陸文浩の視点:中国空母が初めて「第二列島線」突破 硫黄島沖で遠海演習「機動-2025」

2025-06-18 13:51
最近、日本は中国人民解放軍の空母「山東」を主とする艦隊が西太平洋に進入したことを明らかにした。中国人民解放軍の2隻の空母が太平洋の第二列島線に初めて進入した様子。写真は中国人民解放軍の海警船。(資料写真/防衛省提供)

米国連邦下院の歳出委員会は6月12日、36票対27票で2026会計年度の国防支出法案を可決した。この中で5億ドル(約785億円)が台湾安全協力イニシアティブ(TSC)に充てられ、台湾の防衛体制や即応性、抑止力の強化に活用される見通しだ。

これまで中国は、こうした米国の動きに対して、人民解放軍東部戦区による台湾周辺の海空域での「合同戦備警戒巡航」を通じて対抗するのが通例だった。しかし、6月13日から15日までの3日間は、中国の航空機による活動は確認されず(13日は台湾周辺で天候が悪化していたとされる)、海域でも常時展開されている艦船6隻以外の動きは見られなかった。この期間の静けさについては、15日に中国・厦門で開催された第17回海峡フォーラムとの関係で、一時的な行動制限が敷かれた可能性が指摘されている。

一方、日本防衛省によれば、中国人民解放軍の「山東」空母打撃群が西太平洋に進出した際、海上自衛隊のP-3C哨戒機が空母艦載機J-15に迎撃・追尾されたという。この報告を機に、人民解放軍の空母「遼寧」と「山東」の2隻が、初めて太平洋の第2列島線にあたる硫黄島周辺海域に進出し、遠海での「機動-2025」演習を実施している事実が明るみに出た。

中国海軍5月25日から6月10日活動統計表。(陸文浩提供)
中国海軍5月25日から6月10日までの活動統計表。(陸文浩提供)

まず(統計表によると)、中国人民解放軍北部戦区の「遼寧」空母打撃群は、5月25日から26日にかけて、東部戦区の4隻の作戦艦(054A型護衛艦・599、515、052D型駆逐艦・155、131)と共に釣魚島北方海域で合同演習を実施した。26日には宮古海峡を通過して西太平洋に進出し、27日には宮古島の南約340キロ、28日には南約800キロ、29日には東南約1030キロのフィリピン東方海域に到達。翌30日も南方への航行を続けた。

6月4日から5日にかけては、北部戦区の055型駆逐艦「ラサ」/102を主力とする編隊(054A型護衛艦・550、538、903A型総合補給艦・903)が、それぞれ大隅海峡や宮古海峡を経て西太平洋に進出し、「遼寧」空母打撃群の支援に加わった。

「遼寧」空母打撃群は6月7日、硫黄島の西南約300キロの海域で編隊航行を行い、翌8日には硫黄島東南の海域で艦載機の離着艦訓練を実施した。

また南部戦区海軍の「山東」空母打撃群とその他の5隻も、6月7日午後1時に宮古島の東南約550キロの海域を東進。9日には第二列島線にあたる硫黄島西南の海域で活動し、同様に艦載機の離着艦訓練を行った。この間、日本のP-3C哨戒機が空母編隊への接近を試みたが、中国の艦載戦闘機J-15によって強い警告と排除を受けた。日本側はこの件について中国側に反応を求めたが、6月16日午前8時の時点では追加の発表は行われていない。

中国海軍広報官の王学猛大臣は6月10日、「遼寧」および「山東」空母打撃群が西太平洋を含む海域での訓練を通じて「遠海防衛」および「統合作戦」の能力を検証したと発表。この演習は年次計画に基づく定例訓練であり、特定の国や対象を意識したものではないと説明した。また同日、中国外交部報道官の林剣氏も、これらの行動が国際法および国際慣例に完全に則ったものであると強調し、日本側に対しては客観的かつ理性的な対応を求めた。