台湾グルメの魅力をもっと多くの人に——本場仕込みの「胡椒餅」、吉祥寺で再現

2025-06-29 11:22
天母の「老劉胡椒餅」にルーツを持つ味を、現在、東京・吉祥寺で再現しているのが店主の永野加奈さんだ。(写真/黃信維撮影)
天母の「老劉胡椒餅」にルーツを持つ味を、現在、東京・吉祥寺で再現しているのが店主の永野加奈さんだ。(写真/黃信維撮影)
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台湾の伝統的なストリートフード「胡椒餅(フージャオビン)」は、多くの台湾人にとって子どもの頃から親しみのある味。そのルーツのひとつとされる天母の名店「老劉胡椒餅」で修業を重ね、現在その味を東京・吉祥寺で再現しているのが、店主の永野加奈さんだ。『風傳媒』の取材に応じた永野さんは、開店のきっかけはコロナ禍だったと語る。

天母の「老劉胡椒餅」にルーツを持つ。現在、東京・吉祥寺でその味を再現しているのが、店主・永野加奈である。黃信維
天母の「老劉胡椒餅」にルーツを持つ味を、現在、東京・吉祥寺で再現しているのが店主の永野加奈さんだ。(写真/黃信維撮影)

本場・天母での修行と「窯焼き」へのこだわり

「ちょうどコロナの時期に台湾へ修業に行ったんです。当時は海外旅行が難しくなっていて、日本にいながら本場の台湾グルメを味わえるお店を作りたいという気持ちが強くなりました」。永野さんは当時をそう振り返る。

彼女は以前から台湾を何度か旅行で訪れており、初めての訪台では食文化の違いに戸惑うこともあったという。しかし現地の友人に案内されるなかで、次第に多様な料理に魅了され、台湾グルメへの関心が深まっていった。ただ、日本国内で本格的な台湾料理に出会える機会はまだ少なく、「日本でも本場の味を提供できるお店を作りたい」との思いが芽生えていった。

天母の「老劉胡椒餅」にルーツを持つ。現在、東京・吉祥寺でその味を再現しているのが、店主・永野加奈である。黃信維
天母の「老劉胡椒餅」にルーツを持つ味を、現在、東京・吉祥寺で再現しているのが店主の永野加奈さんだ。(写真/黃信維撮影)

「台湾人においしいと言ってもらいたい」 本場の製法を守り抜く決意

永野さんが店を開く上で最も大切にしているのが、「台湾のお客様に食べてもらって、台湾そのままの味だと感じてもらうこと」。その目標のため、彼女は台北・天母の「老劉胡椒餅」本店で修業を重ね、現地で使われている技法を一つひとつ丁寧に学んだ。

修業中は言葉の壁もあったが、通訳や翻訳アプリを駆使してスタッフや劉さんから熱心に教わったという。料理の技術だけでなく、台湾の人々の温かさにも触れ、心に残る経験となった。
当初、日本ではオーブンでの調理を想定していたが、「せっかくなら本物を届けたい」と考え、途中から窯焼き製法へと切り替えた。

天母の「老劉胡椒餅」にルーツを持つ。現在、東京・吉祥寺でその味を再現しているのが、店主・永野加奈である。黃信維
天母の「老劉胡椒餅」にルーツを持つ味を、現在、東京・吉祥寺で再現しているのが店主の永野加奈さんだ。(写真/黃信維撮影)

「台湾でも窯焼きは男性が担うことが多く、火加減や生地の扱い、すべてが難しかったです」と永野加奈さんは振り返る。台湾での修業は1か月ほどだったが、隔離期間も含まれていたため、帰国後は動画を通じて指導を受けながら改良を重ねた。後に劉さんが来日し、味の最終チェックを経てようやく開業に至った。

台湾の味をそのままに──ねぎも粉も細部まで再現

吉祥寺で提供している胡椒餅は、味付けやスパイスの配合に一切妥協せず、台湾本場の味を再現している。唯一異なる点は、台湾で一般的な三星葱が日本では手に入りにくいため、風味が近い細ねぎを使っていることだ。また、肉は劉さんのこだわり通り角切りを使用し、調味料も台湾から取り寄せている。粉については輸入が難しく、少量を持ち帰って成分分析し、日本国内で同じ配合になるように独自ブレンドして対応している。

「焼きたてが一番おいしいですが、自宅や職場でもおいしく食べていただけるよう、温め方をパッケージに明記しています」。店舗は基本的にテイクアウト形式で、店外に立ち食いスペースも設けられている。近隣の井の頭公園で楽しむ人も多く、週末には裏手でゆっくり味わう姿も見られる。 (関連記事: 台湾旅行で行くべき、世界も認めた台湾の秘境!CNN絶賛の理由とは? 関連記事をもっと読む

天母の「老劉胡椒餅」にルーツを持つ。現在、東京・吉祥寺でその味を再現しているのが、店主・永野加奈である。黃信維
天母の「老劉胡椒餅」にルーツを持つ味を、現在、東京・吉祥寺で再現しているのが店主の永野加奈さんだ。(写真/黃信維撮影)

日本ではまだ胡椒餅の知名度は高くないが、台湾を訪れたことのある人からは「まったく同じ味」と高く評価されており、開店から2年間は行列が絶えなかったという。「日本の味に寄せていないのに、日本人のお客さまから『こっちの方が好き』と言っていただけることもあります」と永野さんは笑顔を見せる。

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