李忠謙コラム》トランプ氏の「ミッドナイト・ハンマー」は何を砕いたのか?

2025-07-01 15:53
このマクサー・テクノロジーズが提供した衛星画像は、2025年6月22日に米国がイランのフォルド核施設を空爆した後、その施設の尾根にできたクレーターと火山灰の近接図を示している。(AP通信、マクサー・テクノロジーズ経由)
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国際社会は「解放日」以降、トランプ2.0の予測不能な行動と急速な展開に翻弄されてきたが、米軍によるイラン核施設への「ミッドナイト・ハンマー作戦」は、再びトランプの電撃的な手腕を印象づけた。B-2爆撃機がGBU-57でフォルド核施設に穿った大きな穴が、イランの核計画、中東情勢、そして数千キロ離れた台湾に何を意味するのかは、今後の時間と証拠を待たなければならない。

イラン核計画について

イランの核計画を狙った米軍の「ミッドナイト・ハンマー作戦」が、どれほどの影響を与えたのかについて、ホワイトハウス、米軍情報部門、国際原子力機関(IAEA)の評価は大きく分かれている。かつて米国防総省で戦略・計画・能力担当の次官補を務めたマラ・カーリン氏は、ブルッキングス研究所でのインタビューで「現場映像や実地検証がなければ、イランが核物質を移動・隠匿したかどうかは判断できない」と述べた。仮にフォルドの地下施設が完全に破壊されたとしても、イランの核計画全体に与える影響は限定的と見られている。

米軍による精密攻撃が成功しても、それはあくまで作戦調整の巧みさを示すにとどまる。カーリン氏は、軍事行動よりも外交手段を優先すべきとの立場を取っており、効果的な監視メカニズムこそが違法行為を防ぐ鍵だと強調する。また、過去にイスラエルがイラクの核施設を爆撃した結果、イラクが核開発を地下に移し、逆に意志を強めた事例を引き合いに出し、軍事力だけでは核兵器の完全な撤廃にはつながらないと指摘した。

中東情勢について

国家利益センターの上級研究員であり、米国務省で15年にわたりアラビア半島問題を担当してきたジョシュア・ヤフェ氏は、「米軍による核施設破壊が数か月から数年の遅延をもたらしても、それ自体は中東の最大の変化ではない」と分析する。彼は、今回の軍事行動によってアメリカの中東政策が「新たな常態」に入ったと見ており、「イスラエルと米国がイランの脅威を察知すれば、欧州や国連ももはやそれを止めることはできない」と述べた。

ヤフェ氏によれば、かつての米国は国連で行動の正当性を説明する必要があったが、現在はその必要がないという。また、イランが支援してきたヒズボラ、ハマス、フーシ派、イラクの人民動員組織といったネットワークも、現在では連携が困難になっているとし、資源配分の減少によって効果的な行動が困難になったと指摘する。これによって、中東の他国がイスラエルとより密接に連携し、安全保障の枠組みが再編されつつある。

カーリン氏も、ここ1年の中東の変化は1979年のイラン革命以来、最も重大なものであると評価し、ハマスやヒズボラの勢力減退やシリアのアサド政権の弱体化を挙げて「アメリカにとって有利な展開が続いている」と述べる一方で、「ここは中東であり、何が起きても不思議ではない」と警鐘を鳴らしている。 (関連記事: トランプ氏の「恒久停戦」構想に懐疑の声 英誌「中東での成功率は3割未満」 関連記事をもっと読む

中国と台湾海峡情勢について

今回の軍事行動が台湾海峡の安全保障にとって何を意味するかについても議論がある。トランプ氏の支持層では中東介入への賛否が分かれており、元FOXニュースのタッカー・カールソン氏は共和党のテッド・クルーズ上院議員と激しい論争を繰り広げた。元イスラエル駐米大使ダニエル・クルツァー氏は、「米国民の多くは、政権交代を伴う戦争ビジネスに再び巻き込まれることを望んでいない」と警告している。