マスク氏が暴露連発「トランプ氏は私なしじゃ勝てなかった」──大富豪が政治に踏み込む理由とは

2025-06-06 15:44
2025年5月30日、マスク氏がホワイトハウスのオーバルオフィス(大統領執務室)でトランプ氏と記者会見に臨んだ。(AP通信)

アメリカのトランプ大統領が最も信頼していたとされるテック界の大物、マスク氏が、関係の終焉を象徴するような爆弾発言を連発している。

5日、マスク氏は「私がいなければ、トランプは昨年11月の選挙で勝てなかっただろう」とXで発言。かつてのパートナーへの強烈な皮肉だ。これに対してトランプ氏も黙っていなかった。「イーロンには非常に失望している。彼には本当に大きな助力をした」と語り、連邦政府がテスラと結んでいる数十億ドル規模の契約の見直しまで検討しているという。

「ニューヨーク・タイムズ」によると、両者の関係悪化が表面化したのは、マスク氏がトランプ政権が推進する予算法案を「嘔吐を催す悪行」と評したことが発端だった。過去にもマスク氏は、トランプ氏の関税設計の立案者ナバロ氏を「一袋のレンガより愚かだ」と投稿しており、政権内の人物との確執は明らかだった。

また「アクシオス」の報道では、マスク氏がホワイトハウスで当時の財務長官ベセント氏と激しい口論を交わし、その場にトランプ氏とイタリアのメローニ首相も居合わせていたという。

今回の対立は一段と激しく、マスク氏は「トランプは私がいなければ何もできない」とまで言い切った。一方、トランプ氏は「イーロンが不満を抱いているのは、我々がEV関連の多額の補助金を却下したからだ。彼らは政府に何十億ドルの支援を求めていたが、それは最初から彼も知っていたことだ」と反論している。

2025年1月19日、トランプはアメリカ第60回大統領就任式前の集会でスピーチを行い、マスクも同席した。(AP)
2025年1月19日、トランプ氏が米国第60代大統領就任式前の集会でスピーチを行い、マスク氏も同席した。(AP)

この二人の富豪は昨年、突如として手を組み、「新しいアメリカを作る」と誓い合った。トランプ氏が政治的権力を、マスク氏が経済力と影響力を持ち寄る構図だったが、その同盟はもろくも崩れ去った。

「ニューヨーク・タイムズ」は、今回の決裂がトランプ氏の再選戦略における最も重要なパワーバランスを変えたと分析。対立のきっかけとなった政策批判は、数日で「トランプの勝利は誰の功績か」「マスク氏がホワイトハウスの送別会で化粧をしなかった理由」「なぜNASA局長にマスク氏の盟友が就任できなかったのか」にまで話が広がっている。

応酬はSNS上でもエスカレートし、トランプ氏はマスク氏の企業との連邦契約を打ち切ると示唆。一方のマスク氏は「今こそ新たな政党を立ち上げる時だ」と投稿し、政府文書にはトランプ氏とエプスタイン氏の関係が記録されているとも主張。さらには「トランプ弾劾を支持する」とまで発言した。

この泥仕合に、息子との疎遠な関係で知られるインフルエンサーのセントクレア氏も参戦し、「もし別れるアドバイスが必要なら、いつでもどうぞ」と挑発。争いは政界だけでなく、ネット文化にも波及している。両者の確執が表面化して以降、テスラの株価は急落し、終値で14%も下落。さらにトランプ氏が推進していたミームコインの価値まで落ち込んだ。経済界と政界を巻き込むこのバトル、今後どこまで広がるのか注目されている。

26歳の右翼ネットアイドル、セントクレアが自分がマスクの子を産んだと主張。(引用X)
26歳のインフルエンサー、セントクレア氏がマスク氏の子を産んだと主張している。(引用X)

マスク氏は、トランプ氏の大統領選活動中に2.75億万ドル(約430億円)を拠出して強力に支援した有力支援者のひとり。トランプ氏がホワイトハウスに戻ってからは、最高アドバイザーとして人事と契約の大幅削減を主導し、連邦官僚に衝撃を与えた。