中国、新疆にAIデータセンター群を建設 NVIDIA製チップ11万個超の密輸疑惑も

2025-07-10 14:55
人工知能(AI)チップの巨人NVIDIA。(AP通信)
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新疆のゴビ砂漠の縁に位置する伊吾県で、中国は大規模なインフラ整備を進めており、数十棟に及ぶAIデータセンターの建設を計画している。さらに、米国が輸出を禁じているNVIDIAの高性能AIチップ11万個以上を配備し、米国を凌駕する技術大国を目指している。しかし、8日に報じられた米《ブルームバーグ》の調査によれば、中国側がこれほど大量のチップを確保できる明確なルートは確認されておらず、すでに中国国内に流入している密輸チップの数量についても米政府関係者の間で見解が割れている。北京が数千億円規模の資金を投じて築こうとしている「未来の頭脳」は、実際には稼働しない空虚な殻となる可能性が高い。

《ブルームバーグ》が分析した投資認可書類、入札情報、企業の報告書などによれば、中国企業は西部の砂漠地帯に約39棟のデータセンターを建設し、11万5,000個を超えるNVIDIA製AIチップを導入する計画を進めている。これらのチップの大部分は、新疆ウイグル自治区の伊吾県にある一つの開発区に集中配備される見通しで、計画が順調に進めば、中国のAI新興企業DeepSeekが活用するような大規模言語モデルの訓練に使用されるとみられる。

同園区の規模は、米国のAIインフラと比べれば依然として小さいが、中国の計算能力を大きく底上げするものであり、これは習近平国家主席が掲げる科学技術の飛躍的進展を目指す国家戦略の一環でもある。こうした動きはワシントンの警戒感を強めており、米国は2022年以降、軍事転用の懸念を理由に中国への先端チップ輸出を規制している。

しかしブルームバーグが入手した文書には、これらのチップを中国企業がどのように調達するかに関する具体的な記述はなかった。米国政府の輸出許可を得ない限り、正規のルートで購入することはできないにもかかわらず、現時点でそうした許可が発給された記録は確認されていない。計画に関与する企業や地方当局、そして中国政府はいずれもこの件に関するコメントを拒否している。

中国のNVIDIAチップ保有、実態不明 11.5万個の存在裏付ける証拠なし

中国がこれほど大量の禁輸対象チップを本当に入手できる可能性があるのかを検証するため、《ブルームバーグ》は、米政府の調査に関わった関係者や、中国国内のブラックマーケットに詳しい人物など10人以上の関係者に取材を行った。

関係者の多くは、新疆でこのようなデータセンター建設計画があるという話をこれまで一切聞いたことがないと証言している。中国が一部の禁輸チップを入手している可能性はあるとしつつも、10万個以上のGPUを一度に調達し、集中的に配備できるような密輸ネットワークが存在するという兆候は見られないという。

現在、米政府内でも中国国内に実際どれほどのNVIDIA製チップが存在するのかについて見解が分かれており、まったく見当がつかないという声もあれば、おおまかな推計を挙げる者もいるが、その数には数万個単位の開きがある。バイデン政権の元高官2人はブルームバーグに対し、中国には現在、米国の輸出規制対象となっているNVIDIA製チップが約2万5,000個あると見ていると述べた。そのうちの1人は、この程度の数量ではそれほど深刻な懸念にはならないとし、「たとえ全てが一つの施設に導入されたとしても、中規模のデータセンターを稼働させるのが精いっぱいだ」と語っている。