近年、台湾海峡情勢が緊迫の度を増す中、中国の空母「遼寧」と「山東」が先日、日本の硫黄島や南鳥島周辺で軍事演習を行い、初めて第一列島線を越えて第二列島線に進出した。これにより、日本側は強い警戒感を示している。
これについて、元立法委員の郭正亮氏はYoutube番組《亮子力学》の中で、「米軍は間違いなく座視できない状況にある」と述べた。中国の3隻目の空母「福建」はすでに8回の試験航行を終え、まもなく正式に就役する見通しであり、今後は「福建」をモデルとした第4、第5の空母艦隊も建造される見込みだという。郭氏はさらに、中国の軍事力が第二列島線に進出し、二隻体制の空母による戦術が確立されれば、米国は第一列島線内への進出が困難になる可能性があると指摘し、「これにより、米国が将来的に台湾海峡での戦争を想定した戦略や戦術を根本的に見直すことになる」との見解を示した。
軍事専門のFacebookページ「世界特殊部隊與軍武資料庫」は、中国が台湾攻撃を想定した「接近阻止・領域拒否(A2/AD)」戦略の動きを模擬する中で、「遼寧」を中心とする空母艦隊が多数の護衛艦や補給艦を伴い、2個空母打撃群として初めて大規模に集結したと指摘している。数十隻規模の軍艦が同時に行動を開始するのは前例のないことであり、中国人民解放軍は、地上発射の長距離ミサイルと空軍戦力を中核に据え、日本列島・琉球諸島・台湾・フィリピンを含む第一列島線全体を「接近阻止エリア」と見なしていると分析されている。従来、中国の空母による演習は第一列島線内にとどまっていたが、今回初めて2隻の空母が同時に第一列島線を突破し、第二列島線の海域に進出した。中国本土が第二列島線での「ダブル空母体制」による軍事演習を本格的に展開できるようになれば、米国が第一列島線に前方展開する能力そのものに疑問符がつくことになりかねない。
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郭正亮氏は番組の中で、中国が今回、第一列島線を完全に突破したことを明確に示し、第二列島線周辺での空母2隻による軍事演習が今後は常態化するとの見方を示した。また、中国は第一列島線、第二列島線にとどまらず、ハワイからニュージーランド、オーストラリアにかけての「第三列島線」にも関与し始めていると指摘。最近では、中国の055型駆逐艦3隻がオーストラリア周辺で実弾演習を実施し、オーストラリアに強い警戒感を引き起こしている。この動きについて、外部では、「オーストラリアに対する意図的な牽制であり、第一列島線で米軍と連携した軍事演習を行わないよう警告している」との見方も出ている。実際、中国の055型駆逐艦はオーストラリア周辺をほぼ一周するように航行しており、これによりオーストラリア側は強い不快感を示しているという。さらに中国は、第二回目となるオーストラリア周辺での軍事演習も予定しており、こうした演習を常態化させることで、オーストラリアに第一列島線での軍演を行わないよう警告する意図があるとみられる。
郭正亮氏は、中国が南太平洋において「友好訪問」を開始したことについて説明し、近年中国と国交を樹立したソロモン諸島やキリバスなど、南太平洋の島嶼国はオーストラリア周辺に位置している点を指摘した。今後中国がキリバスからさらに北上すれば、西太平洋を離れ中部太平洋へと進出することとなり、米中両国の地政学的な駆け引きが西太平洋を超えて展開される可能性があるという。郭氏は、「中国はすでに実力を示しており、西太平洋の海域が中国海軍を封じ込めることが今なお可能なのか、もはや現実的な問題となっている」との見解を示した。さらに中国は、西太平洋の第一・第二・第三列島線だけでなく、インド洋にも軍事的な関心を広げている。中国海軍はすでに、パキスタンのグワダル港から南下しインド洋の各海域を巡回する動きを見せており、スリランカの中国租借地・ハンバントタ港までの航行も行われている。また、東アフリカのジブチの中国軍基地から、イエメン沖を経由し南アフリカ方面まで進出しているという。このように、今後の中国海軍の行動範囲は、第一~第三列島線に加えて、インド洋、東アフリカから南アフリカに至るまで拡大する見通しであり、軍事戦略上きわめて重要な意味を持つと考えられる。
郭正亮氏はさらに、中国人民解放軍の海軍による太平洋での演習がますます頻繁になっていると指摘した。現在、中国は世界で最も多くの作戦艦艇を保有しており、その数は約400隻に上る。こうした大規模な艦隊を抱える以上、海上での活動が増えるのは当然であり、それに伴って航行ルートも次第に広がっているという。中国海軍は、さまざまな島嶼の間を通過しながら、多くの水路を利用して遠洋地域での巡回活動を拡大しており、プレゼンスを高めている。郭氏によれば、中国はすでに94隻の最新鋭艦艇、55隻の現代型潜水艦、さらに第4・第5世代の戦闘機を合わせて1,668機保有している。このような軍事力の増強により、「米国や日本であっても、もはや中国の海軍力を抑え込むのは困難であり、中国が第一列島線を突破するのは、今や日常的かつ容易なものとなっている」との見解を示した。
