福島第一原発のALPS処理水、7月14日から第2回海洋放出へ 総量は約7,800立方メートル

2025-07-11 12:28
福島第一原発事故では、設備の損傷、炉心溶融、水素爆発、放射性物質の漏出などが相次ぎ、「ブラックスワン(想定外)事件」の典型とされている。(AP通信)
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東京電力ホールディングスは10日、福島第一原子力発電所で保管されているALPS(多核種除去設備)処理水の2025年度第2回目の海洋放出を、7月14日から開始し、8月1日までに完了する予定であると発表した。今回放出される処理水の量は約7,800立方メートル、含まれるトリチウムの総量は約2兆ベクレルと見積もられている。

対象となる処理水は、K3エリアA群・B群およびJ1エリアE群のタンクから測定・確認用設備C群へと移送されたもので、4月25日に移送が完了した。5月9日からは処理水を均一化するための循環撹拌運転が行われ、5月16日に採取されたサンプルに対して分析が実施された。

採取水の分析結果で放出基準を満たすと確認、約7,800トンを放出予定

分析の結果、30核種を対象とした「告示濃度比総和」は0.11となり、国が定める基準値(1未満)を大きく下回った。トリチウムの濃度も25万ベクレル/リットルと、規制上限である100万ベクレル/リットルを大幅に下回っている。さらに、38種類の核種については有意な存在が確認されず、水質の異常も見られなかった。また、外部機関である化学研究所(化研)による独立した分析結果も、同様に放出基準を満たしていることが確認された。

海水による希釈後のトリチウム濃度は約340ベクレル/リットルと推定されており、これは国の規制基準である6万ベクレル/リットル、WHOの飲料水基準である1万ベクレル/リットル、政府の自主基準である1,500ベクレル/リットルをいずれも大きく下回る水準となっている。東電は、「引き続き、安全な海洋放出を安定的に実施できるよう、緊張感を持って取り組んでいく」としている。

なお、2025年度の処理水放出は年間7回を予定しており、1回あたりの放出量は約7,800立方メートル、年間総量は約5万4,600立方メートル、トリチウムの年間総放出量は約15兆ベクレルと計画されている。今回の放出は、その第2回にあたる。

ALPS処理水は、原則としてトリチウム濃度の低いものから順次放出されており、今後、濃度の変動により一部でこれまでより高い数値が検出される可能性もある。ただし、東電は放出の停止判断基準である700ベクレル/リットル、調査開始基準である350ベクレル/リットルを下回る範囲にとどまると見込んでいる。

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