日中が衝突すれば米露台湾も巻き込まれるのか 軍事専門家・揭仲氏「偶発事故だけで北京は頭が痛い」

日中の政治摩擦が強まり、軍事的な動きも相次ぐ中、「中露」対「米日」の対立構図が固まり、台湾が巻き込まれる可能性も懸念されている。写真は中国空母「遼寧」の甲板に並ぶ艦載機J-15。(中国軍網)
日中の政治摩擦が強まり、軍事的な動きも相次ぐ中、「中露」対「米日」の対立構図が固まり、台湾が巻き込まれる可能性も懸念されている。写真は中国空母「遼寧」の甲板に並ぶ艦載機J-15。(中国軍網)

米国は5日、「2025年国家安全保障戦略(NSS)」を公表し、従来の国際秩序維持よりも、米国本土の繁栄と国境の安全確保を重視する方針へと大きく舵を切った。この戦略転換は、東アジアのパワーバランスに影響を及ぼす可能性があるとみられている。一部の分析では、最近相次ぐ日中間の地政学的摩擦は、両国が米国の新たな戦略方針を探り合っている結果だと指摘されている。中国は、米国が同盟国防衛にどこまで本気で関与するのかを試し、日本は自国が第一列島線防衛において不可欠な存在であることを示そうとしている。しかし、日中双方の軍事的・政治的動きが活発化するほど、偶発的な衝突に発展する恐れがある。国防安全研究院の委任副研究員である揭仲氏は、『風傳媒』の取材に対し、日中情勢が緊張を増した場合、米国はどのような対応を取るのか、さらに台湾が巻き込まれる可能性はあるのかについて分析した。

タカ派として知られる高市早苗首相は、11月の国会答弁で「台湾有事は日本の存立危機事態に当たる」と明言し、中国が武力で台湾に侵攻した場合、日本の自衛隊が集団的自衛権を行使する可能性を示唆した。この発言に対し、中国側は強く反発。日本産水産物の輸入停止や訪日観光の制限措置に加え、尖閣諸島周辺や沖縄近海で、威嚇的とも受け取れる軍事行動を相次いで実施した。12月6日には、中国人民解放軍の戦闘機が日本の自衛隊機をレーダーで照射に収めたとされる事案も発生している。現在、日中関係はここ数年で最も冷え込んでおり、東シナ海における軍事的対峙の頻度は明らかに増している。

日中衝突に米露は巻き込まれるのか

12月9日、中国とロシアは極めて象徴的な共同軍事行動に踏み切った。中国は核弾頭搭載が可能なH-6K爆撃機を、ロシアはTu-95戦略爆撃機を投入し、日本海、東シナ海、西太平洋にかけて約8時間に及ぶ合同戦略パトロールを実施した。この編隊は、敏感な海域である宮古海峡を通過し、中国のJ-16戦闘機、ロシアのSu-30戦闘機が護衛に就いた。日本側は、この飛行ルートを「東京への打撃能力を誇示する意図がある」と受け止め、中国・ロシア両国が日本政府に対して極限の軍事的圧力をかけた形だと分析している。

これに対し、米国と日本は即座に反応した。翌10日、米軍は核攻撃能力を持つB-52戦略爆撃機2機を日本周辺空域に派遣し、航空自衛隊のF-35、F-15戦闘機と高強度の共同訓練を実施。日米の抑止力と連携を明確に示した。この一連の動きは、北東アジアにおける新たな「冷戦構図」を浮き彫りにした。中ロが連携して第一列島線の突破能力を誇示し、日本を威嚇する一方、米日は核抑止力を背景に防衛の意思を示す。今後、日中間の政治的緊張がさらに高まれば、中ロ陣営と米日陣営による本格的な軍事対峙に発展する可能性も否定できない。 (関連記事: 中国有力学者「米国家安全戦略は両岸統一に反対」 対立含みで台湾海峡情勢はより危険に 関連記事をもっと読む

2025年12月10日。美日進行聯合演訓,美國B-52轟炸機與日本F-15戰機飛越日本領空附近。(Japan's Ministry of Defense via AP)
2025年12月10日、米日が共同訓練を実施。米軍のB-52爆撃機と航空自衛隊のF-15戦闘機が日本周辺空域で編隊飛行を行い、中露機の日本周回飛行に対抗する姿勢を示した。(Japan's Ministry of Defense via AP)

日中双方が探る米国の「新たな一線」

米国は12月5日に「2025年国家安全保障戦略」を発表し、そこには新たなトランプ政権の「アメリカファースト主義」と「取引型外交」の色合いが色濃く反映されている。米国は、自由主義国際秩序の維持に全面的な責任を負う立場から後退し、自国の繁栄と安全保障を最優先課題として掲げ、西半球を絶対的な勢力圏と位置付けた。この新戦略の裏側には、第一列島線に位置する日本、韓国、台湾といった同盟・パートナーに対し、米国が従来のような「無条件の守護者」ではなく、武器供与と抑止力を提供する「後ろ盾」に回るというメッセージがあるとみられている。各国に自助努力による防衛体制の構築を迫る構図だ。結果として、インド太平洋の安全保障体制は、米国を中心とした「ハブ・アンド・スポーク型」から、日台、日比といった同盟国・パートナー同士が連携を強める「ネットワーク型」へと移行しつつある。

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