「大きくて美しい法案」は愚策か 再エネ削減で米国はAI時代の敗者に?

2025-07-11 15:35
米国のトランプ大統領と中国の習近平国家主席。(AP通信)
米国のトランプ大統領と中国の習近平国家主席。(AP通信)
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世界が人工知能(AI)の新時代へと突入する中、電力は国家間の競争における鍵となる資源となっている。トーマス・フリードマン氏は3日付の『ニューヨーク・タイムズ』のコラムで、トランプ氏が主導する「大きくて美しい法案」が、米国のエネルギー優位を愚かな形で損ねていると厳しく批判した。

この法案は再生可能エネルギーを抑圧し、化石燃料の規制を緩和することで、AIの発展に不可欠な安定的かつ低炭素な電力供給を放棄する内容となっている。フリードマン氏は、中国がグリーンエネルギーとスマートグリッドへの投資を強化し、AI時代に向けた布石を着実に打っている一方で、米国はその流れに逆行しており、戦略的主導権を失い、エネルギーとAI分野の主導権を中国に明け渡す恐れがあると警鐘を鳴らした。

大きくて美しい法案」が再生エネルギーを抑え、伝統的なエネルギーを支援

世界が膨大な電力を消費するAI時代へと突入する中、米国はエネルギー政策において大きく逆行している。『フラット化する世界』の著者であり、『ニューヨーク・タイムズ』のコラムニストであるトーマス・フリードマン氏は、トランプ氏と共和党議員が主導して可決させた「大きくて美しい法案」について、「戦略的自傷行為」だと痛烈に批判し、中国があまりの愚策ぶりに笑いを堪えきれないほどだと指摘した。

20170622世界趨勢大師湯馬斯•佛里曼(Thomas L.Friedman)訪台論壇.新北市長朱立倫、前總統馬英九出席.(陳明仁攝)
2017年6月22日、トーマス・フリードマンの台湾でのフォーラム、新北市長の朱立倫氏、元総統の馬英九氏が出席。(陳明仁撮影)

この法案では、大規模な太陽光発電や風力発電、電気自動車に対する税額控除が廃止される見通しであり、これは現在最も低コストかつ拡大が急速に進むグリーンエネルギー産業に打撃を与える内容となっている。原子力、水力、蓄電池といった技術への補助は残されているものの、厳しい制約が課されており、たとえば中国関連企業との協業を禁止する条項により、多くの事業が補助対象から外れる可能性が高い。

さらに、同法案では石油や天然ガスに含まれるメタンの排出に対する課金を初めて禁止し、従来の環境規制を大幅に緩和する形となった。全体として、再生可能エネルギーの後退と化石燃料の推進を明確に志向した政策であり、米国のエネルギー転換は停滞する恐れがある。

誰がトランプ大統領を支持するか、誰が利益を得るのか?

フリードマン氏は、米国の保守系世論において再生可能エネルギーが「リベラルのエネルギー」として蔑視されている実態を指摘する。トランプ政権は専門家による公聴会も開かぬまま、拙速に法案を可決させたことで、数十億ドル規模の再生可能エネルギー投資が危機にさらされ、数万人規模の雇用が脅かされていると批判した。かつてトランプ氏の顧問を務め、現在は訣別したイーロン・マスク氏も、「これは完全に狂っており、破壊的な法案だ」と強く非難している。

一方でフリードマン氏は、民主党の進歩派にも現実を見誤る理想主義があると警鐘を鳴らす。再生可能エネルギーへの移行には、天然ガスや原子力といった移行的エネルギー源の活用、送電インフラの整備といった現実的な支援策が不可欠であるにもかかわらず、こうした課題が軽視されているという。両党の極端なアプローチが、米国のエネルギー転換を板挟みにしていると懸念を示した。

アメリカのトランプ大統領がホワイトハウスで「美しく大きな法案」に署名した。(AP通信)
2025年7月4日、アメリカのトランプ大統領がホワイトハウスで「大きくて美しい法案」に署名した。(AP通信)
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