舞台裏》台湾・電力補助を巡り国民党内に亀裂 朱立倫氏の発言に「方針転換」の批判も

2025-07-11 14:55
国民党主席の朱立倫が台湾電力への補填と現金給付について、取引を許可するとの報道が広まった後、瞬く間に党内の反発を引き起こした。(参考写真、柯承惠撮影)
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アメリカによる対等関税の影響に対応するため、行政院は《国際情勢への対応による経済・社会・国土安全保障強化特別条例》を打ち出し、総額4100億元規模の予算を編成した。内容には、国土安全の強靭化に1500億元、台湾電力への補助として1000億元が含まれている。これに対し、国民党は台湾電力への1000億元補助には反対の立場を取る一方で、関税対策としての産業発展予算や国土安全の強靭化予算1500億元には異論を唱えていない。このため、行政院に対し、それぞれの内容を個別に立法化するよう求めており、防衛予算に関しては《国土強靭化特別予算条例》として別途提出するよう要請している。

7月9日の党中央常務委員会で、朱立倫氏はあいさつの中で「社会補助に関しては我々も支持する。ただ、民進党がすべてを一括してこの特別条例にまとめようとしている以上、国民党の立場は明確だ。われわれが求めているのはただ一つ――全国民への現金給付を増額すること」と述べた。この発言は、行政院案への支持を示唆するものと受け止められ、加えて一部メディアが「国民党が通過を容認か? 台湾電力への補助1000億元」などと報じたことで、党の支持者の間に一気に怒りが広がった。

台電、 供電、 電価、 電力。(柯承惠攝)
台湾電力への1000億元の補助は国民党内で論争に。(資料写真/柯承惠撮影)

基層・民代・名嘴が一斉に反発 支持者は「これでは投票しない」と怒りをぶつける

この報道が広くメディアに取り上げられると、国民党の支持者から地方議員や立法委員(国会議員)に抗議の電話が相次いだ。「この案には絶対に賛成すべきでない」との声が多く、議員に対して選挙区の立法委員や国民党中央に強く伝えるよう求めたという。地方の議員事務所のスタッフも、一般市民から「台湾電力への1000億元補助と現金給付を取引するとは何事だ。そんなことをするならもう投票しない」といった抗議の電話を何本も受けたと報告している。こうした状況は一部の選挙区にとどまらず、複数の地域で確認されている。

9日夜には、国民党の立法委員が参加するグループチャットが大きく荒れた。ある議員が「取引報道」の記事を共有したほか、「支持者の怒りは非常に深刻だ」と訴える声が続いた。報道によれば、親国民党のメディア評論家からも反対意見が出ており、「今後はもはや国民党を擁護できない」との発言もあったという。反対の声を上げたのは主に北部選出や比例代表の議員で、グループ内で反対を表明した議員は10人を超え、最近ではまれに見る激しい議論となった。金門選出の陳玉珍立法委員も反対の意向を示したとの情報があり、《風傳媒》は本人に電話で確認を試みた。 (関連記事: 舞台裏》国民党が頼清徳総統に「期待と警戒」 『国家の団結十講』を逆手に取る思惑とは? 関連記事をもっと読む

20250426-国民党が26日午後にケイダガラン大道で「反緑共、戦独裁」426大行進を行った。(柯承惠撮影)
「交換案」が登場した後、基層支持者の不満は瞬時に爆発し、議員や立法委員の電話を爆撃して抗議の意を表明した。(資料写真、柯承惠撮影)

党内から朱氏に批判噴出 陳玉珍氏「全国の支持者が立場の揺れに反発」

陳玉珍氏は、支持者から聞いた意見をそのまま党のグループチャットに共有しただけで、自身がリコール運動に直面しているわけではなく、純粋に選挙民の声を反映したものだと説明した。彼女は当初、朱立倫氏の発言や報道内容を知らずに投稿したが、それ以前からすでに他の立法委員も同様の意見を述べていたという。多くの委員が、支持者からの強い反対の声を受け取っているとしており、陳氏によれば、彼女の支持者は金門に限らず、全国各地の国民党支持層であり、党本部の姿勢が揺れていることに対して「立場を貫くべきだ」との反発が広がっていると語った。彼女はすぐに党本部に電話し、担当幹部から「これは取引ではない」との説明を受けた。実際、以前の党内会議では「電気料金の値上げは逆効果になる」として補助金を求める声も一部の議員から出ていたという。