Apple 脱中国? 鴻海がインド工場の中国人スタッフ撤退へ 専門家「戦略調整の一環」

2025-07-05 16:51
海外メディアは、鴻海が最近、インド南部のiPhone工場に派遣された中国国籍の社員に帰国を通知したと報じた。(写真/柯承惠撮影)

鴻海(ホンハイ)が南インドのiPhone組立工場に派遣していた多数の中国籍スタッフを帰国させていたことが分かった。『ブルームバーグ』によれば、こうした動きはおよそ2か月前から始まっており、現在までに300人以上がインドを離れたという。現地には、台湾からの少数の支援スタッフだけが残っているとされる。この件について、カナダ・ヨーク大学副教授の沈榮欽氏がSNS上で分析を投稿した。

沈氏は、調査機関カウンターポイント・リサーチのデータを引用しつつ、インドにおけるiPhoneの生産比率が既に世界全体の18%に達していると指摘。南部のデバナハリ工場が稼働を本格化させれば、2025年末には25~30%に達する見込みだと述べた。この工場は2026年の本格稼働を予定しており、将来的に米国市場への主要供給源になると見られている。そのため今回の人員配置の見直しは、「戦略的な業務調整」として注目されている。

一方で、短期的には生産効率が一時的に落ちる可能性もある。たとえば設備調整が長引いたり、新製品投入(NPI)時の検証作業に時間を要するなどの懸念があるが、沈氏は「300人規模の撤退で工場全体に大きな影響はない」との見方を示した。

沈氏はまた、撤退対象がすべて中国籍スタッフであり、台湾籍の社員は残されたまま中核業務を担っている点を強調した。この動きは、トランプ政権下で行われた関税交渉の際と同様、鴻海が「脱中国化」の方向性を進めている象徴的なシグナルだとする見解を示した。

ただし、沈氏は「アップルが完全に中国を離れることは現実的ではない」とも述べている。iPad ProやMac Proの一部製品をインドに移したものの、アップルのサプライチェーンの約60%は今も中国企業に依存している。今後、鴻海がインドで成功するためには、技術力、部品調達、現地マネジメントの全体的なローカライズが不可欠になるという。

急速に成長するインド市場をにらみ、アップルは生産拠点の多極化を進めている。これは地政学的リスクを分散させるためであると同時に、新興市場でのシェア獲得を狙った長期的な布石でもある。もし2026年までに目標を達成できれば、インドは中国に次ぐアップルの製造拠点として台頭する可能性がある。

今回の人員再配置は、鴻海自身だけでなく、他のアップル系サプライヤーにも影響を与える可能性がある。ペガトロンやウィストロンなどもインドに生産拠点を構えており、今後の動向は、コストや生産効率とのバランスをどう取るかに左右されるだろう。

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    ​編集:田中佳奈