舞台裏》米日の「影の将軍」、台湾軍を戦略支援 無人機技術や「地獄の景色」構想も

2025-06-30 17:32
アメリカは以前から台湾に対し、非対称戦力による「地獄の光景」で中国を抑止することを提案していたが、台湾の対応は遅れている。写真はウクライナ国防情報局の遠隔無人機An-196 Liuyiが、未公開の場所で離陸準備をしているところ。(AP通信)
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台湾軍による年次大規模実動演習「漢光41号」が、7月9日から18日まで10日間9夜にわたって実施される予定だ。これまでで最長となる演習期間のなかで、現代の脅威に対応するための非対称戦がどのように再現されるかが注目されている。

米インド太平洋軍のサミュエル・パパロ司令官は、かつて議会証言で「地獄の景色(hellscape)」という表現を用い、中国の侵攻を抑止する戦略を提示した。これは数千機の低コスト無人機、艦艇、潜水艦を同時展開し、敵の進軍を遅らせ、可能であれば一撃で撃破するという非対称戦の典型的な構想である。このアイデアは前任のジョン・アキリノ司令官によって最初に提唱されたものだ。

しかし、米国側がこの「地獄の景色」構想を急速に進めたいとする一方で、台湾側は依然として明確な装備計画や要求を提示できていない。中国が2027年までに台湾侵攻の能力を備えるとされる「デービッドソン・ウィンドウ」を意識し、米国と日本の2名の「影の将軍」が台湾を訪れ、演習の裏側で軍を支援・指導している。なお、彼らはすでに知られているロバート・エイブラムス退役大将とは別の人物だという。

20250617-中科院院長李世強(左)與 Auterion 代表17日簽署合作備忘錄。(柯承惠攝)
中央研究院の李世強院長(左)が6月中旬、Auterion代表と17日に協力覚書に署名した。(写真/柯承恵撮影)

民主連携から米国製品の大量購入へ 変わる政権と防衛協力

今回の漢光演習では、計8項目の重要検証が設定されている。具体的には、「灰色ゾーン侵害対応」「即応戦備展開」「戦略的コミュニケーション運用」「動員部隊の戦力再生」「多層的防御配置」「新装備の作戦効率」「後方支援の改善」「軍民統合運用」となっており、なかでも無人機関連の装備が注目されている。

6月17日には、中山科学研究院が米防衛技術企業Auterion社と協議を結び、同社のオペレーティングシステムやクラスタ技術の導入を決定した。Auterionは米国防総省と協力関係にあり、ウクライナ戦場でも無人機ソフトウェアとして実績がある企業である。

この提携の背景には、バイデン政権時代の国家安全保障戦略に基づく、同盟国との産業基盤の連携強化方針がある。当時の蔡英文政権は、民主国家同士の供給網構築を進めていた。

しかし、トランプ政権に交代してからは状況が一変した。情報筋によれば、トランプ氏は「アメリカ製」に強くこだわり、半導体産業の国内回帰を推進。そのため、民主的な供給網構想とは軋轢が生じ、台湾の防衛産業界にも懸念が広がったという。

バイデン政権下では、米国の軍需企業がウクライナ支援の前線に立っていたが、トランプ政権では台湾に米国製武器の大量購入を要求する一方で、技術移転には慎重な姿勢を示した。台湾はその要請に応じたが、防衛技術協力のあり方はバイデン時代とは異なる軌道を描いている。 (関連記事: 米下院「台湾差別禁止法案」台湾のIMF加盟を支持 専門家:国際地位の向上と「これらの利点」も 関連記事をもっと読む

美國現任總統川普。(美聯社)
「MAGA(Make America Great Again)」を掲げるアメリカのトランプ大統領は、「アメリカ製造」を極めて重視している。(写真/AP通信)

米元司令官が再訪し道を開く 台湾との技術移転が本格化

台湾の国防研究機関である中山科学研究院と、米防衛テック企業Auterionとの協定により、米台間での技術移転協力が正式にスタートした。その背景には、元米インド太平洋軍司令官のジョン・アキリーノ氏の動きがあるという。