陸文浩の見解:米ミサイル追跡艦が黄海に出現 中国の極秘ミサイル試射を監視か?

2025-07-08 12:47
ハワード・ローレンツェン ミサイル追跡艦 (T-AGM-25)。(ウィキペディアより)
ハワード・ローレンツェン ミサイル追跡艦 (T-AGM-25)。(ウィキペディアより)

6月初旬から7月初旬にかけて、中国軍は渤海および黄海沿岸の葫蘆島、秦皇島、唐山、大連、威海、連雲港周辺の海域で軍事任務や演習を相次いで実施した(写真参照)。とくに大連の南西から南の海域にかけての4カ所では、合計1,146平方キロメートルに及ぶ範囲で軍事活動が行われている。ここ半年間、同様の海域封鎖が頻繁に見られ、特異な動きが続いている。

こうした中、米海軍のミサイル追跡艦「ホワード・ロレンゼン(T-AGM-25)」が、6月12日前後から約2週間にわたり、江蘇省北部および山東省沖の黄海海域で活動していたことが報じられた。同艦は、近距離および長距離のミサイル試射を探知し、電子パラメータを収集する能力を持つとされ、中国本土でもその動向に関心が集まっている。

国際船舶位置情報サイト「MarineTraffic」によると、「ホワード・ロレンゼン」は6月7日に日本の佐世保港を出港し、12日前後に黄海へ到達。AIS船舶情報によれば、6月26日午後には山東省青島市の膠州湾南東およそ160.9キロメートルの海域に接近していた。

この艦はミシシッピ州パスカグーラにあるVT Halter Marineによって建造され、2014年からアメリカ軍事海運司令部が運用している。外観には2基の13メートル級「コブラクラウン」フェーズドアレイレーダーシステムを搭載し、探知範囲は5,000キロメートル以上。最大で1,000の目標を同時に追跡し、ミサイル飛行データの収集が可能とされている。

このように、米ミサイル追跡艦が約半月にわたり黄海に展開していたことで、中国軍が同海域や渤海でミサイル試射任務を実施していた可能性も指摘されている。

近期美軍導彈追蹤艦抵近黃海情蒐共軍導彈試射。(作者提供)
最近、米軍のミサイル追跡艦が黄海に接近し、中国軍のミサイル試射に関する情報収集を行っている。(筆者提供)

次に、米軍のミサイル追跡艦が有する任務や装備の特性から見て、中国軍の核動力弾道ミサイル搭載潜水艦による「巨浪」ミサイルの試射や、海空軍による各種ミサイルの発射活動を黄海・渤海海域で探知することが可能とされている。探知可能な範囲は山西省太原から新疆にまで及び、新疆ウイグル自治区のバインゴリン・モンゴル自治州若羌県にある標的場や、タクラマカン砂漠南西部に新設された標的場、さらに新疆クーラの迎撃試験場など、ロケット軍が展開する各種兵器試験にも対応できる。

一方で、中国国内メディアは、アメリカのミサイル追跡艦が黄海で活動していたとの報道があったのと同じタイミングで、大連海事局が6月27日13時48分に発表した「遼航警207/25」について注目している。これは、6月29日16時から7月13日16時までの間、大連南西から南方にかけての4地点、合計1,146平方キロメートルの海域を封鎖し、軍事任務を実施するという内容だった。この発表が米艦の動きと何らかの関連を持つ可能性が示唆されている。 (関連記事: 石破茂氏、中国の空母展開を警戒 「台湾周辺は平和への重大な脅威」 関連記事をもっと読む

もっとも、大連南方における軍事任務自体は過去にもたびたび行われており、こうした海域封鎖は毎月のように繰り返されてきた。現時点で、中国軍による「巨浪」シリーズの潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)や短距離以上のミサイルの発射任務について公式な発表はなく、今回の米軍艦の動きは、特定の軍事活動に対する情報収集を目的とした可能性がある。

