台湾・台北地方裁判所で1日、「京華城」開発をめぐる汚職事件の審理中、被告の彭振聲(ほう・しんせい)元台北市副市長が突如として感情を爆発させ、法廷が一時中断される事態となった。彭氏は開廷直前に、妻が高雄市内で飛び降り自殺を図り死亡したとの連絡を受けたという。
「私は無実だ」 法廷で叫ぶ彭氏に、救急隊が待機
台北地裁ではこの日、検察側が行った取り調べの適否を巡って、彭氏や朱亞虎(しゅ・あこ)氏に対する録音資料の検証が予定されていた。ところが開廷前、彭氏は突如涙ながらに、「妻は私が今日出廷することを知って自ら命を絶った。私は無実だ、病院に行かせてくれ」と叫び、法廷内に緊張が走った。
続けて、「天よ…検察官の良心はどこにあるんだ!なぜ私はこんな国に生まれたのか」と慟哭。何度も「私は冤罪だ」と訴え、傍聴席からも嗚咽が漏れたという。
妻の死が確認される 高雄市で飛び降り
その後、警察は彭氏の妻が同日午前9時1分に高雄市内で飛び降り自殺を図り、搬送先の病院で死亡が確認されたと発表した。訃報を受けた彭氏の様子は明らかに憔悴しており、裁判所は救急隊を手配。ストレッチャーが法廷内に持ち込まれた。
検察の「違法取調べ」が争点に 政治家も注目
この事件は、台北の大型再開発「京華城プロジェクト」を巡り、彭氏らへの検察の取り調べに違法性があったかが争点となっている。元台北市長の柯文哲(か・ぶんてつ)氏や、実業家の沈慶京(しん・けいけい)氏らが疑義を呈しており、録音データの法廷検証が注目されていた。
特に、立法委員(国会議員)の黄國昌(こう・こくしょう)氏が立法院(国会)で問題の録音を公開したことで、台湾国内では検察への批判が高まっていた。
今後の審理はどうなる? 裁判所が対応を検討中
突然の事態を受け、裁判所は審理を一時中断。彭氏は延長法廷に移された後、やや落ち着きを取り戻した様子だが、医療機関への搬送も含め、今後の対応については裁判所が慎重に判断するとしている。
事件の核心に迫る予定だった審理は、思わぬ形で暗転し、再開の見通しは現時点で不透明だ。 (関連記事: 評論:賴清徳総統の「不純物を取り除く」発言に波紋 講演要旨から削除、政権の本音か | 関連記事をもっと読む )
編集:梅木奈実
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