米国のトランプ大統領は最近、各国の新たな関税率を次々と発表しているが、台湾の関税についてはいまだ明らかにしていない。これについて、米国在住の政治学教授・翁履中氏はネット番組『民衆之聲』で「税率そのものよりも、続く調査の結果こそ台湾が注目すべきだ」と指摘した。調査が完了すれば、米国はTSMC(台積電)に顧客リストの提出を求め、リストに記載のある企業には特別免除を与える一方、記載されていない企業には追加関税を課す可能性があるという。
翁氏は「台湾は米国にとってそれほど重要ではない」とも語る。トランプ大統領からの関税に関する書簡には国家元首宛ての肩書きが記されるが、トランプ氏が近く中国を訪問するとみられることを考慮すると、台湾に対する表現は米国の「一つの中国」政策の曖昧さに触れるものだと分析する。現在進行中の関税交渉では、232条項で調査中のハイテク産業が切り離されており、台湾の対米貿易の62%以上を占める電子産業を除くと、関税の影響を受けるのは実質38%にとどまる。日本や韓国では232条項調査の対象外が60%以上を占めるのに対し、台湾は市場規模が2300万人と小さく、さらに影響を受ける割合も限られているため、関税発表が後回しにされている背景が見て取れる。
政府筋は「台湾の関税が発表されれば、15~20%の一律関税が課される可能性がある」との見方を示しているが、232条項の調査結果が出るまでは不透明だ。トランプ氏が各国に新たな追加関税を課す可能性も残っている。翁氏は「日本の最終関税が25%になることは考えにくく、交渉で引き下げられる可能性が高い」と予測。一方、韓国は新大統領就任のタイミングと重なり、まだ本格交渉に入っていない。トランプ氏は日本と韓国には25%を提示し3週間の交渉期間を設けたが、台湾については「交渉する意思すら見えない」とし、発表が遅れている理由はその重要性の低さを映していると述べた。
関税の影響は農産品・自動車業界にとどまらず翁氏「中小輸出業者が特に苦境に」
翁氏はさらに「米国が真に注視しているのは、台湾の半導体やハイテク産業に関する関税や、232条項での調査だ」と強調する。特に、中国関連部品を含む台湾製品や、中国で一度生産したものを台湾で組み立て、再度米国に輸出するようなフローは、広義の国安リスクとみなされる可能性がある。TSMCが顧客リスト提出を求められ特別免除を受ける一方、その他の台湾メーカーは新たな関税の対象となり得るとした。
関税の影響は農産品や自動車にとどまらない。翁氏は「25%の関税でも台湾は品質で競えるが、為替の上昇が重なれば中小輸出業者は耐えられない」と分析する。台湾ドルはトランプ氏の就任以降、対ドルで13%以上も上昇し、32元から28~29元へ。中小企業の輸出利益率は平均18%で、為替で13%が消え、さらに5%の関税が加われば利益はほぼ消滅する。
また、台湾の非貿易障壁は世界一とされ、翁氏は「台湾は非貿易障壁を操作していないことを米国に伝えたい」と語る。中央銀行総裁も「台湾が金融大国の攻撃を受けることはありえない」としており、台湾の外貨準備は6000億米ドル(約96兆円)近くに達する。こうした余力を米国は「裕福」と見なし、市場開放や米国製品の購入増を求める可能性もあるという。
翁氏はさらに、金融市場について「台湾株式市場の時価総額は世界10位前後で、米国を含む外国投資家が注目する分野だ」と指摘。現状、台湾は外国資本による株式保有に制限を設けており、米国が圧力をかけることで金融市場の開放を迫られる可能性があるとした。関税交渉の一環として、台湾の金融市場がどこまで開放されるのか、今後も注視が必要と述べている。
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編集:田中佳奈
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