米中は5月、スイスのジュネーブで貿易戦争に関する合意を達成し、中国はレアアースの禁輸を解除することを約束し、29日、輸出審査手続きを加速させることを確認した。これについて、米国在住の学者・翁履中はフェイスブックで、中国が今回レアアース輸出のシグナルを送ったのは「戦略的譲歩」と見なすべきだと分析している。これは国内の経済的圧力を緩和し、米国の技術規制の緩和を狙ったものだという。
翁履中氏によれば、レアアースは電動車・軍事兵器・AIテクノロジーに広く応用され、現代の製造業に不可欠な戦略的資源である。中国は長年、世界の約9割のレアアース加工能力を握っており、この「レアアースの切り札」は米国との交渉において重要な交渉材料となっている。中国商務部と米国側によると、レアアース輸出に加え、ワシントンは中国への技術輸出制限の一部を解除する見通しであり、関税・技術輸出・市場開放についてより深い対話が再開される見込みだ。また、フェンタニル化学品の流通管理や麻薬協力分野でも突破口が開かれた。
翁履中は、中国が今回のレアアース輸出シグナルを発したのは「戦略的譲歩」として理解すべきであり、単純な勝ち負けではないと分析する。二つの異なる視点から解釈することで、北京の計算に近づくかもしれない。第一に、レアアース供給は、中国の内部圧力と対外関係の現実を反映している。中国は現在、不動産市場の低迷、若年層の高い失業率、外国資本の流出など、複数の経済的挑戦に直面しており、このような内外の困難な状況下で経済に一息つかせる必要がある。
翁履中氏は指摘する。レアアース輸出は戦略的資産であるものの、交渉に使用することもまた北京が意図的に対抗を高めないことを象徴している。注目すべきは、中国が今回使用した表現は「法に基づく審査」であり、「全面開放」とは言っていないことである。これにより、一見緩和しているように見えつつも、技術的および行政的手段の柔軟性を保ち、将来には変動の余地が残されている。
翁履中氏は続ける。第二に、これは中国が技術統制の緩和を得るための交渉カードである。米国が中国の半導体、高性能コンピューティング、AIチップに課している制約は、北京にとっては安全保障と経済競争の核心的な挑戦である。レアアース輸出の解放を通じて、中国はより多くの先進的な技術製品の輸入許可を得ることを望んでいる可能性がある。これは短期的な利益計算にとどまらず、米中の将来の産業主導権争いにも関与している。
翁履中氏はさらに述べた。トランプ大統領の立場から見ると、これはまた別の勝利の政治ショーであり、彼は「中国に譲歩させた」ことを米国民に示すことができる。しかし、その実質的な成果についてはまだ検証が必要であるが、保守層や中国に疑念を抱く広範な層での評価を高めるには十分だ。このような操作はまた、トランプの外交スタイルの核心論理を強調している:「外交関係は交渉であり、交渉は国民に成果を示すためのパフォーマンスである」。
翁履中氏は指摘している。台湾にとって、この「米中休戦」は、親米や親中の感情で理解すべきではない。両大国の競争と協力の中で、台湾が必要とするのは、明確な分析と冷静な対応であり、感情的な立場で一方に偏るべきではない。もし「米国支持」や「米国への疑念」といった一方向のストーリーに過度に依存すれば、地政学的な急速な変化がもたらす現実的な挑戦と戦略的リスクを見落とすことになりかねない。
翁履中氏は強調する。台湾は次のような問いを立てるべきである。もし米中が本当に新たな「限定的協力」に入った場合、「台湾の役割はどこにあるのか?リスクは何か?交渉材料は何か?」一方の勝利や敗北に喜んでいる場合ではない。もちろん、個人の感情はそれぞれであり、「米国が勝ち、中国が負ける」という言い回しや「東が昇り、西が沈む」という表現が快適に感じるなら、それを採用することも自由である。しかし、個人的な理想と国際的現実の間には、台湾が慎重にならざるを得ないギャップが存在していることを忘れてはならない。
編集:佐野華美 (関連記事: トランプ氏、年内に訪中か 米中関係に雪解けの兆し 米財界トップも同行予定 | 関連記事をもっと読む )
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