トップ ニュース 両岸の対峙は「義和団 vs ガンダム」か 台湾問題の研究者「対台統一促進が加速、今後は台湾の与野党への試練」
両岸の対峙は「義和団 vs ガンダム」か 台湾問題の研究者「対台統一促進が加速、今後は台湾の与野党への試練」 2025年10月、北京で第20回4中全会を主宰する中国共産党の習近平総書記。(AP通信)
抗戦勝利と台湾光復から80年の節目に合わせ、中国政府は「台湾光復記念日」を新設した。あわせて、国民党の新主席選出を機に、民間・学術の往来が静かに再開。北京清華大学台湾研究院の設立25周年にあわせ開かれた「両岸関係新形勢学術セミナー/清華両岸フォーラム」では、過去の緊張を踏まえつつ、双方が友好的な姿勢を示した。
海峡交流協会(海協会)から過激な公式発言は多くなかった一方、中国側の研究者の受け止めは一様ではない。出席した一部の専門家は、中国が台湾に対し「文攻武嚇」を強め、統一へ向けた圧力を増していると分析。他方、「大罷免」や国民党主席選などの出来事が、中国側の台湾問題に対する心理的負担を和らげたとの指摘も出ており、国外からも注目を集めている。
北京の清華大学台湾研究院は23日、「両岸関係新形勢学術セミナー/清華両岸フォーラム」を開催。「台湾光復から民族復興へ」をテーマに両岸の研究者が円卓討論を行った。(写真/張鈞凱提供)
中国側は「一息ついた」との観測 関係者によれば、海協会の仇開明副会長は清華大学での座談会で、台湾が「中国人としての自信と勇気」を高めることに期待を示し、交流の深化、共同発展、統一の推進を呼びかけた。さらに「中華民族の共通の家園と基本的利益を守り、より良い未来を共に切り開く」と述べ、両岸同胞の団結と「歴史の正しい立場」を堅持しつつ、平和的発展の推進を強調した。
これに対し、台湾問題に詳しい学者の見方は対照的だ。会議参加者の証言を『風傳媒』が確認したところ、中国社会科学院・前台湾研究所長の周志懷氏は、大陸の対台湾姿勢について①「形式的統一から実質的統一へ」、②「非平和的解決の議論が学界でタブーでなくなった」、③「統一が歴史の大勢になりつつある」という三点の変化を指摘。出席者の一部は、こうした発言を台湾への「文攻武嚇」強化と受け止めた。
一方、上海国際問題研究院台港澳研究所の厳安林研究員は、現局面に対してより慎重な姿勢を示したとされる。会議では「(両岸の)実力は軍の仕事であり、理論はわれわれ(学界)の仕事だ」と述べ、エスカレーションを戒める立場をにじませた。
中国側研究者の間では、台湾での「大罷免」「大失敗」、さらに「館長の成功的な訪問」や、自称中国人の鄭麗文氏が国民党主席に当選したことなどを背景に、「大陸の対台湾姿勢は一定程度緩み、両岸関係が円滑に改善へ向かう余地が出てきた」との見方が広がっている。
中国社会科学院台湾研究所の前所長で、台湾問題の専門家の周志懷氏。(写真/仇佩芬撮影)
統一圧力の強化か 一方で、中国国営の新華社は今週、「鍾台文」名義で国務院台湾事務弁公室(国台弁)あるいはそれ以上のレベルの見解とみられる台湾関連の論評を相次いで配信した。「両岸関係発展と統一の好機」「台湾問題の由来と性質」「祖国統一は不可避」などに加え、重慶市公安局が民進党の沈伯洋氏を調査したとする発表もあり、両岸をめぐる空気には「嵐の前触れ」を思わせる緊張感が漂っている。
「歴史的共同作業」という位置づけ 中国の台湾研究者は《風傳媒》に対し、現在の両岸情勢を「歴史的な共同作業」と表現。新華社の一連の論評と最近の台湾光復節をめぐる動きが重なり、中共の「統一推進」に向けた圧力が増していると指摘した。「各方面が力を入れ、対台政策の前倒しが進んでいる。目を凝らせば分かるはずだ」と述べた。
「語り」の主導権を取りに行く 同研究者はさらに、中共の現在のアプローチは民進党の「歴史叙述」を突き崩すことを狙うものだと分析。「まずは(ドラマ『沈黙の栄光』に触れる形で)呉石事件を取り上げ、少しずつ語りの主導権を取り戻す」とし、従来の対台フォーマットを崩して「台湾の政府や政党を迂回し、台湾の人々に直接語りかけようとしている」と述べた。
文化・話題・「二次創作」を総動員 この研究者によれば、台湾光復節をテーマに座談会や記念行事を開催し、関連する文化作品を推進。時事と組み合わせて既存作品の「二次創作」を民間に促すことで接点を拡大しているという。「台湾が自ら殻に閉じこもり大陸を全面遮断しない限り、接触を避けるのは難しい」との見立てを示した。
中共の叙述では、台湾光復の歴史は馬場町で処刑された台湾左派人物の記憶と結び付けられている。
国民党・民進党・民衆党それぞれへの試練 トランプ氏の台湾に対する曖昧な姿勢は北京にとって「機会の窓」だが、同時に「つかみ損ねた機会」でもあると見る向きもある。中共は現在、台湾の世論に一定の期待を寄せつつも、「統一促進」の圧力が強まる局面は、藍(国民党)・緑(民進党)・白(民衆党)の三勢力それぞれにとって圧力であり挑戦でもある。
同研究者はまた、緑陣営が大衆性の高い文化作品を十分に供給できていないとし、「ゼロデイ攻撃」の効果が乏しかったことを例示。そのため中国側は「一魚二吃」の手法を採用し、『沈黙の栄光』のような作品を通じて大陸側には「教育」を、関心を持つ台湾の受け手には「啓発」を同時に図っていると分析。「中共中央の背後には台湾を理解する“高人”がいる」との見方も示した。
さらに同研究者は、新型コロナ対応の成功とTSMCの成長がかつて民進党政権に「プラスの追い風」を与えたが、いまは「潮が引き始めている」と指摘。民進党の手持ちカードやサブユニットが十分でないことも相まって、最近の中共との対峙は「義和団 vs ガンダム」という不利な構図に見えてしまった、と述べた。
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