第3次オイルショックの引き金か──イスラエルの攻撃が狙う「イランの石油生命線」

2025-06-18 14:38
イスラエル最大都市テルアビブの中心部がイランのミサイル攻撃を受け、空に見えた光跡はアイアンドームによる迎撃過程。(AP通信)
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イスラエルとイランの衝突が6月13日以降、大規模なエネルギー施設への攻撃を含む新たな局面に突入している。両国は互いのエネルギーインフラを標的にし、報復の連鎖が続いている。

原油価格は一時1バレルあたり75ドルまで急騰したが、その後は70ドル前後まで下落。現時点で市場に大規模な供給中断への懸念は強く現れていない。

しかし、米ワシントンに拠点を置く戦略国際問題研究所(CSIS)の専門家クレイトン・シーグル氏は、中東におけるエネルギーリスクは依然として消えていないと警告する。特に、イスラエルが今後イランの石油輸出ルートを攻撃した場合、イランが報復としてホルムズ海峡を封鎖する可能性があり、そうなればペルシャ湾全体のエネルギー供給に深刻な影響を与えると指摘している。

交戦はエネルギー中枢へ拡大

6月13日、イスラエル政府は「ライオンの反撃作戦」を発動し、イランの核計画を標的とした空爆を開始。翌14日には攻撃対象を拡大し、テヘラン近郊の貯油タンクや精製所、南パルスガス田の第14フェーズ処理施設、Fajr-e-Jamガスプラントなど、複数の主要エネルギー施設が被害を受けた。

これに対し、イランも反撃に出た。イスラエル北部のハイファ湾にある同国最大の精油施設および石油化学施設を狙った攻撃により、中央発電所が大きな損傷を受け、一時的に機能停止に陥ったという。

また、イスラエル側は報復を見越し、レヴァイアサン沖の天然ガス田でのChevron社による操業を事前に停止。これにより、同国から天然ガスの供給を受けていたエジプトでは、代替調達を急ぐ動きが出ている。戦火はイスラエルとイランにとどまらず、周辺国のエネルギー安全保障にも波及し始めている。

一時的な価格上昇が見られた原油市場も、現在は比較的落ち着いた動きを見せている。背景には、今のところ主要な油田施設、主要港、輸送ルートに対する致命的な攻撃が確認されていない点がある。

CSISのシーグル氏は「現時点で原油供給を直接脅かすインフラには深刻な被害が及んでいない」と指摘。また、市場ではイランが米国との核交渉で一定の妥協を示す可能性があるという見方も広がっており、短期的な価格急騰にはつながっていないという。

しかし、緊張が継続し、イスラエルが石油輸出を直接標的とする場合、イランによるホルムズ海峡封鎖という「最後のカード」が現実味を帯びてくる。世界の石油の約5分の1がこの海峡を通過しており、封鎖されれば、まさに第3次オイルショックの引き金になりかねない。 (関連記事: トランプ氏、ハメネイ師の排除を示唆 イランに「無条件降伏」要求で緊張高まる 関連記事をもっと読む

跨國石油巨擘雪佛龍(Chevron)的煉油廠員工。(翻攝自官方網站)
多国籍石油大手シェブロンの製油所従業員。(公式サイトより)

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在、イスラエルによるイランのエネルギー施設への攻撃は、一部の燃料貯蔵所や比較的小規模なガス施設にとどまっている。この限定的な攻撃は、イランに一定の圧力を加える一方で、同盟国からの反発や、世界的なエネルギー混乱の拡大を避ける意図があるとみられている。ただし、それでも供給中断リスクを完全に排除することはできない。