トランプ新関税で日本経済に打撃か GDP0.85%減、景気後退リスク5割超

2025-07-09 11:00
2025年6月27日、東京都政府の展望台から東京市街を俯瞰する。(AP通信)
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アメリカのドナルド・トランプ大統領は7日夜、独自のSNS「トゥルース・ソーシャル(Truth Social)」において、石破茂首相宛ての書簡を公開し、8月1日から日本からの全輸入品に対して25%の懲罰的関税を課すと発表した。この動きは日米貿易交渉の緊張を一層高め、日本国内で政府から民間まで大きな衝撃を引き起こした。経済学者は、日本経済が不況に陥るリスクが明確に50%を超えたと警告している。

NHKやロイターの報道によれば、トランプ氏のこの行動は現行の貿易交渉に対する極限の圧力と見られている。書簡には強硬な言葉が並び、この「一紙通告」により日本の政界は驚愕と怒りに包まれた。日本政府は8日午前、すべての内閣メンバーが参加する緊急対策会議を開き、対応策を協議した。世界市場も息を詰め、この貿易の嵐がどのように展開するかを注視している。

「近江牛の涙」:食卓から産地への衝撃波

NHKの報道によれば、今回の関税ショックの最前線で打撃を受けているのは、近年アメリカ市場の開拓に力を注いできた日本企業である。滋賀県の特産品「近江牛」の輸出を手がける「オカキブラザーズフーズ(Okaki Brothers Foods)」はその代表例だ。

同社は2021年以降、海外で高まる和牛人気に着目し、米国西海岸の高級レストラン市場への参入に成功。直近1年間(2024年7月〜2025年6月)には、アメリカ向けの輸出量が3.1トンに達し、数千万円規模の売上を記録。これは同社全体の輸出額の3割を占めるまでに成長した。

しかし、こうした成果は今、危機に直面している。同社の岡山和弘社長は、「米国の顧客との信頼関係を築くのに4年半かかりました。それなのに今、顧客から『トランプ大統領の動向次第では、いつでも注文をキャンセルするかもしれない』と言われ、不安で仕方がありません」と苦しい胸の内を明かす。

現在、アメリカ向けの和牛にはすでに36.4%の関税が課されており、仮にそこへ追加で25%が上乗せされれば、現地での販売価格は消費者にとって手の届かない水準に跳ね上がり、売上の急減は避けられないとみられる。

こうしたリスクに備え、同社は今年2月から中東市場への進出を模索し、ドバイなどへの販路拡大に乗り出している。岡山社長は「ほかの輸出先を見つけるしか生き残る道はない」と語り、打開策を模索する厳しい現状をにじませた。

自動車業界に警鐘――すでに点火された関税の時限爆弾

農産品に比べ、日本経済の屋台骨である自動車産業は、すでに関税の影に覆われている。実際、今年5月以降、アメリカは日本製の一部自動車用主要部品に25%の追加関税を課している。東京に本社を置く自動車用照明機器大手「小糸製作所(Koito Manufacturing)」はその被害企業の一つである。

アメリカは同社の主要市場であり、現地子会社の昨年度売上高は2200億円に達し、グループ全体の売上の約4分の1を占めている。小糸製作所は米国内に4つの組み立て工場を持つものの、生産に必要な部品の約半数は日本やタイなどから輸入している。25%の関税により、同社の年間コストは最大で100億円増加すると見込まれている。