中国政府が日本産和牛の輸入再開を検討していることが明らかとなり、国際的な関心を集めている。読売新聞の報道によると、日中両国はすでに2019年に「日中動物衛生検疫協定」に署名していたものの、中国側の国内手続きが完了していなかったため、これまで発効には至っていなかった。
今回、中国の何立峰副首相が大阪で自民党の森山裕幹事長と会談する際に、手続きが完了したことを正式に表明する見通しで、報道では「この協定の発効に必要な中国国内の手続きはすでに完了した」と伝えられている。
禁輸はなぜ24年も解除されなかったのか?
中国は2001年9月、日本で狂牛病(BSE)が発生したことを受け、日本産牛肉の輸入を全面的に禁止した。その後、両国は防疫・検疫に関する協力協定に署名したものの、中国側が協定発効の手続きを進めなかったため、実際の輸入再開には至らず、この状態が5年半にわたり続いていた。
しかし最近になって日中間の高官レベルでの交流が活発化したことを背景に、牛肉輸入に関する協議が再び動き出した。昨年11月には日本の石破茂首相が中国の習近平国家主席と会談し、日本産牛肉の輸入問題を提起。12月には両国の外相間でも同問題について協議が行われた。
中国側がこの時期に日本と関係を修復した理由は?
関係者の見方によれば、中国は近年、アメリカとの対立が激化するなか、外交バランスを図るため日本との関係修復に舵を切っているという。2023年8月には福島第一原発の処理水海洋放出を受け、日本産水産物の輸入を全面禁止したが、今年6月にその輸入再開を発表。さらに今回は、牛肉輸入再開に向けた動きも見られ、日本に対して戦略的な「善意」を示しているとの見方が広がっている。
報道では「中国政府は日本の取り込みを図っている」とも指摘されている。
今後の二国間協力の展開は?
現在までに日本側が明らかにしている情報によると、協定が正式に発効した後、日中両国は具体的な検疫および安全基準に関する協議を開始する予定だ。今回訪日する中国の何立峰副首相は、習近平国家主席の側近とされる人物で、大阪で開催される中国の「国家館デー」イベントに出席し、自民党の森山裕幹事長と会談する予定となっている。
両者は牛肉輸出に加え、パンダの再貸与に関する協議も行う見通し。森山氏は「一日たりとも待てない。和牛の対中輸出を一刻も早く再開させたい」と意欲を示した。
今後の展開は貿易にどのような影響を与えるのか?
今回の日中間における和牛貿易の進展は、アジアの高級農産物市場の構造を再編する可能性がある。協定が円滑に実施されれば、2001年以降初となる両国間の牛肉の正式な貿易が再開され、他の農産品におけるビジネスチャンスも広がるとみられている。
【主な経緯】
- 2001年9月:日本でBSEが発生し、中国は直ちに牛肉の輸入を禁止
- 2019年11月:日中が動物検疫協定を締結
- 2024年7月:中国が協定発効手続きを完了
- 7月11日:何立峰氏が訪日し、森山氏と会談
- 今後:実質的な検疫と安全対策の協議が展開される予定
情報提供:読売新聞
背景整理|日本産牛肉の対中禁輸と検疫協定の歩み
狂牛病(BSE)は肉骨粉感染によって引き起こされる神経系疾患であり、牛肉製品を通じて拡散される。過去には多国間で貿易禁止措置が採られ、2001年の日本での症例発生後、多数の国が日本産牛肉の輸入を禁止した。貿易再開のため、日本は多くの国と検疫協力協定を締結しており、日中間の「動物衛生検疫協定」もこの一環にあり、疾病の管理と検疫基準の相互承認を重視した国際農産物貿易の重要基盤となっている。
編集:柄澤南 (関連記事: 日中が水産物輸出で技術合意 処理水めぐる禁輸解除へ前進 | 関連記事をもっと読む )
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