深刻な財務危機、純利益94%急落
「日産が財務危機に陥り、9,000人の人員削減を発表」昨年11月、この突然のニュースが世界の主要メディアを賑わせ、自動車業界と消費者に衝撃を与えた。その1ヶ月後、ホンダとの合併交渉が伝えられ、さらに三菱自動車も加わる可能性があるとされた。かつて輝かしい時代を築いた日産は、数々の名車を世に送り出し、世界中のカーファンの心を掴んできた。一体なぜ日産は財務の逼迫・人員削減に追い込まれ、ホンダまでもが「救いの手」を差し伸べる事態となったのか。
2024年の財務報告を見ると、日産の上半期純利益は192億円で、前年同期比94%の大幅減となった。11月に発表された第3四半期決算では93.4億円の純損失を計上。市場予想の490.7億円の利益を大きく下回り、前年同期の1,910億円の黒字と比べても、その状況は「惨憺たる」としか形容できないものとなった。
ハイブリッド車のビジネスチャンスを逃し、3気筒エンジン戦略が失敗に。
日産は2017年に計581万台を販売し、前年比4.6%増を記録したが、その後は年々減少の一途を辿った。これはコロナ禍の影響だけでなく、内田誠CEOも認めているように、米国市場でのハイブリッド車需要が増加したことが大きい。Cox Automotiveの推計によると、米国での販売中のハイブリッド車モデル数は5年間で40%増加したが、日産は適時に十分なハイブリッドモデルを投入できず、これが過去2年間の米国での販売低迷に拍車をかけた。
さらに、日産は中国市場における3気筒エンジンの受容性を過大評価し、信頼性の高い4気筒エンジンを廃止、3気筒エンジンを主力としたが、広く受け入れられることはなかった。加えて、中国での自国ブランドメーカーの台頭により、日産は米国と中国という2大主要市場での販売台数が大幅に減少し、上半期の世界販売台数は3.8%減の159万台となり、中国では14.3%の減少となった。
緊急対応策:世界規模の人員削減、生産量削減、三菱株式の売却
そのため内田誠CEOは昨年11月に日産が「緊急モード」に入ったことを宣言し、まず世界規模で9,000人の人員削減と20%の生産量削減を打ち出し、さらに保有する1億4,900万株の三菱株式を売却することを決定した。これにより三菱への持株比率は34.07%に低下し、同時に通期の収益予想も12.7兆円に下方修正した。さらに、内田誠CEOは自ら「報酬50%カット」を表明し、会社の現状に対する責任の姿勢を示した。
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過去の経営危機を振り返る:ルノーによる買収とゴーン改革
しかし、これは日産にとって初めての存亡の危機ではない。1933年に設立された日産は、1990年代に入り、日本のバブル経済崩壊と当時の経営陣による一連の誤った意思決定により連続して赤字を計上し、1998年までに2.1兆円もの負債を抱え、市場シェアも6.6%から5%未満に低下し、破産寸前の状態に陥った。
1999年3月、ルノーが1株400円で、総額54億ドルを投じて日産の株式36.8%を取得し、筆頭株主となってルノー・日産アライアンスを結成し、ようやく日産の危機的状況を救った。さらに、2000年にカルロス・ゴーンが社長に就任、2001年にはCEOを兼任。ゴーンは就任後、大規模なコスト削減を実施し破産寸前だった日産を見事に立て直し、就任からわずか2年で赤字から黒字転換を実現。自動車業界の「伝説」となった。
しかし、この「日産の救世主」は2018年、長年にわたり有価証券報告書で自身の報酬を過少申告し、会社資金を私的投資に流用した疑いで、金融商品取引法および会社法違反の容疑がかけられた。最終的にゴーンは取締役職を解任されただけでなく、保釈中に日本から逃亡してレバノンに逃れ、国際指名手配犯となった。
台湾の鴻海が積極的に動く?関潤氏が戦略長に就任し日産への出資を目指す