最新ニュース
イーロン・マスク氏、新党「アメリカ党」設立 トランプ氏と全面対決へ 完全決裂の内幕
台海海峡解読》中国がM503航路「W121」を一方的運用開始 台湾空港への奇襲リスクに専門家が警鐘
トランプ関税発表で株価急落 日本・韓国に25%課税、台湾も警戒高まる
台湾海峡解読》馬英九氏「平和民主統一」発言に中国ネット民が猛反発 習近平側近は擁護姿勢も
福島事故から14年──日本が再び「原発復興」に舵を切る理由とは
台湾、台風4号通過後も不安定天候 中南部では午後に激しい雷雨の恐れ 1週間の最新天気予測を詳報
【新関税リスト】トランプ氏、14カ国に新関税 日本・韓国に25%、台湾は対象外
トランプ氏、日本に「25%相互関税」発表 石破首相への書簡公開で波紋
TSMC、熊本第2工場の遅延と米国拡張の加速?学者が政治的考慮を指摘:台湾政府は備えるべき
舞台裏》元副市長・彭振聲氏の妻が自殺の同日 国民党本部が全土で一斉捜索 柯文哲氏の次は朱立倫氏が標的か?
ドキュメンタリー『見えない国家』が東京で特別上映 在日ボランティアが訴え「帰国投票で台湾の民主を守ろう」
石破茂氏、中国の空母展開を警戒 「台湾周辺は平和への重大な脅威」
大谷翔平選手のオールスター記念ユニフォーム登場 限定グッズをファナティクスが発売へ
調查》台湾の医療に潜む「戦時の弱点」 医薬品の6割が中国依存、レジリエンス体制に懸念
舞台裏》台湾・頼清徳総統、軍人にビジネスクラス昇格を指示 航空業界は「寝耳に水」
中国、台湾海峡のM503接続航路「W121」を一方的に運用開始 台灣側は「合意違反」と強く反発
「2027台湾侵攻」は本当か?習近平氏が語らなかった「統一タイムテーブル」の裏側
評論:総統に知識なし、院長に常識なし?──「大リコール」が映す台湾政治の空洞
「中国製なのにベトナム発」? トランプ関税をかわす中国の新手法とは
習近平が台湾侵攻なら「NATO諸国はロシアと戦う羽目に」 NATO事務総長が最悪シナリオを想定
トランプ氏の「壊滅的関税」回避へ 米財務長官が交渉延長を提示、世界貿易に再び猶予
【武道光影】天然理心流と幕末最強の剣客集団・新選組の結成について
台風4号(ダナス)、中央山脈で勢力失い出海 台湾北部海上で循環再編の兆し 中南部は雷雨続く見通し
イーロン・マスク氏「アメリカ党」創設を発表 トランプ元側近バノン氏が猛反発「南アフリカに帰れ」
米テキサスで記録的洪水 少女750人のサマーキャンプ襲う 子ども15人死亡、行方不明者多数
イーロン・マスクが新党「アメリカ党」設立 トランプ氏と決別、二大政党制に挑戦状
最高税率70%!トランプ氏、各国に8月1日から課税を指示 「第一波の国名リスト」明らかに
台風4号(ダナス)、台湾中部上陸の恐れ 全国20県市に豪雨警報「特別警戒レベル」 最新進路と暴風情報
「台湾を守る参拝者に」 全国31地域の罷免団体、花蓮から『護国大行進』開始
江戸の美が動き出す 台北で「動く浮世絵展」開催、北斎・写楽ら300点がCGで蘇る
バスが線路を走る!?世界初「DMV」運行中 徳島・高知を結ぶ“15秒の変身”に驚きの声「バス界のトランスフォーマー」と話題に
独占インタビュー》「最も美しいNBA日本人記者」 宮河マヤさんの素顔
出発前から旅気分!台湾・桃園空港「無料で楽しめる9スポット」が充実すぎると話題に
米国、対中輸出規制を一部緩和 EDAやジェットエンジンの供給再開へ
情報安全か全面監視か?中国の「デジタル身分証」導入へ、11億のネットユーザーデータが北京の手に
日米関税交渉の行方不明確 石破茂首相が再びトランプ大統領に反論「カリフォルニア米を購入済み」
東大卒でも報われない?学歴では超えられない「出身」と「ジェンダー」の壁
東京を「歩いて伝える」2人組、YouTubeで描く日台越境ストーリー
東京駅スタッフが本気で選んだ「推し土産スイーツ」ランキング!1位はあの焼きたてフィナンシェ
トイ・ストーリー×花火×歴史街区!台北「大稻埕サマーフェス」8月開催へ 台北の夜空に「埕彩千輪」咲く
Apple 脱中国?鴻海がインド工場の中国人スタッフ撤退へ 専門家「戦略調整の一環」
「台湾版ディズニー」嘉義に誕生へ オーレボー夢の城が7月試験営業開始!チケットや園内マップも公開
台湾発3大航空会社が燃油サーチャージ値上げ 7月7日から最大6.5ドル増加へ
大阪アジアン映画祭、2025年は万博連動の夏開催へ
大阪市中央公会堂でアジア映画を無料上映 インド・モンゴル・ベトナムの傑作3本を一挙公開
AI進化、7か月で能力倍増 人類に壊滅的リスクの可能性も研究が警鐘
台北の人気観光地ランキングTOP10発表 1位は「西門町」、日本人にも人気の台北101は2位に
「ディズニーストア 東京ディズニーリゾート店」、7月6日にリニューアルオープン
舞台裏》親密な台日関係に潜む「人材の空白」 外交人材の継承に懸念
7月5日に巨大地震?「M9」の可能性は0.01% 専門家が冷静に分析、津波リスクも解説