舞台裏》台湾が「正しい表記」を求めたはずが外交部の一言が韓国世論の地雷を踏んだ理由

台韓関係は、韓国の電子入境カード(E-Arrival Card)で台湾が「CHINA(TAIWAN)」と表示されたことをきっかけに、外交的な波紋が広がっている。写真は韓国大統領府(青瓦台)。(写真/顏麟宇撮影)
台韓関係は、韓国の電子入境カード(E-Arrival Card)で台湾が「CHINA(TAIWAN)」と表示されたことをきっかけに、外交的な波紋が広がっている。写真は韓国大統領府(青瓦台)。(写真/顏麟宇撮影)

韓国の電子入境カード(E-Arrival Card)システムで、「出発地」及び「次の目的地」の欄に台湾が「CHINA(TAIWAN)」と表示されていることをめぐり、台湾外交部は12月3日、公式声明を発表した。声明では、この表記は事実と異なるだけでなく、台湾人利用者に混乱と不便をもたらし、感情的にも受け入れがたいものだとして、韓国政府に対し速やかな是正を求めた。しかし、韓国側からは現在に至るまで明確な回答は示されていない。

その直前まで、高雄では「アジア・アーティスト・アワード(AAA)」や初開催の「ACON音楽フェスティバル」が行われ、K-POPブームの余韻が街に残っていた。そうした空気の中、12月9日、外交部アジア太平洋司の劉昆豪・副司長が定例記者会見で突如、台湾と韓国の間に「巨額の貿易赤字」が存在すると指摘し、「両国関係には依然として不均衡な側面がある」と発言。外交部として韓国との関係を「全面的に再検討している」と述べ、対応策を検討中だと明かした。翌日、台湾の主要紙はいずれもこの発言を一面で大きく報道し、「正名」を求める台湾が、韓国に対して強硬姿勢に転じたとの見方を示した。林佳龍・外交部長の就任後、台湾外交は従来の受け身から攻勢へと転じつつある。南アフリカが台湾の代表処に首都プレトリアからの移転を求めた際には、台湾側が半導体輸出の制限や南ア産リンゴの輸入削減といった対抗措置を示したこともある。ただし、林氏自身が「運命共同体」と表現してきた第一列島線のパートナーである韓国に対して、果たして本当に正面衝突も辞さない構えなのか──外交部の真意には疑問符が付く。

20251203-外交部長林佳龍3日於外交国防委員会备询。(颜麟宇撮)
電子入境カード問題が表面化する前、林佳龍外交部長(写真)は、韓国を「運命共同体」の第一列島線の友好パートナーだと位置づけていた。(写真/顏麟宇撮影)

電子入境カードで「CHINA(TAIWAN)」表記 台湾の不満が噴出

韓国の電子入境カードは2025年2月24日から試験運用が始まり、韓国観光公社台北支社は、2026年以降、入国申告を全面的に電子化すると予告している。紙の入境カードでは自由記入が可能だったが、電子版では選択式となり、台湾が「CHINA(TAIWAN)」と固定表示される欄があることが問題となった。

台湾外交部には、この1年ほどで市民からの苦情が相次いで寄せられていたという。全面導入を前に、外交部は12月3日に遺憾の意を示す声明を発表し、是正を要請。さらに12月9日には、韓国との関係を全面的に見直す可能性に言及し、貿易赤字の問題まで持ち出した。 (関連記事: 「日本病」と「台湾病」が同時に韓国を直撃か? 韓国の専門家が警告「手を打たなければ日台韓で最大の敗者に」 関連記事をもっと読む

この一連の動きに対し、韓国メディアは台湾の抗議が次第に強まっていると受け止めている。最大手紙『朝鮮日報』は12月10日夜、台湾政府がこの時期を選んで正式に抗議したのは「意図的ではないか」とする分析を紹介。翌朝には続報で、韓国の研究者の見方として、高市早苗首相が「台湾有事」に言及し、日中関係が緊張する中、台湾が「友軍探し」として韓国の出方を探っている可能性があると伝えた。その後、親中寄りとされる韓国メディアも、匿名の政府関係者の話として、同様の見方を報じている。

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