピタリティの在り方などを詳細に語った。写真/黃信維その象徴として、ホテルでは黒いラブラドールレトリバーのセリーンを「CHO(Chief Happiness Officer=最高ハピネス責任者)」に任命。来館者を温かく迎えるとともに、動物保護団体との連携による社会貢献にも積極的に取り組む。6月16日からは、愛犬と共に宿泊できる「Wandastick」プランの予約受付も開始され、特製グッズやペット用サービスが提供される。ペット用スカーフやベッド、朝食プレートのほか、宿泊者にはセリーンのぬいぐるみ「Serene Jr.」も贈られる。宿泊費の10%は動物愛護団体に寄付される予定だ。
施設の魅力と客室の特徴
藤川三智子マーケティングディレクターは、フェアモントが1907年創業で115年以上の歴史を持ち、世界92カ所に展開していることを紹介した上で、東京が93番目のホテルになると説明。フェアモント東京は、JR浜松町駅近くの「BLUE FRONT芝浦」南タワーに位置し、35階から43階にかけて設けられた全217室の客室のうち29室がスイートルーム。41階と42階には「フェアモント・ゴールド」専用フロアを設置し、朝食、アフタヌーンティー、ナイトキャップなど5つの時間帯に応じたサービスを提供する。
客室はすべて日本の「縁側」から着想を得た設計で、外と内をつなげる空間が特徴。家具やソファは高さと硬さを何度もテストして開発され、仕事や食事も快適に利用できる設計となっている。
マーケティングディレクター藤川三智子氏が登壇し、ブランドの理念、施設概要、ホスピタリティの在り方などを詳細に語った。写真/黃信維ダイニング体験とバーの特徴
和と仏のカフェ文化を融合した「View Mer」では、和風(おにぎり、手毬寿司、どら焼き)とフレンチ風の2種類のアフタヌーンティーが提供され、ペイストリーやプティーンなどカナダ文化を取り入れた軽食も揃う。
36階には、鉄板焼き「突二」と寿司「にぎわ」を配置。「突二」では全国各地の銘柄牛や塩釜蒸しアワビなどを提供し、好きな部位の肉をマイナス2度でウェットエイジング保存できる「ミートキープ」サービスも導入される。「にぎわ」では、山形県産のつや姫米、京都の米酢、東京都産の塩などこだわりの食材を使用。料理長が共同開発した純米大吟醸「右輪」も楽しめる。
最上階の「Driftwood」では、金沢の漆器職人による器で再構築された洋食が供され、座席は回転式で東京タワーを背に着席するユニークな設計。社交性を重視した空間として、立ち飲みスタイルの「Yoi to Yoi」では炭火焼きつくねやおでんなども提供される。
また、隠れ家的なリスニングバー「Off the Record」は14席限定で、ハイファイ音響設備とDJブースを備え、扉の開閉にトリックが施された秘密の空間となっている。
マーケティングディレクター藤川三智子氏が登壇し、ブランドの理念、施設概要、ホスピタリティの在り方などを詳細に語った。写真/黃信維スパ施設とウェルネス体験
スパ施設「フェアモント スパ」では、20mのインフィニティプール、屋外リラクゼーションプール、スチームルーム、4つのトリートメントルームを備える。シグネチャープログラムは3種類。「レガシー」は米国Kerstin Florianの商材を使用し、「デスティネーション」は桜の香りと港区の海風をイメージしたオリジナルオイル、「セレニティ」は月の満ち欠けをテーマに、三木本コスメティックの抽出液を使用する。
サステナビリティへの取り組み
サステナビリティの取り組みとして、地産地消の推進、ケージフリー卵の使用、装飾の食用化に加え、AIを活用したリアルタイムの廃棄物追跡と分析によって食品ロスの削減に取り組んでいる。さらに、イギリスの企業フードステップ社と提携し、厨房からの炭素排出量を可視化するメニュー開発を行っている。
今後の展望とホテルの理念
さらにフェアモント東京では、レストランとスパの一般予約を6月16日から開始する。各ダイニングでは地元食材とサステナブルな取り組みによる新たな体験を打ち出しており、バーでは日本の立ち飲み文化や音楽カルチャーに敬意を表した仕掛けが展開される。スパの3種のトリートメントはそれぞれ「音」「香り」「月の満ち欠け」などテーマを持ち、フェアモントの哲学を五感で味わえる設計となっている。
開業に向けてホテル内では従業員育成にも注力しており、「人と人がつながる場所」「心を動かす瞬間を創出する空間」としての価値を高めていく方針が示された。ブランドの理念を体現する“人”こそがホテルの最大の魅力であると両氏は強調し、フェアモント東京の門出に期待を寄せた。
1907年創業の「フェアモント ホテル&リゾート」は、世界92以上のホテルを展開し、地域の文化や歴史と融合した唯一無二の滞在体験を提供してきた。ニューヨークの「ザ・プラザ」、ロンドンの「ザ・サボイ」、サンフランシスコの「フェアモント・サンフランシスコ」、カナダの「フェアモント・バンフ・スプリングス」、上海の「フェアモント・ピースホテル」、ドバイの「フェアモント・ザ・パーム」など、世界各地のランドマーク的存在として名を馳せている。
同ブランドは現在、フランスを本拠地とし、110カ国以上で5,600を超えるホテルを展開する世界有数のホスピタリティグループ「アコー」の一員でもあり、ライフスタイル重視のロイヤルティプログラム「ALL(Accor Live Limitless)」に参画している。