アメリカの政府関係者2人がロイター通信に語ったところによると、イラン軍は先月、ペルシャ湾内で船舶に機雷を搭載する動きを見せていた。これを米政府は、世界の主要エネルギー輸送路であるホルムズ海峡の封鎖準備と見なしている。この行動は、6月13日にイスラエルがイラン国内の複数拠点を空爆した後に確認されたもので、中東情勢の緊張がさらに高まった一因となっている。
情報提供者によれば、実際に機雷が海峡に配備された事実は確認されていないが、搭載そのものが「本気で封鎖を検討していた」証左と受け止められている。仮にこの計画が実行に移されていた場合、地域紛争の拡大に加えて、世界の海上物流やエネルギー市場に深刻な影響を与えていた可能性がある。
ホルムズ海峡が握る世界経済の鍵
ホルムズ海峡は、ペルシャ湾とオマーン湾を結ぶ全長わずか約39キロメートルの海上ルートで、世界の原油と天然ガスの5分の1がここを通過する。このため、封鎖や妨害が発生すれば即座にエネルギー価格が高騰し、世界経済にも打撃を及ぼす恐れがある。
イランはこれまでも海峡封鎖をちらつかせてきたが、実行に至ったことはない。今回の行動は、過去の脅威の中でも最も現実的な段階まで進んだものとされている。注目すべきは、アメリカがイランの核施設を攻撃した「ミッドナイトハンマー作戦」後、原油価格が10%以上下落したことだ。市場は石油供給の遮断を免れたと判断し、投資家心理が一時的に落ち着いた。しかし、今回の新たな情報は、当時の表面的な安定の裏で深刻なリスクが進行していたことを示している。
本気の準備か、それとも「欺瞞作戦」か
ロイターは、機雷が搭載された具体的な時期や、その後の撤去の有無を確認していない。米当局者も情報源について明言を避けたが、こうした情報は通常、衛星画像や機密提供者などによって得られるものだという。
さらに米側は、今回の行動がイランによる心理戦、すなわち“欺瞞”(ruse)の可能性もあると見ている。つまり、機雷搭載によってアメリカ側に「本気で封鎖を検討している」と誤認させ、外交的または軍事的優位性を得ようとしたとの見方である。また、実際に行動を起こす準備を整えておき、最高指導者の命令次第で即応できる体制を構築していた可能性もある。
イラン議会は6月22日、アメリカの核施設攻撃直後に海峡封鎖を支持する法案を可決したが、これは法的拘束力を持たず、最終決定は国家安全保障会議に委ねられている。
ホワイトハウスはこの件に対し、詳細の確認を避けつつも、「ミッドナイトハンマー作戦」の成功や紅海のフーシ派への攻撃成果を強調し、イランは明らかに弱体化したとする声明を出している。一方で、アメリカ国防総省やイランの国連代表部からは、具体的なコメントは出されていない。
なお、アメリカ国防情報局の2019年の分析では、イランは5000発以上の機雷を保有し、それらは小型高速船を使って迅速に配備できるとされていた。現在、ペルシャ湾ではアメリカの第5艦隊が商業ルートの安全維持を担っているが、バーレーンに配備されていた4隻の対機雷艦(MCM)は、イランへの軍事作戦直前にすべて撤収されたという。これは、イランが米艦隊の司令部を攻撃する報復措置に出る可能性があると判断されたためである。
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