何思慎観点: 石破首相が日中与党交流を強化、「日本有事」を警戒

日本の石破茂首相と中国の習近平国家主席がペルーで会談。(首相官邸ウェブサイト)

日本の石破茂首相は、米国次期大統領トランプ氏との会談実現が困難な状況の中、逆転の外交戦略を展開し、日中関係改善に全力を注いでいる。石破首相は9日、首相官邸で自民党の森山裕幹事長、公明党の西田実仁幹事長と会談し、13日の訪中を前に親書を手渡し、日中関係重視の姿勢を示した。

「日中与党交流メカニズム」は、二国間の公式外交を補完するだけでなく、日中関係正常化の具体的象徴でもある。この対話は2018年から中断され、その間、日中間の不和が続き関係が悪化。現時点での党間交流の再開は大きな意味を持つ。森山裕氏は、日中間の諸問題について、複雑な関係の中で綿密な対話を行うことが極めて重要だと述べた。日中与党首脳の対話は双方の問題緩和に寄与し、地政学的な戦略安全保障の対立激化を抑制し、日中友好に有利な外部環境を創出できる。

自民党は与党間対話メカニズムを通じて「首脳外交」再開の可能性を探っており、森山裕氏は「首相が早期訪中を望んでいる」と明かした。石破首相の訪中が実現すれば、2020年から延期されている習近平主席の訪日にも進展が期待される。森山氏は日中友好議員連盟の中核メンバーで、2024年に二度訪中し、全国人民代表大会常務委員長の趙楽際と会談、「議員外交」の復活を主導した。日中友好議員連盟は前会長の二階俊博氏の政界引退後、会長職が空席となっており、森山氏が後任候補として挙がっている。

終戦80周年の節目に、石破首相は日中関係の布石を打ち、親中派の森山裕氏に党務を任せただけでなく、同じ派閥出身の岩屋毅氏を外相に起用した。岩屋毅氏は前首相田中角栄氏の最後の弟子として知られる知中派である。1972年9月、田中首相は日中国交正常化を実現したものの、双方は「歴史認識問題」、尖閣諸島問題、地政学的戦略の矛盾により、日中関係は「正常」とは言い難い状況が続いている。米中競争の中、岸田内閣は「安保三文書」で中国を「前例のない戦略的挑戦」と位置付け、「日中友好」は空論となっている。

昨年末の岩屋毅外相の訪中で日中間の信頼回復を模索する中、石破首相は「日中与党交流メカニズム」を新たな戦略的互恵関係実現の鍵として強化している。石破首相は交流・対話を通じて日中社会の和解を促進し、中国との政治的対立を管理し、日本周辺の緊張を緩和して「日本有事」を回避しようとしている。多国間関係への関心が薄いトランプ氏が日米同盟関係に否定的な影響を及ぼす可能性があることから、石破首相は予防策を講じ、対米外交における交渉カードを創出し、早期に党政府高官対話を通じて日中関係の対立緩和を図る必要がある。

石破首相が7月の参議院選挙で優位に立てれば、8月15日に戦後80周年の首相談話(「石破談話」)を発表する。「侵略」に関する「歴史認識問題」での詭弁を避ける石破首相は、これを機に日中関係を侵略の歴史的しこりから解放し、習近平主席の訪日を実現させ、「第五の文書」で日中関係を再定義し、田中角栄氏の未完の事業を完遂することが期待される。

しかし、石破首相は日中「首脳外交」を推進する一方で、従来通り訪米を優先し、早ければ2月にワシントンでトランプ氏と会談する見通しだ。戦後の歴代首相は日米関係を適切に処理できなければ短命政権となる運命にあり、石破首相は日中関係で実績を残そうとする場合、まずトランプ氏の承認を得る必要があり、そうでなければ党内から異論が出かねない。少数内閣の首相として、日中関係への過度な傾斜は党内の麻生派や旧安倍派などの反対勢力による失脚の口実を与えかねないことを石破首相は熟知している。慎重な布石として、前首相で自民党副総裁の菅義偉氏を米国のカーター元大統領の国葬に派遣したのも、トランプ陣営との接触を探る試みであった。

*筆者は輔仁大学日本語学科(院)特別招聘教授兼日本・東アジア研究センター所長、台湾大学日本語学科(院)非常勤教授、中華民国国際関係学会理事。本稿は『奔騰思潮』初出、転載許可済み。

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