評論:台湾、1万元の現金給付を可決 賴政権の「誤算」か? 台電補助との比較で物議

2025-07-14 10:55
朝野、現金一律給付を巡る激戦で最終的に国民党が勝利し、1万台湾ドルの現金一律給付案が可決された。(劉偉宏撮影)

先週金曜日、台湾の立法院は、最大野党・中国国民党(以下、国民党)の主導で、1万元の現金を一律給付する法案を第三読会で可決した。国民党はこれを歓迎したが、民進党をはじめとする与党側は激しく反発し、「大型リコールを乗り切るための苦肉の策だ」と厳しく批判した。ただし、その反発もどこか力強さを欠いていた。というのも、政治と財政の専門性はすでに与党自身の手によって損なわれているからである。

財政規律と専門性の観点から見れば、国民党が主張する一律給付には合理性があるとは言い難い。財政学者の多くもこのような政策を支持していない。財政資源には限りがあり、本来は最も必要な分野に集中して使うべきだからである。個人への現金支給が正当化されるとすれば、それは本当に支援が必要な低所得者層や緊急支援を要する人々に対するものであるべきであり、貧富にかかわらず全員に配るというやり方は、合理性を欠き、財政資源の浪費につながる。

ただし、与党・民進党が、最大野党・国民党による一律現金給付に対し激しく非難する中、その姿勢にはどこか説得力を欠く印象も否めない。というのも、さかのぼることわずか2年前の2023年4月、当時の蔡英文政権下で、民進党は大々的に1人当たり6,000元の現金給付を実施していたからである。名目は「ポストコロナの経済・社会の回復力強化と国民による成果共有のための特別予算」に基づくものであり、今回の1万元支給は「国際情勢に対応した経済・社会・国土安全保障の強靭化特別条例」に基づくものとされる。

両者は形式こそ異なるが、背景や環境には共通点が多い。いずれも、直前の年度において大幅な税収超過があり、2022年は5,237億元、2024年は5,283億元の超過となっていた。また、「税金を国民に還元すべき」との声は与野党双方から上がっていた。さらに、いずれの給付も「庶民支援」や「景気刺激」を目的とする点で共通している。2023年は新型コロナの影響で消費が落ち込んだ時期であり、今回は米国のトランプ大統領が掲げる関税政策が経済に与える影響を見越した対応とされている。

両者の最大の違いを挙げるとすれば、それは提案主体の立場にある。前回の6,000元給付は与党・民進党主導で実施されたのに対し、今回の1万元給付は野党・国民党が主導した。このため、政治的な得点、あるいは失点が生じやすく、「善政を行った政党」というイメージは、今回は国民党側に移った格好となった。

だが、実のところ、この一律給付の発端を作ったのもまた与党側である。政府は税収の大幅超過と関税戦争の影響を理由に、経済対策としての給付の必要性をまず提起したうえで、当初の総予算案に盛り込まれていた台湾電力(台電)への1,000億元補助金を野党に削除されながらも、再度ねじ込もうと試みた。しかし結果的に、補助金案は通らず、一方で1人当たり1万元、総額2,350億元という現金給付だけが成立するかたちとなり、政府側にとっては「安くあげるつもりがかえって高くつく」事態となった。

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