施威全コラム:石破総理の親中姿勢は突然ではない 台湾、日本政界の真実に目覚めるべき

2024年11月、石破首相が中国・習近平国家主席とペルーで会談。(日本首相官邸ウェブサイト)

台湾政界は3年間、安倍元首相の「台湾有事は日本有事」という言葉を抱きしめ、日台運命共同体と解釈してきたが、現職の岩屋毅外相がその期待を打ち砕いた。岩屋外相は12月末の訪中前の発言で「台湾有事」という表現に賛同せず、「台湾は有事ではなく、無事であるべきだ」「日本は中国の(台湾問題における)立場を理解し尊重する」と強調。その後北京で第二次世界大戦と植民地支配による侵略を謝罪し、北京との「戦略的互恵関係の全面的推進」に呼応した。台湾世論は岩屋外相の言動を、日本の対中政策調整と石破茂首相の「親中」路線の表れと解釈しているが、この見方は誤りで、実際には石破茂は前任者の方針を継続しているだけだ。

政界入り以来、石破茂は外交・防衛政策についてしばしば発言しており、スローガンを叫ぶだけの政治家と比べて、深い見解を述べることを恐れない。国際教養大学助教の陳宥樺は石破茂を学者型政治家と評価している。実際、石破茂を「親米」か「親中」かに分類するのは難しい。アメリカに対しては一方的な追従は避けるべきと主張し、日米の対等は達成困難な目標だが、日本は可能な限り日米関係において自主的な利益を確保すべきと考えている。また「アジアのNATO」を提唱したこともあり、これは中国大陸にとって友好的なメッセージとは言えない。台湾政界は「親中」対「親台」という対立の枠組みだけで石破茂を見るべきではない。

日本外相岩屋毅(左)與中國外長王毅在北京會面。(美聯社)
日本の岩屋毅外相(左)と中国の王毅外相が北京で会談。(AP通信)

台湾が石破茂を理解していないのは、石破茂が台湾問題について少ししか語らないからだ。しかし、それは必ずしも北京を怒らせることを避けているからではなく、台湾問題がそもそも日本の中心的課題ではなく、地域情勢の文脈の中で議論すべきものだからだ。台湾問題だけを取り上げた発言は、文脈を無視した政治的パフォーマンスに陥りやすい。台北の政界が石破茂を理解していないのは、その対抗馬である高市早苗にばかり注目しているためでもある。

高市は同性婚に反対し、夫婦別姓に反対し、女性天皇に反対し、首相就任時には靖国神社参拝を続けると宣言した。「台湾有事は日本有事」について、高市は台湾に迎合的な発言をしている:「台湾有事は日本への脅威であり、自衛権を発動できる状況に近い可能性が高い。日米協力によってのみ日本の領土と国民を守ることができる」。高市の極右的発言と熱烈な親台湾的姿勢は、確かに台湾政界の古参緑営男性たちの好みに合っている。 (関連記事: 呉典蓉コラム:頼清徳はいかにして『民主主義を掲げ民主主義に反する』のか 関連記事をもっと読む

一方、石破茂は異なる。彼は社会変革を支持し、神社参拝問題については北京を意図的に挑発する必要はないと考えている。2022年の訪台で「台湾有事は日本有事」について質問された際、石破茂は「日本は事態発生時にどのような法律や条約で対応するかを慎重に議論しなければならない」と述べた。言外の意味として、台湾防衛は困難であり、軽々しく行動できる問題ではないということだ。このような発言を当時の台湾政府とメディアが大々的に宣伝できなかったのは当然だ。