ドイツはなぜ中国と距離を置き始めたのか WSJ「20年続いた貿易蜜月が終焉」

2025年12月11日、ドイツ・フランクフルトの高速道路脇にあるガソリンスタンド。(AP通信)
2025年12月11日、ドイツ・フランクフルトの高速道路脇にあるガソリンスタンド。(AP通信)

過去20年にわたり、ドイツと中国の経済関係は「理想的な補完関係」と言われてきた。だが現在、中国製造業の急速な台頭と、低価格製品の欧州市場への流入は、中国がもはやドイツを必要としていない現実を浮き彫りにしている。その一方で、実際に打撃を受けているドイツ側では、中国との関係を見直し、「距離を取る」ことを模索する動きが強まりつつある。

かつて世界貿易が拡大を続けていた時代、中独の経済関係は双方に莫大な利益をもたらした。ドイツは高度な機械設備を供給し、中国はそれを用いて消費財を大量生産し、世界市場へと送り出す。役割分担は明確で、双方にとって都合の良い構図だった。しかし、その前提はすでに崩れている。米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』は14日、数十年にわたりドイツの産業競争力を支えてきた「制約のない自由貿易」について、ドイツの企業界や政界が初めて本格的な疑問を抱き始めたと報じた。

中国の競合企業は、価格が安いだけでなく、生産スピードが速く、品質も急速に向上している。こうした現実を前に、ドイツの製造業界では政府による保護を求める声が強まっている。メルツ首相は先月、国内の鉄鋼産業を中国企業との競争から守る考えを明言した。政府もまた、通信・データネットワーク分野で中国製部品の使用を禁じる規制を一段と厳格化するとともに、公共調達において「欧州製品を優先する」条項を盛り込む方針を支持している。

2025年12月10日。ドイツ首相メルツ(Friedrich Merz)がドイツ・ベルリンの首相官邸で行われた閣僚会議に出席。(AP)
2025年12月10日、ドイツ・ベルリンの首相府で開かれた閣議に出席したメルツ首相(Friedrich Merz氏)。(AP通信)

さらに、メルツ政権が新設した国家安全保障会議は、11月の初会合で、中国が複数の重要鉱物分野において支配的地位を握っていることがもたらす戦略的リスクを議題に取り上げた。ドイツ政府関係者によれば、現在ベルリンでは、供給網を特定国に依存しない体制へと転換するための多角的な対策が検討されているという。

世界経済の分断化

『ウォール・ストリート・ジャーナル』は、ドイツと中国の関係悪化は突発的なものではないと指摘する。低い生産コスト、民元安、そして巨額の政府補助金を背景に、中国の製造業は近年、急速に存在感を強めてきた。その進出先は中国国内にとどまらず、欧州や第三国市場にも広がり、かつてドイツ企業が優位を保ってきた分野を次々と侵食している。

この「別れ」が進行する過程は緩やかだったが、関係が明確に転換した時期は、米国のトランプ政権と深く結びついている。経済学者や企業幹部によれば、米国が中国製品に高い関税を課した結果、もともと米国向けだった中国の低価格商品が、化学製品から自動車部品に至るまで、一斉に欧州市場へ流れ込むようになった。

2025年11月30日。中国東部山東省の青島に停泊するコンテナ船。(AP)
2025年11月30日、中国東部・山東省青島の港に停泊するコンテナ船。(AP通信)

その結果、かつて自由経済の象徴とされたドイツも、関税や規制といった保護主義的な手段を受け入れ始めている。こうした政策は、以前であればドイツの政界や経済界から「誤った選択」として批判され、揶揄を込めて「フランス的手法」と呼ばれてきたものだった。

欧州で最も影響力を持ってきた自由貿易の推進論者が次第に表舞台から退く姿は、米中の大国間競争と、西側諸国に広がる反グローバル化の潮流の中で、世界経済が分断へ向かっている現実を映し出している。