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郭正亮:中国、米国に対し対抗姿勢を強化
郭正亮氏は、中国が強大な海軍・空軍戦力を背景に、米国に対して自信をもって主張を強めていると述べた。中国の習近平国家主席は、6月5日に米国のトランプ大統領と電話会談を行い、米中関係の方向性について率直な意見を交わしたという。この中で習主席は、トランプ氏に対し「内閣内の強硬派を抑えるよう求め、リーダーとしての役割を発揮してほしい」と伝えた。さらに、米中関係という大きな船の進路を修正するには、両首脳がしっかりと舵を握り、方向を定める必要があるとし、「もし米国が中国との良好な関係を望むのであれば、トランプ政権の閣僚や関係者に、無責任で過激な主張を展開させてはならない」と強調した。両者の会談では、米中貿易戦争における関税問題や、中国への技術制裁といった「テクノロジー戦争」だけでなく、台湾海峡情勢についても議題となった。習主席は、台湾問題について慎重な対応を求め、「台海周辺での緊張を高めるような行動を控え、台湾独立勢力を抑制するよう」強く要請したという。
郭正亮氏は、トランプ大統領の最近の発言に触れ、「米国がすべての国を防衛対象とする考え方は終わり、今後は米国の核心的利益を守ることを最優先にする」と指摘した。核心的利益に関わらない場合は戦争に関与しない方針が示されているという。また、副大統領のJ・D・バンス氏も「米国が軍事行動に出る際は、明確な目的を持ち、短期間で戦争を終結させる」と述べ、不明確な軍事任務や長期紛争への介入を避ける方針を強調している。郭氏は、もし米中間で戦争が起きれば、それは不明確な軍事作戦となり、戦争の終結や勝利が保証されないと分析。特に第一列島線は中国本土に近く、中国は陸基兵器だけでも有利な状況にあると指摘した。こうした状況から、郭氏は「米国は迅速に終結できない不確実な戦争には介入しない可能性が高い」とし、トランプ大統領とバンス氏の発言は、将来の台湾海峡有事において米軍が直接出兵せず、後方支援に徹する可能性を示唆していると述べた。
郭正亮氏は、両岸の衝突は一方だけの原因では成立しないと指摘したうえで、多くの人々がトランプ大統領が台湾海峡の戦争を米国の戦争とは考えていない方向に傾いていることを懸念していると述べた。その一方で、米国は台湾の安全を確保するため、今年から来年にかけて台湾への軍事売却を大幅に拡大する方針だという。トランプ大統領は現在、国民党や民眾党に対して台湾の国防予算を妨害しないよう圧力をかけている。しかし、国民党や民眾党は一定の監督権限を持っているため、台湾が高性能な軍事装備を購入しようとしても、米国側は販売に消極的である。その代わりに、非対称戦闘用の弾薬や歩兵用地雷などの装備を購入するよう求めており、台湾側の要求には十分応えられていないという。また、米国は軍需物資の納入を遅らせることが多いとされている。
郭正亮氏は、台湾における対米疑念が高まっているのは理由があると指摘した。特に今回、中国の双子空母が直接第二列島線で軍事演習を行ったことで、米国や日本が第一列島線での軍事介入に伴うリスクが高すぎると認識する可能性が強まったという。さらに、今後中国が少なくとも一隻の空母戦隊を第一列島線と第二列島線の間に配備すれば、米国や日本が台湾海峡の戦争に介入する確率は一層低下すると分析した。これにより、米国が台湾海峡有事で撤退するのではないかという懸念が高まっている。米国は介入の意欲が低く、軍備の台湾への早急な売却と、必要な訓練要員の派遣によって台湾軍の戦力整備を急ぐ方針だという。米国は台湾を戦争可能な状態に訓練した上で、第一列島線から第二列島線、さらにはオーストラリアまで後退する準備を進めている。台湾海峡の戦争に関しては、米国は基本的に二線での監視や必要な補給にとどまる役割を担うとの見方を示した。
郭正亮氏はさらに、今後台湾海峡で戦争が起きた場合に米軍が第一列島線に介入する可能性はますます低くなると指摘した。その状況下で台湾は、中国との平和を模索し、できるだけ早期に中国本土と政治対話を進め、平和共存や平和統一などあらゆる可能な枠組みを探る努力が必要だと強調した。さもなければ、中国の第4、第5の空母が完成するにつれて、台湾の置かれる状況は今よりも一層厳しくなることは容易に想像できるという。