米中首脳が90分通話、関税・台湾問題を協議 異例の沈黙、トランプ氏に注目集まる

2025-06-06 13:55
トランプ氏が5日、習近平氏と90分間電話会談を行った。(資料写真、AP通信)
トランプ氏が5日、習近平氏と90分間電話会談を行った。(資料写真、AP通信)

長らく待たれていた米中首脳の直接対話がついに実現した。90日間の関税猶予期間が迫るなか、緊張が緩和の兆しを見せていた米中貿易戦争には、なお不確実性がつきまとう。米国のドナルド・トランプ前大統領は5日夜、中国の習近平国家主席と90分にわたり電話会談を行い、貿易協議のみならず「台湾問題」についても協議した。米国在住の学者・翁履中氏が関連報道を引用して明らかにしたところによると、中国側はこの通話がトランプ氏の要請で実現したと発表。ホワイトハウスがすぐにこれを確認しなかったにもかかわらず、米株価指数先物は上昇し、市場が米中の対話再開に期待を寄せていることがうかがえる。翁氏はまた、今回のトランプ氏の異例の沈黙にも注目し、「これは一つのシグナルかもしれない」と分析している。

翁履中氏は5日夜、自身のフェイスブックにて、中国政府が先に米中首脳会談の内容を発表したことを指摘。通常、世論操作に積極的なトランプ氏が沈黙を貫いた点に注目し、「それ自体がメッセージだ」と述べた。外交儀礼の観点から見れば、誰が先に発表するか、誰が主導したかという表現のされ方には、発信者の発言権や主導権が色濃く表れる。このため、トランプ氏が先に情報を出さなかった背景には、中国側が「話をするなら、発表は我々が行う」という条件を提示していた可能性があるという。こうした細かな点にも、両国が今回の通話をどのように位置づけていたか、それぞれの重視する観点の違いがにじみ出ている。

翁氏の分析によれば、トランプ氏が先日、「習近平とは話が通じにくい」と発言したのは、一見すると不満の表明にも思えるが、実際には中国側の強硬姿勢をあらかじめ示唆していた可能性もあるという。つまり、「交渉するにしても、それは米国主導ではない」との中国側の立場を反映しているという見方だ。一方、北京側は今回の通話について極めて慎重に対応。トランプ氏からの発信であったことを明確に強調することで、外交的な立場において道義的・戦略的優位性を確保しようとする姿勢が見て取れる。通話内容の公表やメディアへの露出のタイミングの調整など、一連の対応は、たとえ対話が行われたとしても、それだけで交渉が順調に進むとは限らないことを示している。ただし、さらなる協議が近いうちに開始される可能性は高い。

翁氏は最後にこう総括する。「外交の世界では、誰が発言し、誰が先に語り、誰が沈黙するか──その一つひとつが政治的な計算の表れである」。仮に情報発信の主導権をめぐってここまでの綱引きがあるならば、それは両国間の信頼関係が依然として脆弱であることの証左であり、貿易、テクノロジー、さらには地政学的な安全保障といったより核心的なテーマにおいては、今後さらに熾烈な攻防が展開されることを意味している。そのうえで翁氏は、「台湾をはじめとする各国の観察者が米中の動向を読み解く際には、表面的な応酬だけでなく、“どう話すか、誰が先に話すか、そして何を語らないか”という点にも注目すべきだ」と訴えている。

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編集:柄澤南

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