日産の財務危機に対し、誰が新たな救世主として登場するのか。『鏡週刊』の報道によると、電気自動車事業を長年展開してきた鴻海(ホンハイ)の劉揚偉会長は、日産の経営と財務が危機に陥り外部支援を急務としている状況を見て、年初より元日産副COOで鴻海のEV開発の日本人戦略長である関潤氏を通じて日産に提案を行った。日本の経済産業省及び日産のメインバンクであるみずほ銀行と協議を進め、鴻海の出資機会獲得を目指したとされる。
この件について鴻海は正式な回答を避け、日産も「両社の接触はない」と強調。しかし、鴻海の日産出資の噂が流れた直後の12月23日、ホンダと日産は合併協議開始を発表し、これは鴻海の動きが日本の自動車大手2社の合併を加速させたと見られている。自動車業界のベテランは「2社の合併が救済になるかは不確実だが、日本企業である日産としては、他国の企業に技術資源を奪われるよりも、日本にとどまって息をつく方がまだましだと考えている」と語っている。ホンダと日産は、トヨタに次ぐ日本第2位、第3位の自動車メーカーだ。
ホンダと日産の合併計画:世界第3位の自動車メーカーに
2024年12月30日時点で、ホンダの時価総額は8.08兆円、日産は1.78兆円である。つまり、両グループが合併に成功すれば、2021年のフィアット・クライスラー(FCA)とPSAグループが520億ドルで合併してステランティスを設立して以来、自動車産業で最大の取引となる。
今後の発展の重点:電気自動車の資源統合が鍵
現段階では、ホンダと日産は持株会社を設立し、2025年6月までに合併協議を完了、2026年8月の上場を計画している。ホンダは持株会社の取締役の過半数を指名できる見込みで、三菱自動車も参加する可能性がある。調査機関トレンドフォース(TrendForce)は、3社が無事合併した場合、まず各社のリソースを統合して支出を削減し、規模の経済を活かしてコストを下げ、電気自動車計画を加速させることが急務となると指摘。
TrendForceの分析によると、電気自動車分野では、ホンダと日産の短期的な合併は販売台数の増加ではなく、リソースの統合を反映するものとなる。現在、両社の電動化目標は異なっている。ホンダは初期段階で既存の内燃機関車のプラットフォームを改造して電気自動車を生産する過渡的な方法を採用し、中国市場でのBEV投入を加速させ、2040年までにBEVとFCVの世界販売比率100%の達成を計画。
一方、日産はe-POWERハイブリッド技術に注力し、2030年までに全ての新車モデルにe-POWERまたは純電気駆動を搭載する計画である。三菱自動車は販売台数での貢献は限定的だが、三菱グループは電気自動車の核となるモーターやインバーターなどの部品製造能力を有しており、三菱自動車を通じてサプライチェーンの関係を維持することは、新会社の電気自動車開発に有利となる見込みである。3社それぞれが独自の技術と特徴を持っているため、統合には一定の困難さと時間を要する。しかし、次世代電気自動車プラットフォームの投入を加速するなど、新たな電動化の方向性を早急に打ち出すことが、合併協議完了後の重要な課題となる。
ルノーの日産・ホンダ合併に対する反応
日産の主要株主であるルノーは昨年12月末ようやく初めての反応を示し、「グループと利害関係者の最善の利益を考慮してすべての選択肢を検討する」と述べた。つまり、ルノーグループは引き続きその戦略を実行し、グループに価値を創造するプロジェクトを推進するということだ。
合併後の台湾市場への影響は?
ホンダと日産の合併が台湾市場に影響を与えるのかについて、登録台数によると、台湾ホンダの11月までの累計販売台数は23,698台で、前年同期比11.8%減となった。台湾ホンダは「現在、本社からの関連情報は受けておらず、台湾での事業にも全く影響はない」と述べている。
一方、裕隆グループ(2201)傘下の裕日車が代理店を務める日産は、11月までの累計販売台数が17,397台で、前年同期比15.3%減となった。裕日車は人員の「スリム化」に追随し、退職資格を満たす従業員に優遇退職制度を実施し、従業員規模を現在の約400人から350人に簡素化する予定で、削減率は約1割となる。しかし、2社の合併に関して、裕日車は「現在、裕日車と日産の関連業務提携はすべて正常で、影響を受けていない。今後、更新事項があれば随時説明・報告する」と強調。