中国人民大学国際関係学院副院長の金燦栄氏が、台湾を最終的に武力で統一する場合、「一国二制度」は適用されず、中国共産党の台湾省委員会が直接統治する可能性が高いとの見方を示した。その際、多くの産業が国有化され、台積電(TSMC)も含まれると述べた。一方で、中国は半導体製造で近く重要な突破口を迎えるとし、将来的に台積電の戦略的重要性は低下すると指摘した。
金氏は、台湾問題の解決は「必ず実現する」と述べつつも、大陸側は統一の時間表を持っていないと説明。中国の指導者である習近平国家主席が、毎回公式発言で「最大の忍耐と誠意をもって平和統一を目指す」と強調していることにも言及した。

武力統一後の統治体制と台積電の扱い
同氏は、武力で台湾を統一した場合には「一国二制度」は消滅し、「中共台湾省委員会」が直接管理する形になるとの見解を示した。その下で「台湾省国有資産監督管理委員会(国資委)」を設置し、主要産業を国有化。その対象には台積電も含まれると述べ、「これにより我々の産業チェーンはより完全な形になる」と語った。
金氏は、台積電を過大評価すべきではないと主張。中国は半導体開発で順調に進展しており、西側が保有するASML社のEUV露光装置を含む製造技術の最終段階に到達しつつあると説明した。また、全く新しい技術ルートも模索しており、困難ながらも挑戦を続けているとした。米国からの圧力を受け、中国は独自の半導体産業構築を進めており、これが成功すれば台積電の重要性は薄まるとの見方を示した。
米国による台積電爆破の可能性
さらに、米中間で直接軍事衝突が起きた場合、米国が敗北時に台積電を爆破する可能性があると指摘。ただし、その可能性は低いと見ており、「その時には米軍基地や空母が存在せず、爆破の手段がない」と述べた。
金氏は、最近の話題としてNVIDIAが中国へのH20チップ販売を認められた件を取り上げ、AI競争には大量のチップが必要なため、西側製品を適度に使用する必要はあるとしながらも、安全保障分野では国産品を使用すべきだと強調。
NVIDIA H20チップ販売と安全保障
中国の安全当局がH20に潜在的な「バックドア」の危険性を疑い、NVIDIA関係者を事情聴取したことも明らかにした。国家安全保障に関わらない分野では西側製品の使用は可能だと述べ、例えば華為(ファーウェイ)の生産ライン強化は国内市場需要に応える上で必要だと指摘した。
同氏はまた、米国がH20の解禁を決定した背景には、中国が既にH20を上回る性能を持つ技術を獲得していることを知り、市場を確保する狙いがあるとの見方を示した。
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