中国有力学者「米国家安全戦略は両岸統一に反対」 対立含みで台湾海峡情勢はより危険に

中国の研究者は、米国のドナルド・トランプ氏政権が公表した「2025年国家安全戦略(NSS)」について、実質的に「両岸統一に反対する内容」で、中国側の国家目標と衝突しかねないと分析している。写真は2025年10月30日、韓国・釜山で会談したドナルド・トランプ氏と習近平氏。(AP通信)
中国の研究者は、米国のドナルド・トランプ氏政権が公表した「2025年国家安全戦略(NSS)」について、実質的に「両岸統一に反対する内容」で、中国側の国家目標と衝突しかねないと分析している。写真は2025年10月30日、韓国・釜山で会談したドナルド・トランプ氏と習近平氏。(AP通信)

米国がこのほど公表した2025年版国家安全戦略(National Security Strategy、NSS)について、中国の有力学者である中国人民大学外交学部教授の金燦栄氏は、「対中部分で『一方的な現状変更に反対する』と明記している点は、実質的に台湾海峡の統一に反対する立場を示したものだ」と分析した。これは中国の国家目標と正面から衝突する内容だと指摘する。

金氏は、台湾の指導者である賴清徳氏が現在の路線を堅持していることに加え、日本の関与、そして米国の国家安全戦略が統一に否定的な姿勢を示したことで、今後は一定の対抗関係が醸成される可能性が高いとみる。こうした要素が重なり、両岸情勢は過去と比べて「より危険な局面に入りつつある」との認識を示した。

2025米国国家安全戦略(NSS)の核心

今回の国家安全戦略では、米国が従来掲げてきた「民主主義の価値を世界に拡散する」という目標を事実上放棄した点が明確になった。単極的覇権や「自由主義的国際秩序」の維持を追求するのではなく、米国本土の生活様式、国境、安全、経済的繁栄を守ることに重点を置き、西半球を米国の絶対的な勢力圏と位置づけている。

対中認識については、中国を「最大の経済的競争相手」と定義しつつも、「存立を脅かす存在」とまでは位置づけていない。戦略の軸足は「封じ込め」から「貿易関係の再構築」へと移り、北京と相互利益に基づく貿易合意を模索し、米国の貿易赤字削減を優先する姿勢が示された。全面的な地政学的対立を志向しない点が特徴だ。

台湾を巡っては、「一方的な現状変更」に反対するとした上で、台湾自身が大規模な武器購入を通じて防衛力を高める、いわゆる「ハリネズミ化」を進めるべきだと強調している。米国の役割は前線で戦う存在ではなく、武器供給と抑止支援を担う後方支援者へと位置づけ直されている。

米国トランプ大統領。(AP)
米国のドナルド・トランプ氏政権は12月初旬、「2025年国家安全戦略(NSS)」を公表し、対中・対台を含む記述の解釈を巡って議論が広がっている。(AP通信)

建制派・ウォール街・MAGAの折衷 実行は容易ではない

中国メディア『観察者網』によると、金燦栄氏はこの国家安全戦略そのものが、米国内の複数勢力による妥協の産物だと指摘する。文書には、アジア太平洋地域での米国のプレゼンス維持や、軍事技術・サプライチェーン分野での相対的優位を確保するという外交建制派の考え方が色濃く反映されている。一方で、中国との経済協力を進め、価値観を前面に出した対立を抑制しようとする姿勢は、ウォール街を中心とする実利重視派の意向とされる。さらに、国内経済の安定や中間層の保護、本土安全を重視する「MAGA派」の主張も盛り込まれている。

金氏は、こうした三者の綱引きの結果としてまとめられた戦略である以上、今後の実行段階では再び内部対立が表面化し、必ずしも円滑に進むとは限らないとみる。加えて、米国は利益を追求しつつも責任は最小限に抑えようとする一方、同盟国側にもそれぞれ独自の思惑がある。こうした内外の要因が重なり、国家安全戦略の実効性を確保する難度は極めて高いと分析している。

中国人民大学国際関係学院教授の金燦栄。(新華社)
中国人民大学外交学部の金燦栄氏は米国研究の専門家で、米国の国家安全戦略が掲げる「現状変更への反対」は、実質的に「両岸統一への反対」を含意するとみている。(新華社)
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