焼酎王国・鹿児島で、「ちょっと違う」ワイナリーが注目を集めている。福祉と農業の未来を見据えた新しい挑戦、それが朝陽ワイナリーだ。150年の歴史を刻んだ廃校が、今や夢を醸す工房へと生まれ変わっている。
【廃校活用の新モデル】
薩摩川内市に本社を構える朝陽ワイナリー。創業からわずか2年という若さながら、その独創的な取り組みは既に国際的な注目を集め、昨年12月には《フランスワイン文化教育協会》の2024国際ペアリング学術シンポジウムにも招待され、台湾でその魅力を発信した。
永井千秋代表取締役会長は、一般的なワイナリーとは一線を画す経営方針を掲げる。「私たちのワイナリーは一般的なワイナリーとは大きく異なります。私たちは多くの障がい者の方々を雇用し、醸造事業に参加してもらっています。また、農業継承の計画を通じて地元農園が耕作を続けられるよう支援し、廃統合することで地域の活性化と共生を目指しています。」
【「農業継承」という革新】
注目すべきは、同社が推進する「農業継承」の仕組みだ。諏訪洋一社長と今村勝彦取締役部長が語るように、高齢化に直面する農家と新たな挑戦者をつなぐ架け橋として機能している。
「当社の事業の一つの柱は『農業継承』です。年齢や肉体的理由から耕作を断念せざるを得なくなった地元の農園や果樹園を引き継いでいます。農家の方々は、業務委託を受けて作業したりして存続に一役かっています。これらの葡萄園では葡萄を栽培するだけでなく、農家の方々の労働機会を確保し、管理の知識を得ることができます。私たちは農家が収益を得られるよう支援し、農家は人手や労働力を得られるため、お互いとってwinwinの関係を築いています。」
【国際交流が拓く新たな可能性】
朝陽ワイナリーの挑戦は地域にとどまらず、国境を越えた展開も視野に入れている。昨年の台湾訪問を契機に、台北城市科技大学との連携を強化。学術・観光・産業の連携を目指す国際プラットフォーム構築が進められている。
台北城市科技大学の蕭靜雅院長は、「今後、観光と学術交流の両面からアプローチして、産学連携の国際プラットフォームを構築する予定です。地元の学校が台北城市科技大学と相互訪問し交流を深める機会を作り、学生が朝陽ワイナリーでインターンシップやワーキングホリデーを経験できるようにしたいと考えています。この産学連携計画が実現すれば、学術、観光、産業交流にとって非常に前向きで有意義な発展になると確信しています。」と語る。
かつての教室に響いていた授業のベルは、今や醸造タンクの音に変わり、黒板の前で学んでいた場所では、新しい農業の形が生まれている。朝陽ワイナリーが目指すのは、単なるワイン造りではない。それは、福祉と農業、そして地域の未来を醸す壮大な実験なのだ。
編集:佐野華美
(関連記事: 速報》チベットでM6.8の強震発生、建物倒壊・人的被害多数 | 関連記事をもっと読む )台湾ニュースをもっと深く: 風傳媒日本語版Xをフォロー👉 @stormmedia_