最新ニュース
外国人の不動産取得、国籍把握を義務化へ 政府、来年度から登記制度見直し
中国空母「福建」、就役後初めて台湾海峡を通過 台湾国防部が全行程を監視
B.LEAGUE HOPE ASIA HOOP FESTIVAL、台北・南港で開催 無料体験イベントも
中国有力学者「米国家安全戦略は両岸統一に反対」 対立含みで台湾海峡情勢はより危険に
存立危機事態「米国以外は限定的」 高市首相、台湾は「個別判断」と説明
日中が衝突すれば米露台湾も巻き込まれるのか 軍事専門家・揭仲氏「偶発事故だけで北京は頭が痛い」
熊本と台湾を結ぶ新路線が誕生 タイガーエア台湾、阿蘇くまもと空港で熊本―高雄・台南線就航、12月23日に記念式典
トランプ関税は違法か 最高裁判断次第で1000億ドル返還の可能性も
舞台裏》財劃法を巡り卓栄泰行政院長が板挟みに 強硬対応の一方で党内調整進まず、民進党内部から「憲政のルール逸脱」批判相次ぐ
エキュート立川、体験型イベント『キューっと部!』を初開催 初回テーマは「多摩を味わうペアリング」
技能実習制度を廃止、新たに「育成就労」創設へ 人材確保と永住・家族帯同も視野に、外国人受け入れ政策を転換
映画『ズートピア2』がHappyくじに登場 12月19日から全国で順次発売
政府、永住者と「技人国ビザ」の在留管理厳格化を検討 外国人政策を見直しへ
「パラチノース」40周年、神野大地・三津家貴也監修の補給食セットをリニューアル発売
エキュートでいちごフェア開催 品川で初の「いちごと、苺。と、ちょこっとチョコ。」、日暮里・立川は恒例「いちごWeek」展開
高市総裁の新ポスターを発表 キャッチコピーは「日本列島を、強く豊かに。」初回32万枚を印刷
小泉防衛相、空自パイロットの「冷静・厳格」と記された手袋を公開 中国機レーダー照射問題で「本質から目を逸らさない」
TechGALA Japan 2026、主要登壇者発表 ノーベル賞受賞者ら世界的スピーカーが名古屋集結
円安は転換点を迎えたのか 謝金河氏が警鐘、150円突破で株式市場に即効性の影響
日本の防衛予算、過去最大の9兆円規模へ 「長射程ミサイル」に重点投資、敵基地反撃能力を強化
舞台裏》台湾が「正しい表記」を求めたはずが外交部の一言が韓国世論の地雷を踏んだ理由
【新新聞】「デジタルドル」が主権通貨を全て破壊する中、台湾ドルも危機に瀕するのか
人物》台湾・民進党の実力派、頼瑞隆氏とは何者か 頼清徳総統の信任厚い幹部が「つまずき」を重ねる背景
舞台裏》異例の沈黙、その裏に何があったのか――台湾・国民党の鄭麗文氏が「中央常務委員会」で語らなかった理由
李忠謙コラム:「AIは電力という現実なしに成立しない」非原発後の台湾、計算資源革命の隠れたコストが浮上
トランプ大統領、巨額投資の成果を強調も2026年中間選挙には不安示す「予測できない」
星野源、「第76回NHK紅白歌合戦」で特別企画に出演 京都・ニンテンドーミュージアムから『創造』を披露
おかゆ料理専門店「おかゆテラス 阿佐ヶ谷本店」12月20日オープン ディナーは21日開始
米軍の台湾支援、最大の難題は何か MIT研究者が問う「中国本土を攻撃するのか否か」
東京ガス、「データセンター需要」に商機 米国に3,500億円集中投資
映像美が描く「孤独」と「再生」 杜杰監督の長編デビュー作『椰子の高さ』、2026年2月公開
ムーミン アラビア「Love」マグ30周年 「愛とつながり」を描く記念コレクション発売
イベントデータをマーケに活用 ピーティックス、法人向け新サービス「Peacom」
高輪ゲートウェイに次世代型ミュージアム「MoN Takanawa」誕生 マンガ、宇宙、歌舞伎も“体験”へ
「HAPPY UMA YEAR 2026」開催 グランスタ東京が「午」モチーフの限定商品と「馬力」グルメを展開
コロナ セロ、ミラノ・コルティナ2026冬季五輪記念ウィンターキャンペーン開始 野沢温泉で期間限定イベント
Suicaのペンギン新作グッズが登場 5アイテムをグランスタモール数量限定販売、12月18日から
アウンサンスーチー氏の安否に深まる懸念 次男「すでに亡くなっている可能性も」「5年間で手紙は1通だけ」
GREEN×EXPO 2027公式グッズに新作 「トゥンクトゥンク」11アイテムが12月17日登場
【単独インタビュー】リッチモンドホテル、台湾市場で存在感 新ブランド戦略を宗像部長に聞く
国会質疑で再び「台湾有事」 高市早苗首相「対話による平和的解決が日本の立場」
台湾・賴清德総統、財政法・年金修正を強く批判 「国家財政と民主に重大な危機」
2026年春の国内旅行予約が本格スタート 短期日程の家族旅でクルーズ需要が拡大 三井オーシャンフジが「タイパ親子旅」を提案
グローバル「Z世代革命」の怒りが続く! ブルガリア政府は耐えきれず、若者に屈した初の欧州政権に
ウクライナはこの4年間、何のために戦ったか ゼレンスキー氏、和平と引き換えにトランプ氏側特使に「NATO加盟に固執なし」と表明
G7+ウクライナのエネルギー部門支援で閣僚級会合 国光彩乃外務大臣政務官が出席
NVIDIAだけではない競争優位の揺らぎ 専門家警告「TSMCもこの企業に切り崩されつつある」
back number、「第76回NHK紅白歌合戦」白組で出場決定 『どうしてもどうしても』『水平線』を披露
「日本病」と「台湾病」が同時に韓国を直撃か? 韓国の専門家が警告「手を打たなければ日台韓で最大の敗者に」
宅麺.com主催「Takumen Ramen Awards 2025」開催 受賞ラーメンを発表